オリジナル・ストーリー「オーラ・プログラム」

 

 

〜第9話〜

 成長 

 ふと目が覚めると、窓の外には煩い程のネオンの光が溢れていた。

 「眠っていたのか・・・。」

 無意識の内に胸の古傷に触れるジム。

 あの時、形見として貰ってきた「リー」は、もう破壊されてしまった。

 ニューヨークで、それも親友であったチェンによって粉々にされてしまったのだ。

 クランキー程の付き合いなどはなかったが、ほんの数週間で、ジムとクランキー、そしてヤンとチェンの友情は、截拳道を通じて見せかけだけではない、確かなものへと変わっていった筈だった。

 少なくともジムはそう思っていた。

 だが現実はそうではなかった。

 ジムとヤンはあまりにも近づき過ぎた。

 その為にチェンは2人、特にジムに不信感を抱くようになり、結果、ヤンは犠牲となってその命を落としてしまった。

 あの時から、ジムとチェンは陽と陰、相反する2つの運命を背負ったのだった。

 アメリカに帰国したジムは、大学を卒業後、大手の代理店に勤め、同僚であったディナと結婚、ほどなく長男キャリーが生まれる。

 その傍らプラレスに没頭し、その才能は独学でありながら、プラレスの技術交流会に招待されるまでになっていた。

 その交流会のあった夜、二人は再会を果たす。

 完全に敵対するものとして。

 先に応対に出たクランキーが覆面をした数人の男に襲われ、気を失ってしまった後、異常に気付いたジムが侵入者と対面した。

 一人の男がゆっくりと覆面を外す。

 変わり果てたチェンがあの日と同じような視線を送りながらジムに話し掛けた。

 「チェン!? チェン・・・なのか?」

 「オ、オレのおんなぁ・・・ヤンを・・・ゲッヘッへ・・・。」

 テーブルに置いてあった「リー」を強く抱きかかえると、いきなりハッチを開けて内部のパーツを引きずりだすチェン。

 「なにをするんだ! チェン!!」

 止めようとするジムを仲間の覆面が押さえ込む。

 「・・・へへへへ。ウフフフ・・・・。・・・!! これだ!!」

 「ブチブチッ!!」

 チェンが無理矢理取り出したパーツは、そう、オーラ・プログラムが搭載されたパーツだった。

 「ゲヘヘヘ。これさえ手に入れば・・・。うおっうおっヤン〜!!」

 チェンは既に狂っているようだった。

 「リー」を床に叩きつけ、足蹴にする。

 「ハハハッ。これでオレはヤンとひとつになれるぅ・・・。ヒャーッハッハ。」

 「チェン・・・。」

 ジムは破壊されていく「リー」よりも、既に壊れてしまっているチェンが痛々しく思えた。

 「はっは〜、オレはこいつで世界を乗っ取ってやる・・・。ヒャーッハッハッハ!!」

 「何を言っているんだチェン、目を・・・目を覚ませ!!」

 引きとめようとした瞬間、覆面達が待ってましたとばかりにジムに襲い掛かってくる。

 「くっ・・・、チェーーン!!」

 力尽き、倒れるジムを見届け、チェンは覆面の男達を従え、部屋を去っていった。

 激しい痛みが全身を締め付ける。

 だがジムは歯を食いしばり、立ち上がった。

 そばで気を失い、倒れているクランキーにそっと話し掛ける。

 「すまん、クランキー。これは俺の業だ。巻き込んでしまってすまなかった。」

 そして決意した。

 なんとしてもチェンの野望を食い止めると。

 「いつか君と・・・キャリーの力を必要とするかも知れないが、今は・・・。」

 なんとか自分の力だけで、チェンを止めたい。

 そんな気持ちがジムを動かしていた。

 そうすることが、死んでしまったヤンへのせめてもの償いだと信じて。

 部屋の電話から警察に通報すると、ジムもまた部屋を後にした。

 あれから3年の月日が流れていた。

 「結局、皆を巻き込んでしまったな・・・。」

 煙草に火を点け、立ち上がるジム。

 「あら、最初に巻き込まれた私の時はそんな感傷は無かったくせに!」

 夕食の支度を終えたフェイが不意に話し掛けてくる。

 「・・・メール、余計なお世話だったかしら?」

 そう、キャリー宛ての差出人不明のメールはこのフェイが送ったものだ。

