〜第10話〜
飛翔
昼下がりの「シマムラ・テクニカル・ファクトリー」
その店内にあるメカ・リング。そこで二体のプラレスラーが対峙していた。
十六夜とリー・Jrである。
レフェリー・ロボの「ジョー・タイプ」がチェックを終え、ゴングが鳴ってからおよそ60秒が経過していたが、互いに距離をとり、相手の隙を窺っていた。
「どうした、キャリー君。来ないのならこちらから行くよ!!」
マサキがキーボードを叩き、プログラムを転送する。
一気に距離を詰める十六夜。
オートでその突進を回避し、エルボーでの反撃を試みるリー・Jr。が、十六夜の素早い動きを捉えることは出来なかった。
「疾い!!」
思わず唸ってしまうキャリー。
他の相手なら間違いなく顔面にヒットしていたはずだが、逆に離れ際に掌打を食らってよろめくリー・Jr。
実力の差がひしひしと伝わってくる。
だが怯む訳にはいかない。
「それならっ!!」
両手を挙げ、十六夜に近づくリー・Jr。
そしてリング中央での力比べが始まった。
「ガシッ!!」
同じJr・ヘビー級とは言え、百戦錬磨の十六夜の前に次第に押されていくリー・Jr。
が、キャリーはあせる様子も無く、じっとタイミングを計っていた。
「今だっっ!!」
キーボードからコマンドを転送、同時に、両手を組んだままリー・Jrが小さくジャンプし、素早く抱え込んだ両足からドロップキックを放つ。
渋谷で闘ったケンタとの一戦で習得した動きだ。
十六夜も反応こそするものの、流石にかわしきれず、胸に初めてのダメージを負う。
「やるな、キャリー君!!」
マサキは、驚いた顔をしながらもリー・Jrの手が離れた瞬間、バックステップを指示してダメージを減らしていた。
長年の経験と勘、とでもいうのだろうか。
瞬時の判断はひよっこのキャリーとは比較にならない。
(リー・Jr・・・。たしかにサード・ステージクラスではあるが・・・)
マサキはリー・Jrに対する認識を改めていた。
言い知れぬプレッシャーを感じるのだ。
(・・・これが完成したRAP本来の性能なのか?)
試合前のキャリー達との会話が脳裏をよぎる。
30分程前
「ジムから・・・。」
クランキーが受け取り、そっとキャリーに手渡す。
恐る恐る箱を開けて中身を確認する二人。
中にあった物は、勾玉のような形をした、たった一個のパーツだった。
「それは・・・。一体なんなんでしょう?」
通常のパーツとは違う、その形状にマサキは首をひねった。
だがキャリー達には一目見て思い当たる事があった。
「キャ、キャリー! これだ! このパーツなんだ!!」
「はい! やっと見つけました!! これでRAPを存分に生かす事が出来る筈です!」
「よし、早速取り付けにかかろう!! ミスター・シマムラ、少し場所をお借りしたいのですが、よろしいかな?」
二人の様子に思わず笑みをこぼしながら、奥のメカ・リングの周りにあるメンテナンス用の長テーブルに案内する。
「必要な工具は揃ってるはずです。自由に使って構わないからね。」
「サンキュー、ミスター・シマムラ!」
二人はマサキに笑顔を向けると、彼から受け取ったパーツを取り付けるべく作業に入った。
マサキもちょうど入店して来た客の為にその場を離れた。
早速キャリーはリー・Jrのメンテナンス用のハッチを開き、更にその奥のパーツを引っ張りだした。
それは円形で、中央から半分はパーツがセットされているが、もう半分には何も無い、奇妙な形のパーツだった。
「これですね・・・。」
キャリーは今しがたマサキから受け取ったパーツをはめ込んでみた。寸分違わず、ピタリとその場所に収まり、それはまるで・・・。
「大極図・・・か!」
日本の古代遺跡から多数出土した、勾玉を二つ合わせたような形。
中国において、全ての事象を表すとされる「大極図」が見事に浮かび上がった。
「ピッ・・・ピピッ」
不意にPCのモニターが更新され、大量のデータが流れ込む。
Aura−condenser・・・ACTIVE
Aura−amplifier・・・ACTIVE
Aura−muscle・・・ACTIVE
・
・
・
Combined Plus & Minus
Welcome to the
Real−Aura−PG Second Edition!!
