オリジナル・ストーリー「オーラ・プログラム」

 

 

〜第15話〜

 暗闇

 都内にある小さなビル。

 キャリーとクランキーが3日かけてようやく探し当てたビル。

 それは、再び送られてきた差出人不明のメールが指定した場所にあったのだが・・・。

 人の気配が無い。

 「ここ・・・ですよね?」

 苦笑いを浮かべてキャリーがクランキーに意見を求める。

 「ああ、たぶんね。」

 やはり苦笑いのクランキーが「手動式」のドアに手を掛けて中に入る。

 ロビーと思われる場所だが、どうも何年か前に打ち捨てられたような雰囲気である。

 (ブゥ〜〜〜〜ン・・・)

 道路に面した窓際に置かれたジュースの自動販売機が低く唸りを上げている以外、殆ど音がしない。

 「地下一階、・・・でしたね。」

 そういいながら階下へと続く道を探し始めるキャリー。

 それはすぐに見つかった。

 多少薄暗い廊下を歩き、どんどん奥へと進む。

 そして指定された部屋がようやく見つかった。

 「おっ、ここだ、着いたよ、キャリー!!」 

 クランキーは荷物を一旦床に置き、ドアをノックしようする。

 (ガチャッ)

 待ちきれなかったのか、キャリーが先を越すように中へ入っていく。

 「・・・真っ暗だ・・・。」 

  廊下自体も薄暗い為に、部屋の中までは光が入って行かないようだ。

 恐る恐る中へと入る二人。

 (バタン!!)

 「うわっ!!」

 不意に閉じたドアに驚くクランキーだったが、前を行くキャリーが動じないのを見て、咳払いをしてその場をごまかすのであった。

 「まぁ、しばらくすれば目も慣れて・・・。」

 クランキーがそう言った瞬間、部屋のライトが一斉に光を放った。

 「眩し・・・。」 

 手をかざして光を遮ろうとする二人。

 しばらくしてようやく明るさに慣れてきたようだ。

 「これは・・・!!」

 目の前の広がっていたのは、ミニサイズのアスレチックフィールドである。

 そのサイズはまさにプラレスラーサイズであった。

 「ほ〜。これはすごいよ、キャリー。」 

 透明なドームに囲まれたフィールドをぐるりと見回し、クランキーが感嘆の声をあげる。

 「enter」と書かれたコーナーからドームに侵入し、対角コーナーにある「exit」から脱出するのだろう・・・。

 「ん・・・?」

 周囲を歩いてドームの中を見ていたキャリーが、出口と思われるコーナーにある、半透明のボックスに釘付けになっていた。

 「リー・Jr???」

 「なんだって!?」

 クランキーが慌ててキャリーの側へと駆け寄る。

 そこにあったのはリー・Jrと変わらぬボディを持つ一体のプラレスラーであった。

 ただ、リー・Jrが赤を基調としたカラーリングに対し、そこに存在しているのは黒のボディを纏った・・・そう、まるでRAPが発動したリー・Jrとそっくりなのだ。

 「これは・・・いや、ここはまさか!!」

 差出人不明のメール、リー・Jrと瓜二つのプラレスラーが一体。

 そう、考えられる事はそう多くない。

 「ここにパパが・・・。」

 キャリーは、そう言って部屋の中を見渡す。

 だが、いくつかのパーティションに区切られた室内は、彼ら二人以外、誰一人いる気配はない。

 「ジム!! ここにいるなら返事をしてくれ!!」

 突然クランキーが声を張り上げて叫ぶ。

 だが答える者もなく、すぐに静けさが部屋を満たす。

 「ここにはいないんでしょうか?」

 ハッとして振り返るクランキー。

 そこには久しく見せた事のない、今にも泣きそうなキャリーの顔があった。

 「キャリー・・・。」

 クランキーは思い出した。

 彼がまだ「立派な」子供であることを。

 日本に来てから、いや、その前から、常に自分を励まし、大人びたように見えても、まだ十代の子供なのだ。

 リー・Jrとそっくりのプラレスラーを見たからか、ジムへの想いが溢れたのだろう。

 「・・・心配いらないよ、キャリー。ほら、あそこを見てごらん。」

 クランキーの指差す方を見るキャリー。

 「・・・??」

 その先にあったものは、よく見ないと分からない様になってはいたが、カメラが設置してあった。

 もう一度室内を見回してみる。

 隠すようにあと数箇所、同じように設置してあった。

 「恐らくこのカメラの先にジムが・・・。」

 (カタ・・・)