 「いや、RAPの解析がどの程度進んだのか知りたかったし、何よりもキャリーに会いたくなったしね。逆にありがたく思ってるよ。」

 「そう。でもあの内容で分かるかしらね。パパが今何をしているのか、・・・とか。」

 「今日クランキーには会ったんだろう。なんだか俺も会いたくなったよ。」

 「・・・あたしも道場の皆が懐かしいわ。」

 そういってフェイは窓際に立ち、遠く故郷の香港を思い浮かべた。

 フェイは元々「五龍武館」の練習生だった。

 彼女にとって姉のような存在であったヤンの死は、幼かった彼女に大きなショックを与えた。

 香港の事件の後、「五龍武館」は閉館となり、待ってましたとばかりにアメリカの企業がアミューズメントパークを建設してしまった。

 そこでフェイは、数人の練習生と一緒に新たな道場に移り、そこで師範になるほどの腕前となったのだ。

 彼女を妹とも思うジムとクランキーは彼女からの連絡を受け、数年前に幼いキャリーも連れてその道場を訪れた事があった。

 つまりフェイはキャリーの老師とも言える存在であった。

 ニューヨークの事件の後、チェンの手がかりを求めて香港を訪れたジムの話を聞き、好奇心からか、以後彼に同行していたのだった。

 「全て片付いたら皆で香港に行ってみるか。」

 「ええ、歓迎してあげるわ。」

 二人は既に冷たくなったスープに苦笑いを浮かべながら夕食にありつくのだった。

 

 数日後

 キャリーとクランキーはフェイの送ったメールを手掛かりに、ここ「シマムラ・テクニカル・ファクトリー」の前に辿り着いていた。

 「渋谷TOP・メカ・リング」で出会ったケンタという少年がいなかったら、まだあても無く彷徨っていたかもしれない。

 二人はケンタに感謝していた。

 「クランキーさん!」

 「うん。」

 「ごめんくださぁい!」

 ドアを開け中に入る二人。

 「いらっしゃい。」

 店内右側に置いてあるメカ・リングの影から声がする。

 立ち上がり、こちらに近づいてくる。

 「シマムラ・テクニカル・ファクトリー」 オーナーのマサキ・シマムラ、その人である。

 「何かお探しですか?」

 穏やかな、そして優しげな表情で二人に話し掛けるマサキ。

 「ハロー、マイミーム・イズ・・・。」

 言いかけたキャリーを見て、マサキはふと何かを思い出したような表情をする。

 「キャリー・・・。キャリー・グラント君かい?」

 不意に名を呼ばれたキャリーは驚き、言葉を飲み込んでしまった。

 「え・・・ええ、そうです。彼はキャリー、私はクランキー。あなたがミスター・シマムラですか?」

 キャリーに代わり話始めたクランキーであったが、やはり緊張の為に上手く話すことができない。

 それを察知したのか、マサキが話を続ける。

 「私も驚いてますが。そうです。私がマサキ・シマムラです。ジムさんを探しているんですね。」

 ジム、マサキ・シマムラの単語を聞き、キャリーが頷く。

 「ええ、そうです。実は・・・。」

 クランキーが経緯を話す。

 ジムの失踪の事、メールの事、「渋谷TOP・メカ・リング」で得た情報の事、ジムに関する事。

 隣にいるキャリーは胸の高鳴りを感じていた。

 「・・・ということです。」

 「・・・そうですか。・・・少し待っていて下さいね。」

 話を聞き終えたマサキは、店の奥に行き、なにか探し物を始めた。

 「ジムさんから預かっていたものです。」

 ややあって戻って来たマサキは、持っていた小さな箱を二人に差し出した。

fin

 次回予告!!

  新たな力を手に入れたキャリーとリー・Jr。その力を試すべく、『KOF(KING OF FIST)』にもっとも近い男、マサキ・シマムラが立ちはだかる。

  第10話 飛翔

  ご期待下さいね!!

 

〜あとがき〜

  ・・・もはや言い訳もございません。ですが次回は十六夜ぶいえすリー・Jr。

 必ずやご覧に入れますので、何卒、なにとぞぉ〜(って、しっかり言い訳(笑))

 

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