オリジナル・ストーリー「オーラ・プログラム」

 

〜第25話〜

 作戦

 [2R]

 「む。」

 1Rと違い、牽制のジャブを放ちながらリーと距離をとるミラ。

 二度も同じ手は喰わないとばかりに、プレッシャーをかけるリーを確認しても、慌てることなく対処していく。

 「ま、一応アタシも闘ってるしね。」

 ジェニファーはモニターを確認しつつ、的確に指示を送っていた。

 それがいかに的確なものかは、キャリーが良く分かってきていた。

 1Rの空中での対応から、うかつに飛び込んでいくことはタブーと思えた。

 「だからと言って見てるだけでは勝つことは出来ない。行くよ、リー!」

 「イエス、マスター!」

 身を屈めたリーはミラに軸を合わせて前転、回りきろうかというところから、いきなり跳ねあがる。

 槍の穂先と化したつま先が、全身の柄とともにミラへと猛烈に迫る。

 「トッシンハ カワス!」

 ミラが反射的に回避行動をとり、ジェニファーが呼応するようにコマンドを打ち込む。

 ミラはリーに対して半身だけずれると、腕を柔らかく伸ばして巻きつくようにしてリーのボディを捉える。

 そして勢いを殺さずにコーナーへと放り投げる。

 と同時に自らもコーナーへダッシュする。

 「一気にやらせてもらうわよ!」

 カウンターを狙いつつ、コーナーに飛ばしてショルダーアタック、ラッシュというのが彼女達の本来の勝ちパターンだった。

 その事を知るコアなファンが歓声を上げる。

 「リー!」

 だが、リーとてそのままポストに激突するような鈍重なボディではない。

 体をひねって体勢を立て直すと、ポストを背にしてミラを迎え撃つ。

 だが初撃をかわすには時間が足りなかった。

 「ミゴト! ダガ、オソイ!」

 ガンッッ

 したたかにポストに打ち付けられるリー。

 衝撃の度合いはカメラのブレを通じてキャリーへと伝わる。

 「やるな!だがこれからだ!」

 「ガード! ここは守る!」

 リーはポストに密着しながらもガードを固める。

 ミラのラッシュがガードの上から衝撃を伝えてくる。

 「さっきのようなヘマはしないよ。ちいさく、ちいさく・・・。」

 「フッ・・・フッ!」

 リーの逃げ道を塞ぎつつ、コンパクトに、そして上下にパンチを打ち分けるミラ。

 スキはない。

 「・・・。」

 「イマ ラクニシテヤル」

 ミラはそういいながらラッシュの回転をあげていく。

 耐えるリー。

 このままK.O.かと思われた。

 「まだだっ」

 キャリーの気合に応じてリーが素早く身を屈める。

 と同時に脚払いを放つ。

 「アマイ!」

 小さくバックステップを踏み、難なくかわしてみせるミラ。

 だが眼前にリーの回し蹴りが迫る。

 「ナニ」

 「いけないっ。ミラ!」

 ガガンッ

 かろうじて片手のガードが間に合っただけで、ミラはその衝撃を受けて吹っ飛んだ。

 ダッシュして近づいたリーが、空中で一回転してミラに踵を落としていく。

 ミラは起き上がりながらリーを避けると、逆に膝を突き出しながらリーに飛び掛る。

 リーはゴロゴロとマットを転がってかわすと、ミラと距離をとって立ち上がった。

 「フフ。ヤルナ、オマエ。」

 「そちらこそ、と言わせてもらおうか。」

 そこでゴングが鳴った。

 と同時にギャラリーからどっとため息が漏れる。

 この会場ではプラレスラーのカメラからの映像が大型スクリーンへと投影されており、ギャラリーはまさに白熱の試合をあたかも自分自身が闘っているような追体験が出来るようになっていた。

 

 [ジェニファー&ミラのコーナー]

 「下から上への連撃ねぇ〜。ほんと、いろいろと楽しませてくれるわね〜。」

 「アトイッポノトコロデシタ。ツギノラウンドデ キメマス。」

 「アタシもそう思ってるわ。せっかくこんなに注目されてるんだから、負けるって手はないわ。」

 声援を笑顔で受けながら、ジェニファーは次の作戦を練っていた。

 「そう、あなたが言うようにあと一歩だったわ、ミラ。次は押し切るのよ!」

 「カッテ ファイナルへ イキマショウ!」

 

 [キャリー&リーのコーナー]

 「なかなか手ごわい相手ですね、マスター。」

 「ああ。でもいくつか気づいたことがあるんだ。そこをなんとかすれば勝てると思うよ。」

 キャリーは、直前のリーのカメラの映像から、ミラのあるクセを見抜いていた。

 だが確信はなく、あとはリーが上手く対応することが鍵だった。

 「気のせいかもしれないけど・・・。」

 東京への旅で身に着けた洞察力。

 それはキャリーの成長の証であり、現在のキャリーの強さの要とも言えるものだった。

 そしてその強さはRAP、すなわちREAL AURA PROGRAM(リアル・オーラ・プログラム)から進化した、LAP、すなわちLINK AURA PROGRAM(リンク・オーラ・プログラム)により、脳量子波を介してキャリーからリー・Jrのプログラムに直接割り込むことで刺激を与え、活性化することにより、リー・Jrの基礎反射能力の驚異的な向上をもたらしていた。

 が、これはジムの理想論の域を出てはいない。

 少なくともこの時代では実証されていない技術だった。

 しかしながら自動回避行動や単純攻撃パターンの選択時、キャリーの「危ない!」、「チャンス!」などといった「脳裏に浮かんだイメージ」が「無意識の反応」としてリーの行動にダイレクトで投影され、それが反射行動能力の上昇につながっていることは確かだ、とキャリーは言う。

 実は「シマムラ・テクニカル・ファクトリー」で最後のパーツをセットした直後から機能しており、ディスプレイの「ALERT!!」の表示、キャリーを介さないリーの反撃などは、キャリーの「脳裏に浮かんだイメージ」をLAPが具現化した際のフィードバックの表示に過ぎなかった。

 ただ、後のブルースとの闘いにおいて、キャリーとリーを包んだオーラの光は、お互いを思いやる気持ちが非常に高まったから、そして旅を通じてキャリーとリーの間に深い絆が生まれていたから、とジムは考えているようだが、実際のところジムにも良く分かっていないというのが本当のところらしい。

 またリーの兄弟機、ブルースに至っては兄弟子にあたり、先にLAPを発動させているにも関わらず、

 「詳しいことは若いヤツに任せる。」

 と言ってオーナーともども二人揃って研究を放棄しているとのこと。

 それを聞いたクランキーは、

 「そんなところまでリンクしなくても良いのではないか?」

 と半ば呆れ顔で話したという。

 「了解しました、マスター。」

 「うん、あとは君に任せるよ、リー」

 まもなく3Rが始まろうとしていた。

 

 

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