〜第14話〜
捜索
「何っ!! 本当にジムの息子なのか!!」
バトルの後、「シマムラ・テクニカル・ファクトリー」の片隅でキャリーとクランキー、そしてT−REXが話し込んでいた。
バトルの内容よりも、目の前の少年が”あの”ジムの息子ということに驚きを隠せないT−REXが大きな声を上げる。
「以前、パパのリーと対戦したとクランキーから聞いています。 どっちが勝ったんですか?」
キャリーが好奇心に満ちた目でT−REXに尋ねる。
「ジムとリーは・・・強かったぞぉ! まぁ、オレとタイラントには敵わなかったがな。 闘い方もリー・Jrよりも洗練されてたからな、だいぶ苦戦はしたんだが・・・。 そうか、ジムが・・・。」
アメリカで出会ったジムの消息を日本で、しかも彼の息子から聞こうとは夢にも思ってなかったのだろう。
T−REXは昔の事を思い出していた。
日本を離れてプラレスの武者修行に励んだ日々。
「今はどこにいるか分からないんですが、きっと探しだしてみせます。」
キャリーは、十六夜とタイラントとのバトルで大きなダメージを受けた、リー・Jrのメンテナンスを行いながらT−REXに笑顔を向けて見せる。
さっきまでの表情の翳りは消えたようだ。
(ま、腕も気持ちもまだまだだが、ジムの息子なら・・・なんとかするだろ。)
心の奥で、励ましの言葉をかけながら敢えて無言で微笑むT−REXだった。
キャリー達が、マサキも交えて話をしている時、キャリーのPCは密かに一通のメールを送信していた。
気づいた者は誰一人としていなかったが・・・。
その後、キャリーとクランキーは名残惜しみなしがら「シマムラ・テクニカル・ファクトリー」を後にしたのだった。
「バタン!!」
「またよ! ジム!!」
フェイは部屋に入ると、間を置かず奥にいる人物に話し掛けた。
「・・・そうらしいな。」
ジムと呼ばれた男はおもむろにフェイの方に顔を向けると、デスクからシガレット・ケースを取り出し、いつものように窓際に向かって歩き出した。
その背中に向かってフェイが話し掛ける。
「・・・ジム。 私なんだか怖いわ。」
組んだ腕を、その細身の体に巻きつけるようにしてジムの隣へと歩き出す。
「いくらプラレスラーと言っても、こんなに無惨な闘いが行われてるなんて・・・。 ううん、それだけじゃない。 もしも・・・もしも生身の人間に対して同じ事が行われたらって考えると背筋が凍りつくわ・・・。」
彼女は12年前の事件を思い出しながら、ジムに寄り添うようにして窓際へ立った。
「ははっ。 心配症だな、フェイ。 あの封心脚と言う技はそんなに簡単に会得出来るものではないよ。 それに・・・。」
「シュボッ」
ブラインドの隙間から東京の街並みを眺め、紫煙をゆらすジム。
「いくら等身大のロボットが出回ってるとはいえ、あんなに激しい動きにはまだ耐えられんよ。」
事実、この時代には簡単な作業に限られるものの、二本足で立つ、いわゆる人型のロボットが実用化されており、特に危険な現場、火災を始めとした、災害現場で活躍するまでになっていた。
「それは・・・そうかも知れないけど・・・。」
多少、ジムの考えに楽天すぎると思うフェイが拗ねた表情を見せる。
「もうひとつ、嬉しいデータがある。見てごらん。」
デスクにもどり、キーボードを操作しながらフェイを呼ぶ仕草をするジム。
「カチッ」
マウスがクリックされると、ディスプレイには東京都23区のミニマイズされたマップが表示された。
ところどころに小さなしるしが表示されている。
「これは?」
覗きこんだフェイが尋ねる。
「うん。 これはヤン達の仕業と思われるクラッシュの仕方をしたプラレスラーが、主に会場として選んでいた地下プラレスの場所なんだが・・・。 もうひとつ・・・。」
同じマップが表示される。
だが前のものとは微妙にそのしるしの場所が変化していた。
「・・・あ! 減ってる・・・。」
地図を眺めていたフェイがその変化に気付き、思わず声をあげる。
「ビンゴ!! そう、奴等は違う勢力に押され始めているんだ。 もっとも、その新しい勢力が『善』であるとは限らないがね・・・。」
「だとしたら、未だにしるしの多いこの場所・・・。 もしかして!」
「そう。おそらく奴等のアジトがある場所だろう。」
「やったわ! ジム!! これでヤンを止める事が出来るわ!」
一転して喜ぶフェイに対し、ジムはまだ眉間のシワを深くしたままだった。
「ジム!? どうしたの? 何か問題でも?」
ディスプレイを凝視しながら口を開くジム。
「・・・考えたことはないか? なぜチェンが日本にいるのか。 どんなルートで仲間を集めたのか?」
「それは・・・。」
「何よりもチェン一人でここまでの騒ぎが起こせるんだろうか。 ずっと考えていたんだが・・・。」
「どういうこと?」
ジムの真意が分からず、思わず聞き返すフェイ。
「少なくとも資金を援助している奴がいるはずだ。 それとAPのチップを操作している奴・・・そいつはもしかすると、僕よりもAPの扱いに詳しいかもしれないぞ。」
おどけてみせるジムだったが、もしもチェンを利用してプラレス界を・・・いや、人の世界までも混乱させようとしている奴がいるのなら、断固として粉砕する覚悟であった。
「そ・・・そんな事ある訳無いわ!!」
「ピンポ〜ン」
「You Gotta Mail !!」
不意にPCが反応し、オートでメールソフトが起動する。
「やれやれ、レディがはしたないぞ。 もうすぐ彼等も合流するんだから・・・。 いい女になったところ、じっくり見せてやるんだろ!?」
「え・・・? 彼等? まさか!!」
彼女の問いには答えず、メールチェックを始めるジム。
「ようやく待ち望んだ日が訪れそうだよ、ハハッ。」
届いた一通のメール。
その送り主の名前には、一番大切な、そして懐かしい息子の名前が表示されていた。
fin
次回予告!!
チェンを操る人物とは一体何者なのか。そしてチェンの最終目的は一体何処にあるのか。
同じ苦しみを持つものとして、ジムはチェンへの手がかりを探し続ける。
そして、父を助ける為についにキャリーが・・・。
第15話 暗闇
ご期待くださいね!
あとがき
だんだんと独り善がりの展開になりつつありますが(~_~;)
まぁ、こんなものでしょう。ひさびさに壁にぶち当たった気分のげんでしたとさ。。。