〜プロローグ〜
「・・・まもなく新東京国際空港へ到着いたします」
機内放送で目が覚めた。
「そうか、もう着いたのか・・・。パパ、ここにいるのかい・・・?」
少年は抱えた荷物をぎゅっと抱きしめた・・・。
・・・3年前。
キャリーは大好きな父親ジミーと一緒に、自宅の庭でプラレスに没頭していた。
「うわー、また負けたぁ!! パパの(リー)は強すぎるよぉ!!」
「はっはっは、(ジャック)は動きが単純すぎるんだ。もっともっと研究しないとパパには勝てないぞ、キャリー。うわっはっは」
キャリーのレスラーは(リー)のドロップキックをまともにくらい、既に場外へと飛ばされていた。
心配そうに駆け寄るキャリーを優しく見つめるジム・・・。
「大丈夫かな、壊れてないかな・・・。」
キャリーは拾い上げた(ジャック)を抱え、メンテナンステーブルへと戻る。
「そんなにもろい訳ないじゃないか。パパの(リー)より新型なんだぞ!」
「それはそうだけど・・。でもどうして(リー)は(ジャック)よりも強いの?」
にっこりと笑いながら、ジムは親指を立てて言い放つ。
「パパの腕がいいのさ!」
いつもなら、そんな風にキメ台詞を残し、ママのディナの煎れたコーヒーを飲んでいたのが、その日ばかりは違っていた。
「いいかいキャリー。これからパパの言うことを良く聞くんだよ・・・。」
「うん、わかった。でもどうしたの、一体・・・。」
大きな手のひらでキャリーの頭を撫でると、ジムはベンチに腰を下ろし、語り始めた。
「キャリーも知っている通り、パパの(リー)は中国に古くから伝わる武術の動きをプロレスに合うようにアレンジしたものだ。もっとも、動きそのものをトレースしたのでは異種格闘技戦になってしまうがね。」
「どういうこと?」
意味が分からず、キャリーが口をはさむ。
「そうか、すまん。ん〜、では氣という言葉を知っているかい? フォース、でもいいが・・・。」
「あ、フォースは知ってるよ! スターウォーズのジェダイの騎士!!」
「そうか、なら話は早い。パパの(リー)は、プラレスラーでありながら氣を、おっと、フォースを使うことが出来るんだ!!」
得意げに立てた親指をキャリーにむけるジム。
「ほんと!? パパ、すごい! じゃあ、相手に触れなくても勝てるの??」
キャリーはジムから(リー)を取り上げ、空に掲げながらジムの顔を覗きこむ。
「ん〜、うん。まぁ、実際にはそれは不可能なんだが・・・。氣というのは、命の宿るものすべてがもつ生命エネルギーのようなものなんだ。もちろん、セットアップしたプラレスラーのなかにもね。」
(ジャック)のメンテナンスを始めながら、ジムは続けた。
「そのエネルギーを集中させると、攻撃や防御を行うときに、パワーを何倍も高める事が出来る・・・。パパはそれを制御するプログラムをやっと完成させることが出来たんだ!!」
「ふ〜ん。なぁんだ、ジェダイの騎士じゃないのか・・・。」
話が難しいのか、キャリーも(リー)のメンテナンスを一緒に始める・・・。
「・・・。ふぅ。やれやれ、まだ難しいか。」
ボリボリと頭を掻きながら作業を続けるジム。手元をならってキャリーもメンテナンスを続ける。
「パパは明日から出張で1週間程ニューヨークに行ってくる。もしも興味があったらパパのデスクに資料があるから、勉強するといい。それと・・・。」
ポケットから鍵と名刺をとりだし、しっかりとキャリーに手渡す。
「パパのデスクの鍵と、一緒にお仕事したクランキーの名刺だ。大事にするんだよ・・・。」
「はぁ〜い、パパ。お仕事頑張ってね!」
「よし、お茶にしよう。」
「うん。」
2人は互いのレスラーを抱きしめ、ディナの待つ家の中へ入っていった。
だがその日以降、庭のリングに2体のレスラーが対峙することはなかった。
「ジム氏、誘拐される!!」
1週間後の新聞は非情な見出しでキャリーの心を殴りつけた。
記事によれば、プラレスの技術交流会に招待されたジムを、何者かが拉致、誘拐した、とあった。
警察による捜索が始まったが、ホテルの部屋で粉々に破壊された(リー)の残骸があった以外、有力な手がかりは無かったが、(リー)が破壊されていたことから、プラレスに関係する者の仕業ではないかとの憶測が流れた。
キャリーは泣き崩れるディナを励ますと、単身ジムの会社へと向かった。
目的はハッキリしていた。一つはクランキーに会って事の詳細を聞くこと。
