オリジナル・ストーリー「オーラ・プログラム」

 

 

〜第7話〜

 過去 〜Act.1〜

 強い陽射しがビルに反射し、まるでプリズムのように輝く都市、香港。

 大学生であったジムとクランキーは、アルバイトで貯めた金を使い、留学の名目でこの街を訪れていた。

 真の目的は彼らの学ぶ截拳道のルーツを探すこと。

 かのブルース・リーが創始したとされる截拳道の土台となった詠春拳を学ぼうとした彼らは、武術の本場である中国本土、台湾などは眼中に置かず、ブルースの生まれ育った地へと赴いたのであった。

 いくつかの道場を訪ね歩き、さまざまな套路を研究していた彼等は、街外れにある道場、「五龍武館」へと辿り着いた。

 「ここか。この辺りで一番強い連中がいるって言う道場は・・・。」

 真っ赤な、しかし年代を感じさせるような立派な門構えを見て、クランキーが溜め息をもらす。

 傍らにいるジムはというと、道場の中で一際目立つ漆黒の髪の女性に釘付けとなっていた。

 「おいおい。おまえの女好きは知ってるが、か弱い女ならともかく、強い女は止めといた方がいいぞ。あっはっはっは。」

 茶化すクランキーを引きずるようにして、ジムは真っ直ぐにその女性、師範であるヤン−メイスンの元へと歩いていった。

 「やぁ、初めまして。突然だけど今夜一緒に食事でもどうかな?」

 ジムはいきなりヤンへ話し掛ける。

 驚くヤンだったが、慣れているのか、そんなに気にしたようでもなかった

 「ええ、喜んで! と言いたいところだけど、あいにくその手には乗らないわよ、道場破りさん!」

 と、いきなりジムに向かって蹴りを放つヤン。

 「!!」

 とっさに身を翻して、その鋭い蹴りをかわすジム。

 笑っていたクランキーが慌てて仲裁に入ろうとするが、ジムは彼の制止を無視して、ヤンへと向き直り、構える。

 「いい蹴りだ。女にしとくのはもったいない気もするが・・・。」

 そう言いながら正拳を放つジム。

 軽く受け流し、一気に身を沈めたヤンの足払いがジムを襲う。

 小さく跳ねて後ろに下がるジム。

 「う〜ん。綺麗な足だなぁ。」

 「ふんっ!!」

 余裕たっぷりに話し掛けるジムに、ヤンはますます敵対心を燃やすが、間に割って入ったクランキーが二人をなだめる。

 「待ってくれ! 僕等はただの旅行者だ。截拳道のルーツを探している。けして道場破りなんかじゃない。信じてくれ! ジム、君も初対面の方に対して失礼じゃないか! さ、早くお詫びするんだ。」

 クランキーの慌てぶりが余程おかしかったのか、ヤンはすぐに笑顔を見せるとジムに向かって右手を差し出す。

 「白人だったから、あたしてっきり地上げ屋かと思って・・・。」

 「地上げ屋? いつもそんなこと言ってデートの約束を断るのかい?」

 笑いながら握手を交わすジム。

 気が付くと回りは練習生たちで取り囲まれていた。

 「話せば長くなるのだけど・・・。」

 ヤンの話を要約すると、アメリカの企業が道場のあるブロックを丸ごと買収し、一大アミューズメントパークを建設しようとする計画を進めていたのだが、頑なに道場を手放す事を拒んだ「五龍武館」に対して、いつしかならず者による道場破りを装った嫌がらせを始めたということであった。

