〜第24話〜
互角
[1R]
いつものように、右拳を左掌でつつみ、軽く会釈をするキャリーとリー・Jr。
滑らかな動きでリング中央に歩み寄り、握手を交わす両者。
手を離してからが試合の始まり。
「先手必勝!」
リーが左右にステップを踏んでミラに突進する。
(ハヤイッッ)
オートでの回避が間に合わず正面右下からのショルダーアタックがミラにヒット。
ガードしたままボディが宙に浮くミラ。
それを追撃すべく、跳ねたリーの拳が迫る。
「それを喰らってはダメよねぇ〜。」
落ち着き払ったジェニファーが素早く反応する。
腕を大きく伸ばし、その遠心力を利用してボディを回転させるミラ。
空を斬ったリーの拳がミラに捕まる。
ぐんっっ
リーは自らの勢いも利用され、為す術なく投げ飛ばされる。
が、ロープに掴まりかろうじて着地する。
「そうこなくちゃ!」
ミラは畳み掛けるように突進を開始。
リーも、ここは迎撃の態勢を取る。
「フッ!」
ダブルナックルを袈裟懸けに振り下ろしながら、逃げ道を塞ぐミラ。
リーはその攻撃を受け流しながら反撃のチャンスを待つ。
「ドウシタ、イロオトコ。テモアシモデナイカ。」
「そんなことを言われたのは初めてだよ。サンキュー。」
「ヨユウノツモリカ。コレナラドウダ。」
ミラがウェイトをのせたハイキックを仕掛ける。
だが、リーはその大振りな攻撃の隙を見逃さない。
振り上げられる脚の下に潜り込み、両手を揃えてミラの腹部に掌底を打ち込む。
「あちゃ〜。初ダウン! ちょっと焦っちゃったかな。」
ふっとばされ、尻餅をつくミラ。
間髪を入れずリング中央へと転がり、リーのジャンピング・ニー・スタンプをかろうじて避ける。
「シッ」
起き上がったミラに対し、上下左右、機敏にフックを放ち攻勢に出るリー。
だがパーリング、スウェーといったボクシングのディフェンスで巧みにクリーンヒットを防ぐミラ。
だが次の瞬間、ミラのカメラはリーの姿をロストしたあと、全身に衝撃を受けて一瞬画像が乱れた。
「・・・ナニガオコッタ?」
「うん、それはかわせないわ・・・。ミラ、ドンマイよ、ドンマイ。」
ジェニファーはサマーソルトが放たれたのを確認したものの、対処の方法が見つからなかった。
(流石ねぇ〜。チャンピオンだけのことはあるわ。手強いけど・・・楽しいことはいいことよ、うん。)
ここで1Rが終了した。
ラウンド中にも増して大きな歓声が沸き起こる。
[キャリー&リーのコーナー]
「・・・マスター。」
「どうした、リー。どこかエラーでも起きたのか? モニターには報告が無いが・・・。」
「いえ、そうではありませんが、私たちはすっかり悪役になっています。」
「ええっ?」
試合に集中していたキャリーは、彼とリーに対して「負けろ」コールがされていたことに気づかなかった。
中には女の子を泣かせて楽しいのか、そんなヤジも飛び交っていた。
見るとジェニファーがうっすらと涙を浮かべているような仕草をしている。
もちろん彼女の演技なのは言うまでもない。
「今まで会ったことはなかったけど、彼女闘い慣れてるね。・・・いろんな意味でだけど。」
「はい、マスター。一筋縄ではいかないようです。」
「どんな相手が来ても、僕らは正々堂々と闘うまでさ。さあいこう、リー。」
「イエス、マスター。」
[ジェニファー&ミラのコーナー]
「プラレスはショータイム。ギャラリーを味方につけてナンボだからねぇ〜。」
「ソンナサクセンガ キクアイテトハ オモエマセンガ・・・。」
リーの強さを体感したミラは、相手が格上だということ理解しつつ闘志を燃やしていた。
それはジェニファーにも言えることでもあった。
「あいつらちょっとはヤルようだわ。
でも大丈夫。兄さんから教えてもらったボクシングのテクニック全開でいくのよ、ミラ。
まだまだ、あなたの力はこんなもんじゃないハズよ。
セクシーな私たちに惑わされた男達とは違うってことが分かったんだから、それならそれで手を打てばいいのよ。」
泣いた真似をしながら、ミラのメンテを行い、プログラムにも手を加えていくジェニファー。
「ん〜それにしてもあのサマーソルトは厄介ね〜。
あんなに素早く動けるなんて反則よね〜。
チャンピオンだって言ってもこんな田舎にあんなのがいるなんて絶対反則よ・・・。」
そう言いながらもジェニファーはリーに対抗すべく、次々と思案をめぐらせていた。