「これは・・・?」
モニターを凝視しながらクランキーに尋ねるキャリー。
「・・・詳しく解析しないとなんとも言えないが・・・。」
「案ずるより産むが易し。ひとつスパーリングでもやってみないか?」
客の応対を終えたマサキが不意に話し掛けてきた。
「・・・そうですね。でも相手がいないと・・・。」
クランキーが少し困った笑顔をマサキに向ける。
「この・・・十六夜ではお役に立てないかな?」
マサキの視線の先には、蒼く精悍なボディを持つプラレスラー・十六夜が、腕を組み彼らを見下ろすように立っていた。
「実を言うと私もRAPには興味があるんです。以前ジムからプロトタイプのAPをもらったことがあって。もっともプロトタイプだけあって、なかなか言う事を聞いてくれなかったりするもので、今は息子に預けてるんですけどね。」
「そうでしたか。試作段階のものがあるのは知っていましたが、まさか日本にまで持ち込んでいたとは・・・。あいつは一体何を考えてるのやら。」
クランキーが苦笑いを浮かべる。
「ですから、RAPの完成版と対戦してみたいんですよ。どうかな? キャリー君。」
そういってキャリーに視線を移すマサキ。
渋谷の少年、ケンタによれば、十六夜とマサキはFISTの最高実力者、「キング・オプ・フィスト」にもっとも近いレスラーだという。また、彼の友人であるT−REXとそのパートナー、タイラントも同様の実力を持つのだという。
クランキーの話によれば、ジムが昔、先代のリーと組んでいたときに、タイラントとは対戦したことがあるらしいのだが、凄まじいパワーファイターだったようだ。
(成長した僕達の力を知るにはもってこいだ!)
キャリーが無言のままクランキーに視線を送る。
クランキーもまた、ニヤリと笑ってマサキに返事をする。
「是非! こちらこそ、願ってもないことです。よろしくお願いします。」
「ありがとう、では早速準備するとしましょう! こちらへ。」
マサキはメカ・リングの準備を、キャリーはすぐさまセットアップの準備へと取り掛かった。
「カーン!!!」
第一ラウンド終了のゴングで互いのコーナーに戻る十六夜とリー・Jr。
(さすがですね、マサキさん。でも次のラウンドは・・・。)
マサキの、十六夜のスピードとテクニックに翻弄されながらも、以前よりも動きの軽くなったリー・Jrに新たな力の手ごたえを感じるキャリー。
「・・・キャリー。」
「分かっています、クランキーさん。RAP・・・発動します!」
「シカッ!!」
リー・Jrの眼が眩しい光を放ち、真紅のボディが漆黒を思わせる赤に変わっていく。
(ほう、これがRAPを発動させた・・・リー・Jrの真の姿か!)
「いいでしょう、次は手加減なしで行きますよ!!」
「All right!!!」
「カーン!!!」
互いに新たな闘志を燃やし、第二ラウンドが始まった。
fin
次回予告!!
十六夜との熾烈なバトルの中。キャリー、そしてリー・Jrの能力が次第に覚醒していく。
再戦を約束する二人の前に、一人の男が現れ、リー・Jrに対戦を申し込む。
かつてジムと共に闘ったリーとの再戦を果たすというのだが。
第11話 覚醒
ご期待下さいね!!
〜あとがき〜
画面の情報のところ、どうにもいい単語がなくて、物足りないのですが。
ああ、ボキャブラリーがほしい!?
今度は一転してバトルが続きます。今までとは違う、パワーファイターの登場です。
相手は・・・誰なんでしょうか(笑) お楽しみにっ!!