オリジナル・ストーリー「オーラ・プログラム」

 

 

〜第3話〜

 初陣 〜Act.2〜

 Dリングにたどり着くと、すでに先ほどの少年が仲間と共にキャリー達を待ちうけていた。相変わらずの不敵な笑みを浮かべながら。

 「しょうがない、すこし遊んでやるか。」

 そう言わんばかりの態度のようだ。

 「待たせたね。君たち。」

 クランキーはそういうと大人の余裕で彼等と握手を交わし始める。

 日本語を話すとはいえ、青い目をした外国人との接触に戸惑いの表情を浮かべる少年達。

 キャリーは黙々とリー・Jrのバトルの準備に取りかかっていた。

 リングのすぐ脇に設置された電光掲示板には、これから対戦するプラレスラーとオーナーの名が表示されている。

 FireDragon with Kenta(3S)

            VS  Lee・Jr with Carry(3S)

 同じジュニアヘビー級の「PWH−03」なのだが、改造の加えられたリー・Jrと違い、ほぼノーマルの状態で、不思議と懐かしさを覚えるキャリーだった。

 どうやらサード・ステージにおいていくらかの戦績を残しているらしく、セカンド・ステージ目前の様子であった。

 ふと、リング越しに対戦相手「ケンタ」の、どこかにやけた表情が見えた。

 「負けるもんか!!」

 コックピットにセットしたパソコンの電源を投入し、コントロール・プログラムを立ち上げる。

 ケンタのファイアー・ドラゴンは、すでにリング上で余裕の表情でリー・Jrを待ちうけていた。

 「セットアーップ!!」

 キャリーに呼応するかのように、リー・Jrが素早く飛び上がり、緩やかな弧を描きながらリングに降り立つ。

 レフェリー・ロボが2体のプラレスラーのチェックを交互に行い、反則がない事が確認された。

 そして、バトル開始のゴングがなる。

 カンッ!!

 「行きます!」

 右拳を左掌でつつみ、軽く会釈をするキャリーとリー・Jr。

 「ふんっ!!」

 その隙に一気に間合いをつめるF・ドラゴン。

 一気に決めるつもりなのか、猛然と右腕のラリアットを繰り出すF・ドラゴン。

 リー・Jrは驚く様子も無く、ゆるやかに体捌きを行いF・ドラゴンの側面に滑り込む。

 そしてすばやく膝蹴りを放ち、これがきれいにボディにはいる。

 先手はリー・Jrが取った。

 ぐらつくF・ドラゴンだったが、かろうじてダウンをまぬがれたようだ。

 だが、すかさずリー・Jrの靠(こう:体当たり)がF・ドラゴンを直撃する!

 「ガンッ!!」

 吹っ飛ぶF・ドラゴン。

 「おお・・・。」

 いつの間にかバトルの開始に気づいたギャラリーが一瞬の攻防にどよめく。

 倒れたF・ドラゴンを悠然と見下ろし、軽くステップを踏むリー・Jr。

 「な、なんだとぉ!?」

 眼前で起こった光景が信じられず、目を丸くするケンタ。

 今までのバトルなら、相手の出鼻をくじくラリアットから自慢のスープレックスで、場合によっては一気にフォールまで決めるはずであった。

 しかし今、リングに横たわっているのはF・ドラゴンである。

 「少しはやるようだな・・・。」

 ここでようやく相手の力量に気がついたのか、ケンタの指がキーボード上で忙しく動き始める。

 「ちっ、反撃だ! いけっ! F・ドラゴン!!」

 跳ね起きたF・ドラゴンが、両腕を掲げて憤怒をあらわにする。後方にとび、ロープの反動を利用して再び突進を開始する。

 迎え撃つリー・Jrもその場からF・ドラゴンめがけて突っ込んでいく。

 軽く飛び上がったF・ドラゴンが、ドロップキックを放つ。

 叩き落とさんとしてリー・Jrもジャンプする。が、わずかに軌道がそれ、F・ドラゴンのキックをまともに食らい、勢いよく落下する。

 きれいに着地したF・ドラゴンが、リー・Jrめがけてエルボーをおとす。

 しかしモーションが大きく、これを簡単にかわすリー・Jr。

 「キャリー、捨己従人を忘れてるよ!」

 セコンドについたクランキーがアドバイスする。

 「そうだ、大切な事を忘れていた!」

 ふ〜っと息を吐き出し、リラックスするキャリー。

 捨己従人とは、己を捨てて敵の攻撃に逆らわず、流れにまかせて勝機をつかむことをいう。

 2人の学んだ中国拳法の奥義の一つである。

 「よし、まだまだこれからだっ!!」

 キャリーも慣れた手つきでキーボードを叩く。

 リング上では2体のレスラーが一進一退の攻防を繰り広げていた。

 F・ドラゴンの、そのパワーにまかせた重量感のある攻撃に対し、スピード感にあふれたリー・Jrのテクニックは、およそサード・ステージとは思えない、迫力のあるバトルシーンを展開していた。