 口を開いたクランキーがぎょっとして動きを止める。

 「おい・・・。」

 「誰!?」

 二人しかいない筈の部屋に二人以外の声が響く。

 キャリーが声の主を確かめようと辺りを探る。

 「おいおい、どこ見てるんだよ・・・。ここだ、ここ!」

 よく聞けば、それは人の声ではなかった。

 人に似せた機械の声。

 そして声の主は・・・。

 (バキン!!)

 「あ・・・。」

 半透明のケースを突き破り、その黒いプラレスラーがフィールドへと飛び出し、呆然とする二人を見上げるように立っていた。

 そして、その声の主は言葉を続ける。

 「ちっ、何しけた顔してるんだい、まったく。・・・まぁいいか。だがここへ来たって事はバトルをやりに来たんだろう!? さっさとセットアップしな!!」

 「キ・・・キミの名前は? いや、あればだけど・・・。」

 ひたすら呆然としながら、キャリーがそのプラレスラーに質問する。

 噂には聞いていたが、ここまで明瞭な発音をするとは、夢にも思っていなかったのだ。

 「ちっ、初対面なのに失礼なヤツだな。自分から名乗れっての。・・・まぁ、オレはお前らの事、知ってるけどね。」

 「それはどういう事・・・。」

 「全部教えてやるよ。オレの事、そしてジムの事もな!! だから早くセットしな! そのリー・Jrとやらをな!!」

 「キャリー!」

 「ハイ、クランキーさん。分かってます。虎穴に入らずんば・・・。」

 「虎子を得ず・・・ってね!」

 恐らく同じ性能を持つと思われる相手に対して湧き上がる闘争心を、キャリーは抑える事は出来なかった。

 同日。

 都内西部にある超高層ビル。

 外資系の企業が多数入居しているこのビルの中で、一際異彩を放つ「アミューズ オブ アメリカ ジャパン」その名が示すように、アメリカを代表するアミューズメント・パークを多数経営するこの会社は、ヨーロッパ各地を始め、日本はもちろん、韓国などアジアの主要国へも進出しており、全ての国で成功を収めるという、業界でも名の通った会社である。

 日本に進出したのは香港の次であり、施設もまだまだ出来たばかり、といった感じではあったが、それでも一日の平均入場者数は6万人を超え、既存のアミューズメント・パークのそれを遥かに凌駕していた。

 決して恵まれたとは言えない地域への進出であったが、その豊富な財力を生かし、都心からのインフラ整備なども併せて行い、人と物資の流通経路を確保するなど、およそ日本の企業には出来ない事を、いともあっさりとやってのけてしまった、まさにモンスター・カンパニーである。

 ビルの1Fから20Fまでが「A.O.A」(アミューズ オブ アメリカ)で占めらているが、そのうち11F、12F、13Fは役員のプライベート・フロアとなっていた。

 その13F。

 ウェアラブル・コンピュータを着たアメリカ人が、椅子に腰掛けたまま部下に指示を出していた。

 ふと、男はディスプレイの付いたサングラスを外すと、隣の部屋へと歩き出した。

 そこには、ベッドと呼ぶには少しばかり堅苦しい台の上に、両手両足の自由を奪われ、頭部にはヘルメットの様なものを装着された男が横たわっていた。

 チェンである。

 眠っているのであろうか、動きはまったくない。

 アメリカ人の男は、傍らのモニターでチェンの状態をチェックすると満足そうな笑みを浮かべてその部屋を後にした。

fin

  次回予告!!

  アスレチック・フィールドという、初めての経験に戸惑うリー・Jrとキャリー。

  だがその歩みは確実にジムへと近づきつつあった。

  一方チェンの黒幕とも言える「A.O.A」の人物は目的半ばにして東京を離れようとしていた。

  それまでにジム達は彼の元へたどり着けるのだろうか。

  第16話 岐路

  ご期待くださいね!

 

オリジナル・ストーリー目次へ戻る

第14話へ戻る

第16話へ進む