 「ふむ。それは迷惑な話だな・・・。」

 クランキーが散打を再開した練習生を眺めながら感想をもらす。

 「まぁ、そういう訳だから、悪く思わないでね、道場破りさん! でもお詫びに美味しいお茶でも淹れてあげる。ついて来て!」

 ジムにウィンクすると、奥の建物へと誘う。

 ヤンのすぐ後ろを歩くジムが、彼女のスタイルのよさに溜め息をつく。

 「う〜ん。なかなかの女性だと思わないかい、クランキー。」

 既に呆れ顔のクランキーは気のない返事をしたが、ジムの耳には届かなかった。

 「少しそこの椅子にでも掛けていて。」

 お茶の準備をするヤンを待つ間、ジムは部屋の中を見渡していた。

 「ん、これは・・・。」

 部屋の片隅にある古びた人形・・・。

 これがジムとプラレスとの出会いであった。

 「これは・・・。プラモデルなのかい?」

 無造作に置かれてあったプラレスラーを手に取り、ジムが尋ねる。

 「ああ、それは・・・。」

 支度を終えたヤンがテーブルにスナックとウーロン茶を置き、ジムに歩み寄る。

 「むかし、修行を嫌がる私の機嫌を取ろうとして、パパが買ってくれたの。ん〜しばらく動かしてないから・・・。」

 そう言うと、今度はノートパソコンを持ち出して作業を始めるヤン。

 ジム達二人は何が起こるのか見当もつかず、黙ってヤンを見守っていた。

 「よし! オッケー・・・の筈なんだけど・・・。」

 ヤンがキーボードを叩くと、そのプラレスラーは静かに動き始めた。

 「おおっ!!」

 初めて見るプラレスラーに感嘆の声を上げるジム達。

  その小さなロボットは、まるで生きているかのように躍動し、先ほど練習生達が行っていた套路を寸分違わずトレースしてみせる。

 「プラレスラーっていうの。日本では大きな大会なんかもあって、盛り上がってるみたいだけど、ここではあんまり見ないわね・・・。」

 ジムは彼女の話そっちのけで、初めて見るプラレスラーに感動していた。

 工学部の二人にとっては、ある程度の知識はあったものの、実際に目で見てみるとその技術には驚かされるばかりであった。

 「すごいな、クランキー!」

 「ああ、香港に来た甲斐があったぜ!!」

 既に武術そっちのけで盛り上がる二人。

 それを見て呆れるようにヤンが口を開く。

 「まったく・・・。男ってどうしてこうなのかしら。」

 そう言いつつふと部屋の入り口を見ると、男が一人、静かに中の様子を伺っていた。

 「チェン、そんな所にいないで中に入りなさいな。」

 ジム達も振り返りチェンと呼ばれた青年に軽く会釈をする。

 「紹介するわ、こちらアメリカから来たジムとクランキー。彼はこの道場の師範で、私の婚約者のチェンよ。」

 「よろしく・・・。歓迎・・するよ。」

 少し戸惑ったような表情を見せながらチェンはジム達に挨拶をする。

 「こちらこそ。こんな美人の婚約者がいるなんて、幸せ者だね。」

 「・・・ははっ、ありがとう。」

 いかにも、といった作り笑顔で応えるチェン。

 「ふふっ。まぁ、立ち話もなんだし、お茶にしましょ。」

 嬉しそうな顔をして、ヤンはテーブルにつくと、3人にも席に着くよう促す。

 武術の事、プラレスラーの事、話し込むうちに4人はすっかり打ち解けていった。

 だがこの時、悲劇の幕が上がったことに気付いたものは誰一人いなかった・・・。

fin

 次回予告!!

  ジムとクランキー。そしてチェンとヤン。4人の運命が静かに交わろうとしていた。

  許されない恋。そこには悲しい結末が待っていたのだった。

  第8話 過去 〜Act.2〜

  チャー・・・シュー・・・メーーーーーーン!!

 

あとがき

  完全復活まであと少し。みなさんお元気ですか。げんです。

  殆どプラレスの世界から遠ざかってます。まるで某○スタードのようです(苦笑)

  あと、次回予告はネタが切れました(笑) あまり話数がかかるのも問題ですね。

  ご感想お待ちしております。それにしても次回の展開がバレバレのような気が・・・。

 

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