〜第13話〜
自信
「メキッ・・・」
コーナー・ポスト近く、リー・Jrのピンチが続いていた。
勝利を確信したのか、T−REXが余裕で降伏を勧める。
「・・・まぁ、餓鬼にしちゃぁ上出来だったぜ。さ、早くギブ・アップしちまいな!!」
クランキーもキャリーを急かすようにギブ・アップを促すが、彼は聞き入れようとしなかった。
「まだ・・・、まだやれるみたいです! クランキーさん!」
クランキーは怪訝そうな顔でディスプレイを覗きこむ。
点滅していた「ALERT!!」と警告音が消え、またしても、これまでに見たことがないメッセージがそこに表示してあった。
「A−max Running...」
「The Nomal−mode was replaced by The Muscle−mode as the Main−System」
「出力系統の切り替え!? リー・Jrが勝手に? いや、まさかそんな・・・。」
クランキーはすぐさま意識をリング上に向ける。
ディスプレイを見ていたキャリーは直感的に理解した上で、既に脱出すべくリー・Jrに指令を出していた。
「な・・・んだと?」
異変に気付いたのはT−REXとマサキも同様だった。
なぜならパワーの差から言って、脱出不可能と思われていたタイラントのベアハッグから、リー・Jrが抜け出そうとしているのだ。
「ギギギギ・・・」
非力と思われていたリー・Jrが、少しずつ、少しずつタイラントの腕を広げていく。
「タイラント! そんな馬鹿な!!」
T−REXが更に力を入れるようにキーを叩くが、もうリー・Jrの脚はしっかりとリングに降り立っていた。
「そんなパワーファイターには見えなかったんだが・・・。」
眼前の光景が信じられないのはマサキも同様だった。
いや、キャリーも含めた全員がそうであった。
「A−max finished System Return...」
ディスプレイの表示を見ながら、キャリーは瞬時に思考を巡らす。
(今のは・・・。リー・Jrの力? 僕の力? パパの力・・・なのか?)
(少なくともRAPを発動させただけでは、それだけでパワーが上がるような事は無いはずだが・・・。)
一緒にプログラムを解析したクランキーも次々と疑問がわいていた。
「ちっ。まぁいい。少しは骨がありそうだな。こんどはこっちから仕掛けてやるぜ!」
怯むことなく、タイラントがリー・Jr目掛け、ショルダータックルを仕掛ける。
猛烈な勢いで突進してきたタイラントに対し、リー・Jrは後ろにジャンプ、ロープ最下段を利用して宙に舞い、タイラントのバックへと降り立つ。
すぐさま反応し、ポスト手前で振り返ったタイラントが機関銃のような手刀を繰り出す。
「オラオラオラーッ!」
「ガッガガッガガッ」
リー・Jrはそのほぼ全てを弾き返すと、半馬式の姿勢をとり、相手の鳩尾に向けて掌底を打つ。
「ズガッ」
前の状況とは逆にコーナー・ポストを背負っていたタイラントは運悪く頭部をしたたかにポストに打ちつけた。
(・・・マズイな。)
モニタを見ながらT−REXが呟く。
ある女性オーナーのプラレスラーとのバトルに負けたときから、タイラントは後頭部に爆弾を抱えてしまったのだ。
「カーン!!」
マサキがゴングを鳴らすと、追撃の体制だったリー・Jrをレフェリー・ロボが制止、第一ラウンド終了となった。
「キャリー君、最後の技、もしかして・・・。」
歩み寄るマサキに、キャリーが何故か元気なく答える。
「はい。あれは猛虎硬爬山といいます。その前、タイラントの手刀をかわす、一連の動作も含むんですが・・・。」
「そうか、あの動き全部ねぇ。・・・でも会心の一撃の後にしては浮かない顔だね?」
「そうそう、どうかしたのかい、キャリー・・・。」
クランキーも通訳しながら何故か落ち込んでいるキャリーを不思議に思っていた。
「・・・十六夜との時も、タイラントの時も、ピンチの時には自分の力ではなくてパパに助けられてるみたいで。」
「そうだったのか。だけど・・・。」
励ましの言葉を掛けようとするマサキをT−REXの怒声がかき消した。
「馬っっっ鹿じゃねぇのか!!」
「おい、T−REX! そんな言い方はない・・・」
「るせぇ! 外野はすっこんでろ! おい、坊主! 助けてもらって何が気に食わないんだ!」
当然意味の分からないキャリーは、きょとんとしてT−REXの話に耳を傾ける。
「言っとくがな、この俺だって一人じゃ何にもできねぇんだぞ。タイラントはもちろん、そこのマサキにだって随分世話になってる。この誇り高き俺様でもだ!!」
3人のいる方に近づきながら、演説を続けるT−REX。
「それを! てめぇのような餓鬼が助けられて恥ずかしいだぁ!? 十年早いんだよっ!!
そんなことで落ち込むヒマがあったら、助けてもらってありがとうの一言でも言ってみろ!
ほれ、あ・り・が・と・う。 ・・・ったく、だから餓鬼は嫌なんだよ・・・。」
クランキーが急ピッチでの訳を伝える。
キャリーは一度うつむいた後、ようやく笑顔を取り戻した。
「ア・・リ・・ガト。」
「よぉし! それでいいんだ、それで。 ま、そういう訳で今日の所はこれで勘弁してやるからな。」
初めてT−REXがキャリーに対して優しい笑顔を見せる。
くすくすと笑い出すマサキ。
「な、何笑ってんだおまえは!!」
「・・・また、例のトラウマなんだろ? 正直に参りましたって言えばいいのに。」
「な、何言ってやがる! 最初からスパーは一ラウンドで終わりだったんだぜ!」
「・・・確か徹底的に痛めつけるとかなんとか? おや〜??」
「てめっ! おまえはどうしてそういう・・・。ちっ、まぁいいさ。」
苦笑いのT−REXを眺めながら、彼の言葉を胸に刻むキャリー。
(そうだ。いつかパパに会ったときに胸を張ってリー・Jrを使いこなせてる、力を引き出してるってことを証明すればいいんだ。ありがとう、T−REXさん・・・。)
マサキの指摘どおり、T−REXのモニタには暴走状態への布石である、警告メッセージが表示されていた。
fin
次回予告!!
次第に明らかになるRAP。その産みの親であるジムもまた、ひとり戦っていた。
地下を暗躍する友を救う術はあるのか。 必死に手掛かりを探すジム。
そして成長した息子との再会はいつなのか。
第14話 捜索
ご期待くださいね