 フリー対戦であるため、勝敗が決まるまでラウンドは続く。すでに10分が過ぎていた。

 「ふっ。こんなに楽しいバトルは久しぶりだぜ!」

 そんなことをつぶやく自分に戸惑いを覚えながら、バトルを楽しむケンタ。

 だがバッテリーの残量が少ないことを示すディスプレイが彼をあせらせる。

 サード・ステージで初めての強敵に、少しばかり押され気味であることもケンタのあせりに拍車を掛けていた。

 「う〜ん、勝ち目は薄いけど、やるしかないか・・・。」

 ケンタの指が力強くキーボードを叩きつけた。

 一方、バトルを優勢に進めながら、いまひとつの決め手にかけるキャリーもあせり始めていた。

 「少し甘くみていたかもしれないな・・・。」

 見かねたクランキーが助け船をだす。

 「いいだろう、キャリー。ここはひとつ・・・、RAPを発動してみるか!!」

 一瞬戸惑いの表情をみせるキャリーだが、コクリと頷いてそのファイナルキーを押す。

 「そうだ、負けてしまっては意味がないんだ!!」

 「シカッ!!」

 リー・Jrの眼が鈍い光からより眩しい光へと変わる。

 それとは逆にボディの色が真紅から限りなく黒に近い赤に変わっていく。

 RAPの発動である。

 「そんなこけおどしに負けるか! F・ドラゴン、いけぇーっ!!」

 ケンタの気合に押されるように、F・ドラゴンがバトル開始時と全く同様にラリアットを繰り出す。

 「なんのつもりだ!?」

 また同じようにかわすさ、というキャリーの予想に反して、F・ドラゴンは瞬間、身を沈めてリー・Jrの下半身めがけてタックルにいく!

 RAPによる学習機能の向上が仇になったのか、かわしきれずに倒れるリー・Jr。

 「しまった!!」

 キャリーが慌てて脱出するよう、リー・Jrに指示を出す。

 「そう簡単に逃すか!!」

 ケンタは作戦の成功に満足しつつ、必殺技のコマンドを打ち込む!!

 もがくリー・Jrを、最後の力を振り絞って大技のジャイアントスイングで振り回す。

 ギャラリーからも歓声が沸きあがる。

 F・ドラゴンの勝利が確定したかに見えた。

 だが、同じくコマンドを打ち込んだキャリーは静かに目を閉じていた。

 「まだだ・・・。さぁ、おまえの力をみせてやりなよ、リー・Jr・・・。」

 すると信じられないことに、リー・Jrが回転中にもかかわらず、自らの体を屈めはじめた。

 遠心力をも打ち破り、最も深くまでかがみこんだ次の刹那、思い切り伸びたリー・Jrの体はF・ドラゴンの手を離れ、空中へと放出された。

 「ばかな・・・。そんなことが・・・!!」

 呆然とするケンタ。

 離れ際にドロップ・キックを食らったF・ドラゴンは、バランスを失い後方に倒れこむ。

 一回、ニ回と空中で回転し、ふわりとリングに降り立った黒いレスラーは起き上がろうともがいている相手にゆっくりと近づき、すっと右腕を突き出す。

 立ち上がったF・ドラゴンがリー・Jrに襲いかかろうとした瞬間、わずかにリー・Jrのボディが揺れた。

 ・・・そして、ファイヤー・ドラゴンはゆっくりと倒れた。

 倒れたままのF・ドラゴンに近寄り、バトル続行の判定をするレフェリー・ロボ。

 程無く大きく頭上で腕を繰り返し交差させる。

 この瞬間、リー・Jrの勝利が確定した。

 同時に大きな喚声がギャラリーから沸き起こる。

 いつの間にこんなに集まったのだろう。

 大きな大会ならまだしも、ただのフリーバトルでは珍しい事であった。

 「・・・バッテリーが・・・切れたのか・・・?」

 ディスプレイを覗きこむケンタ。

 しかし、そこには「戦闘不能」のサインが点滅するだけだった。

 「俺の負けか・・・。」

 不思議といい訳をする気持ちにはならなかった。

 取り巻きの仲間はバッテリー切れだとか騒いでいるが、たぶんそうではないと思えた。

 「あの最後の一撃だ・・・。」

 あの届いたか届かないかも分からないような相手の拳。

 だがケンタは、あの拳こそがF・ドラゴンへの止めの一撃だったのだと確信していた。

 最後の攻撃が決まり、安堵の表情を浮かべるキャリーとクランキー。

 最後の一撃を放つとほぼ同時にバッテリー切れとなっていたリー・Jrからのデータをパソコンで確認する2人。

 ふと人影に気づき顔を上げる。

 そこには今まで戦っていた少年、ケンタの姿があった。

 「いいバトルだったな!!」

 しばし考え込んだケンタであったが笑顔で話し掛ける。

 が、その内面はくやしさでいっぱいのようであった。

 その想いに応えるように、キャリーも笑顔を見せて、ケンタを称える。

 「こちらこそ、いい経験をしました。」

 クランキーを介してではあるが、共にプラレスを愛する少年同士の心のふれあいが、そこにはあった。

 リー・Jrもバッテリー切れにより、普段の真紅のボディを取り戻していた。

 互いの健闘を称える2人に、ギャラリーは惜しみない拍手を送るのであった。

fin

 

〜あとがき〜

まぁ、こんなところでどうでしょう(^^; 次はプロフィールでも書きます。

でもプロレス自体あまり馴染みがないので、かなりテキトーになると思われます。

そんな訳で、よろしくお願いしまっす!!

はぁ〜格闘シーンはムズいっす(笑) リー・Jrなんか殆ど技使って無いし(^^;;

いっそ異種格闘の団体でも作るか・・・ってまた大変になるやん(笑)

次回予告!!

辛くも勝利を収めたキャリー達。だが、ケンタが語る外国製プログラムの暴走とは?

そしてジムを誘拐した組織との関係は! 深まる謎を解き明かせ!!

急げ!! キャリー!! 闘え!! リー・Jr!! 

次週「動揺」にご期待下さい。・・・キミは生き延びることが出来るか?

(次回の第4話とは、一切関係ありません。今のところ・・・(笑))

 

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