〜第12話〜
試練
「・・・おい、準備はできたのか坊主!」
T−REXがTYRANTのセットアップを終え、リング脇で吼える。
「まぁ、まぁ、T−REXさん、少し待ってくださいよ。」
クランキーが脇から口を挟むが、T−REXは気に止める様子も無く、腕を組みんでキャリーを睨みつける。
「オッケー!! 行きます、T−REXさんっ!!」
キャリーの気合いに呼応するように、リー・Jrがリング上でファイティング・ポーズをとる。
大人と子供が同じリングに立つ。
そう言っても過言ではない光景だった。
Jr・ヘビー級のリー・Jr、321.0mmに対してスーパー・ヘビー級のタイラントは380.0mm。
どう見てもこの体格差は圧倒的にリー・Jrにとって不利な状況であった。
見下すようにT−REXが言い放つ。
「ヤル前にひとつだけ言っておく。俺達のパワーは強大無比だ。そして格下相手に負けたこともねぇ!
しかも! タイラントを象とするなら、お前は蟻だ。だが容赦はしねぇ。象が蟻を潰す感覚は
嫌いじゃねぇからな。・・・それでもやるってのか、坊主。」
クランキーが正確に訳してくれた言葉を聞き、キャリーもまたクランキーに訳を頼む。
すこし苦笑いを浮かべたクランキーがT−REXに向かってキャリーの言葉を伝える。
「え、え〜とですね、例えばどんな大きなダムでも、ほんの少しの割れ目から決壊することもある。
そう言っております・・・。」
「・・・まぁ、痛い目に遭わないとわかんねぇか、これだから餓鬼はキライなんだよ・・・。
5体バラバラになっても知らねぇぜ!!」
そう言いながらマサキに第一ラウンドのゴングを促す。
キャリーの様子を伺おうとするマサキに、キャリーは親指を上に突き出して準備が整っていることを伝えた。
レフェリー・ロボがタイラントをチェック、どちらも問題は無いようだ。
「よし、始めてくれ!」
「カーーン!!」
タイラントがゆっくりとコーナーからリング中央へ歩みだすのに対し、リー・Jrは勢いよく相手に向かって突っ込んでいった。
タイラント寄りのコーナー近くで両雄が激突する。
といっても先制の手刀を放ったリー・Jrの腕をタイラントが払いのけただけなのだが。
「・・・坊主。そんなもんか?」
T−REXが非力なリー・Jrを嘲笑うかのように言葉を放つ。
だがキャリーは一向に気にした様子もなく、じっと2体のプラレスラーの様子を窺っている。
「ガシッ! ガシッ!!」
ローキック、掌底、エルボー、まるでサンドバックに打ち込ボクサーのようにリー・Jrは攻撃の手を休めることはなかったが、タイラントは微動だにしない様子だった。
「くっ! それならっ!!」
キャリーがキーボードに手を伸ばし、コマンドを打ち込む。
軽く距離をとったリー・Jrは再びタイラントに猛チャージを仕掛けた。
「無駄無駄! 所詮何をやっても無駄だっていってるだろう!」
T−REXがニヤリと笑いを浮かべる。
が、リー・Jrは目にも止まらぬ疾さでステップを踏むと、タイラントの右脇をすり抜け、そのまま足を踏ん張って背中を合わせるように体当たりを放つ。
「ドカッ!!」
鷂子穿林。
その技の名が示すようにタイラントという大木の背後を取ったリー・Jrは次の行動に入る。
初めて大きなダメージを受けたタイラントは、背後からの殺気を感じたのか、振り向こうとする。
「むっ! ダメだ! タイラント・・・。」
「ガーン!!」
T−REXが気付いたときには既にリー・Jrの鉄山靠がヒットし、巨漢のタイラントがマットに伏していた。
不用意に振り向こうとしたため、リー・Jrの攻撃がカウンターで入った為だ。
「ほう。実際に見たことはないが・・・。人と同じようなしなやかな動きだ。」
満面の笑みを浮かべるクランキーの隣で、冷静にリー・Jrの動きを観察するマサキ。
「やりやがったな! 坊主!!」
カウントを取ろうとするレフェリー・ロボを、払いのけるように立ち上がったタイラントに対し、ようやく攻撃するように命じるT−REX。
「タイラント! 構わねぇからやっちまいな!!」
待ってましたと言わんばかりに、リー・Jr目掛けて突進するタイラント。
立身中正を保ち待ち受けるリー・Jr。
猛然と襲いいかかるタイラントの激しいマシンガン・チョップをかわしながら、反撃の機会を窺うリー・Jr。
時折放たれるトゥ・キックが実に効果的にリー・Jrの逃げ場を無くしていく。
「キャリー、動きが直線的になってる。まずいぞ!」
クランキーがアドバイスを送るが、既にリー・Jrはコーナー・ポストを背負う所まできていた。
「しまった! うかつでした。でもなんとか反撃は出来るはず!」
「ふん! 何をほざいてるのか知らんが、もう遅いんだよっ!!」
「ガキッ!!!」
その太い腕でリー・Jrの体を締め上げるタイラント。
もがくリー・Jrだったが、相手のパワーが凄まじく、脱出できるような状態ではなかった。
勝ち誇ったようにT−REXが話し掛ける。
「・・・これが力ってもんだぜ、坊主!! バラバラにされたくなかったらギブ・アップしちまいな!」
「キャリー、もう限界だぞ! ここは残念だが・・・。」
先ほどの笑みが消え、慌てた表情でキャリーにギブ・アップを促すクランキー。
モニタには次々とダメージの箇所が表示されていた。
そして、十六夜と対戦したときにも表示された「ALERT!!」の文字が浮かびあがり、警告音が鳴り響く。
「まただ・・・。これは一体・・・!?」
対十六夜戦での光景が脳裏に浮かぶ。
そしてリー・Jrの反撃が始まった。
fin
次回予告!!
隠された性能が窮地を救う。しかしRAPを使いこなせない自分に意気消沈するキャリー。
そんな少年を、優しく、あるいは意地悪く励ます2人のモデラー。
そしてキャリーの向かう次なる場所は・・・!?
第13話 自信
ご期待くださいね