オリジナル・ストーリー「オーラ・プログラム」

 

 

〜第5話〜

 焦燥

 香港。

 さまざまな人種が行き交うアジア有数の貿易都市。

 九龍城に近いある道場で、男が小さな女の子を相手に散打の練習をしていた。

 彼は自分の背丈に遠く及ばないような女の子に手も足も出ないようだった。

 「ハッ!!」

 気合とともに放たれた女の子の一撃に、男は尻もちをつく。

 「参りました・・・。」

 力無く相手の女の子を見上げると、何故か女の子は成長していて、黒いスーツを身に纏った美しい女性と変貌していた。

 「やはり君だったのか、フェイ−レイ・・・。」

 ふと、遠くから自分を呼ぶ声がする。

 「・・・キーさん、クランキーさん!! 大丈夫ですか!?」

 (キャリー・・・!? そうか、これは夢なんだ・・・。)

 ゆっくりと目を開けるクランキー。

 そこには心配そうな顔をしたキャリーが立っていた。

 踊り場で気を失ったクランキーは、偶然通りがかった警備員に発見され、救護室のベット運ばれたのだった。

 あまりに遅い彼を心配して、探し回ったキャリーが部屋にたどり着いた頃、街は燃えるような夕日で赤く染まっていた。

 「気が付きましたか? 心配したんですよ、ああ、良かった。」

 安堵の表情を浮かべ、へなへなと椅子に腰掛けるキャリーに笑顔で応える。

 「すまなかったな、キャリー。もう大丈夫だ。」

 彼はそういうと、上体を起こし身支度を始めた。

 「一体、何があったんだい、おじさん。」

 隣からひょっこり顔をだしてケンタが訪ねる。

 倒れた時に頭を打ったのか、多少の痛みを感じながら、ゆっくりと話しだす。

 「・・・キャリー、フェイ−レイを覚えているかい?」

 「フェイ−レイ・・・。えっと・・・。」

 キャリーは記憶の中からその名を探すが、すぐに首を傾げて思いだせないことを伝えた。

 「そうか。ほら、香港で私達が学んだ道場にいた教練(コーチ)の女の子だ。まさか日本で会うとは思っても見なかったよ。」

 「あっ、彼女ですか。思い出しました! でも何故、彼女が日本に?」

 「わからない。だが彼女はジムの行方を知ってるようだ。」

 その言葉を聞いてキャリーが喜びと疑惑の入り混じった表情を見せる。

 「まさか、フェイ−レイがパパを拉致した組織に関係してるんじゃ・・・。」

 「いや、それはないな。だが早くRAPを極めろと言っていた・・・。なんらかの形で彼女が関わっていることに変わりはないと見るべきだろう。」

 「フェイ・・・。RAPを・・・極める!? 一体何の事なんでしょう?」

次から次へと増える疑問にキャリーは困惑の色を隠す事が出来なくなっていた。

 「・・・キャリー、私達が日本に着たきっかけはなんだい?」

 荷物を抱え込みながらクランキーが話し掛ける。

 「それは・・・。」

 キャリーは数日前に送られてきたe−mail、その内容を思い浮かべた。

 「・・・そう『japan izayoi Masaki−Shimamura』そこに手がかりがあるはずなんだ。」

 学校で、たいして役に立ちそうもない英語を学んでいるケンタが、めずらしく英会話の途中に割り込んできた。

 「イザヨイ? もしかしてシマムラ・テクニカル・ファクトリーの、あの十六夜かなぁ?」

 クランキーがハッとしてケンタに視線を送る。

 「ケンタ君、十六夜というプラレスラーを知っているのかい!?」

 「うん、もちろん! このあたりでもかなり有名だよ。なんたってファースト・ステージのレスラーだからね。いつか対戦してみたいよ。たしか店は多摩ニュータウンにあったと思ったけど、行ったことないから詳しくは知らないよ。」

 「ありがとう、ケンタ君! よし、すぐに行こう、キャリー・・・。」

 勢いよく立ち上がるクランキーだったが、やはり先ほどのダメージが残っているのか、ふらふらと壁にもたれ掛かる。

 「・・・クランキーさん。無理はしないで下さい。」

 「ジムの手がかりが見つかったんだ。すぐにでも出発しよう!」

 急かすクランキーをなだめるように、キャリーがゆっくりと立ち上がる。

 「今はクランキーさんの体の方が大事です。今夜はホテルでゆっくり休みましょう。」

 「しかし・・・。」

 言いかけたものの、自分の体が思うように動かないことを認め、おとなしく少年の言葉を受け入れることにした。

 「そうか。キャリーがそう言うなら、今夜はゆっくり休ませてもらうよ。それと、ケンタ君、貴重な情報をありがとう。いつかまたバトルしようね。」

 いつもの優しい笑顔でケンタと握手を交わすクランキー。

 キャリーもそれに倣う。

 「早くパパが見つかるといいね!」

 「うん、いつか世界大会で会おう、ケンタ君!!」

 「次は絶対に俺の勝ちだぜ!!」

 「こっちも負けないよ!!」

 2人の少年は互いの活躍を願いながら握手を交わし、再会を誓った。

 そんな彼らを、見届けたと言うように、太陽はビルの谷間へと沈んでいった。

 街が人工の光であふれ返る中、3人は「渋谷TOP・メカ・リング」を後にした。

 眠らない街「渋谷」はより一層の賑わいを見せ始めていた。

 

fin

 

次回予告!!

 ゆっくりと、しかし確実にジムへと近づくキャリー達。

 一方、ジムが語る拉致誘拐の真相、そして地下で暗躍する謎のプラレスラーの正体とは?

 RAPを巡る、それぞれの思惑が交錯する・・・。

 第6話 承前

  爆裂! オーラ・プログラム!! よろしく勇気!!

 

〜あとがき〜

 本当はジムの近況なども書きたかったのですが、長くなりそうだったので分けました。

 お気づきの方もいるかもしれませんが、次回予告の最後の文はそれぞれ、昔のTV番組(アニメや特撮モノ)の次回予告をもじったものになってます。

 全部分かる人はすごい!!・・・かも(笑)

 

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