もう一つはジムのデスクの資料を持ち帰る事。
大好きなパパが誘拐され、一晩中泣き明かした。しかし、いつまでも泣いてはいられない。
「待っててね、パパ。僕がパパを助けてあげるよ・・・。」
固い決意を胸に秘め、クランキーのいるフロアへと向かう。
ノックすると、腕を包帯で釣ったクランキーが出迎えてくれた。
「・・・すまない。パパを守ることが出来なくて。」
うな垂れて謝罪するクランキーを、キャリーはそっと励ます。
「クランキーさんこそ。お怪我は大丈夫ですか?」
「ありがとう、キャリー・・・。」
意気消沈していたクランキーもキャリーの言葉で凛とした表情を取り戻す。
「来てくれ、見せたいものがある!」
おもむろにキャリーの手を引き、ジムのオフィスへと向かう。
「鍵は持っているね?」
そういうと自分のポケットから鍵を取り出してキャリーに見せる。
「はい。これですね?」
同じくキャリーも鍵を取り出しクランキーのものと見比べる・・・。
「!?」
よくみると、2つの鍵は合わせて一つとなるような構造になったいた。
「気づいたかい、ここには僕らの大事な研究の成果が詰まっているんだ。誰にもみられないようにね!」
「氣・・・ですか?」
ジムの言葉を思い出し、尋ねる。
無言でうなずくと、クランキーはデスクの中からCD−ROMと、封筒を1通、キャリーに手渡す。
「読んでごらん・・・。」
同じく無言のまま、近くのレターオープナーで封を切る。
「親愛なるキャリーへ
おまえがこれを読んでいるということは、パパはどこか遠くの国へ連れ去られていることと思う。まぁ、殺されたりはしないと思うので心配は無用だ。
おまえに話した氣のプログラム・・・。パパとクランキーは(オーラプログラム)と呼んでいるものが、ある組織に狙われていたのだ。
やつらは執拗にその技術の横取りを企んでいた。
が、パパは断固として拒否していた。なぜなら、このプログラムを悪用すれば、現在のプラレス界を根底から覆すような事態に陥ってしまうからだ。
前におまえが言ったように、フォースのごとく相手に一切触れずに破壊してしまう恐ろしい技術ともなりうるのだ。だが、そんなプラレスは楽しくないし、プラレスラーに与えるダメージが大きすぎる。だから、パパはそれを防ぐために、一人頑張って行く。
おまえには、(リアルオーラプログラム)を残して行く。それと、万が一に備え、新しい機体もクランキーから受け取ってくれ。
いつか、元気で会える日を楽しみにしていてくれ。 ジム」
かれたはずの涙が頬をつたう。
「パパ・・・。」
ふと、気配を感じて振り返ると、そこには真新しいプラレスラーを抱いたクランキーが立っていた。
「(リー)? ううん、(ジャック)?に近いけど・・・。」
「これはジムが君に渡すはずだった新しいプラレスラーだ。名前は・・・。」
「・・・(リー・Jr)さっ!!」
キャリーの瞳は、更に強い意思を放っていた。
「オーケイ、キャリー!! (リー・Jr)と一緒にパパを探そう!!」
「うん、クランキーさん、よろしくお願いします!!」
(リー・Jr)と一緒に闘っていけば、いつかジムに会える・・・。
2人はそんな想いを胸に、改めて握手を交わすのであった。
だが無情にも何の手がかりも得られないまま、3年の月日が流れた。
そして1週間前、キャリーのパソコンに差出人不明のe−mailが届いた。
「japan izayoi Masaki−Shimamura 」
初め、スパムだと思っていたキャリーだったが、妙に気になりだした。
数日前に(リアルオーラプログラム)の調整が最終段階に入った事、ジムが拉致された日から丸3年経とうとしていたこともあり、クランキーと相談して2人で日本へと旅立つことにしたのであった。
現在・・・。
「いよいよだな、キャリー・・・。」
となりで眠っていたクランキーも目を覚ます。
「はい、クランキーさん。僅かな手がかりかもしれませんが、パパに会うためなら僕はその可能性に賭けてみたい んです。」
「わかっているとも。頑張ってジムを・・・。パパを探し出そうな!」
「はい、そのつもりです。よろしくお願いします、クランキーさん!」
「よし、さぁ、着陸だ!」
fin
〜管理人より〜
げんさん、投稿ありがとうございました!
いや、すばらしいです。鳥肌ものの展開ですね。
ぜひとも続きをお願いしますっ!