オリジナル・ストーリー「オーラ・プログラム」

 

 

〜第16話〜

 岐路 

1

 男は夢を見ていた。

 恵まれた自然の中、厳しい修行を共に行う仲間達、そして愛する女性。

 突然暗雲がたちこめ、辺りを闇が覆い始める。

 仲間達を守ろうとする男。

 だが巻き起こった突風が無情にも男の腕から女性を奪い、闇へと連れ去ろうとする。

 よく見ると見覚えのある人物が手を引いている。

 それを阻止しようと、持てる力の全てをその人物へとぶつける男。

 だがその矛先は愛する女性によって阻まれる。

 闇に同化することなく消滅する女性。

 呆然と立ち尽くす男を、闇が包み込む。

 その意識までも・・・。

 そこでチェンは目を覚ました。

 夢の中と同じ闇。

 ヘッドマウント・ディスプレイをつけられ、手足を拘束されたままの目覚めは何度経験したとて慣れるものではなかった。

 もっとも、2〜3分も経てば彼の意識は「無」となるのだが。

 12年前、事故とはいえ愛する婚約者を、自らの技で殺してしまった事実は消えることはなかった。

 だが精神が崩壊してしまったチェンを利用しようとした人物がいた。

 当時チェン達の道場を狙っていたアメリカの企業、「アミューズ オブ アメリカ」から派遣されていた社員の一人、マッキー・オルブライトというアメリカ人だった。

 オルブライトはチェン達の道場のあるブロックを丸ごと買収しようとしていたが、「五龍武館」の激しい抵抗に合い、香港進出計画の練り直しを迫られていた。

 その矢先、道場で起こった事件を知る。

 そして廃人同様となったチェンを保護・洗脳したのだ。

 その上で「五龍武館」に残っていた練習生を辞めさせる為、チェンに覆面をさせて練習生を襲わせるという、非情で陰湿な嫌がらせを行い、ついには閉鎖に追い込んでしまったのだ。

 僅かに残っていたチェンの自我もその行為によりほぼ崩壊した。

 以来オルブライトはチェンを奴隷のように扱い、彼を使って特に会社の裏業務をかって出た。

 そして彼は日本における「A.O.A」の最高責任者の地位を手に入れたのだった。

 彼がプラレスのことを知ったのは偶然だった。 

 「五龍武館」へ土地の交渉に行っていた時に、部屋の中で調整中のプラレスラーを見たのだ。

 ちょうど武者修行に来ていたジム達の顔も知っていた。

 そして数年後、ジムがプラレスの技術交流会に出席するという情報を得て、その技術を盗んで一儲けしようと企み、チェンをジムの元へと送り込んだのだった。

 ところが、ジムの顔をみたチェンが異常に興奮し、プラレスラー「リー」をバラバラにし、いくつかのパーツを持ち帰ることしか出来なかった。

 オルブライトは仕方なくそのパーツを研究し、また催眠をかけた状態のチェンで截拳道を研究、独自のプラレスラーを開発し、当初から地下プラレスでの活躍を念頭に置いて改良を続けたのだった。

 その後香港よりもプラレスが盛んな日本へと移り、「A.O.A」の日本進出の陰で地下プラレス界を牛耳ろうとしていたのだが、突然転機が訪れた。

 オルブライトの、あまりにも傍若無人の振る舞いに、社内での批判の声が高まり、解雇は免れたものの、降格及び本国アメリカへの強制帰国が通告されたのであった。

 折りしも東京都内における彼らのテリトリーは、新たな勢力の台頭により次第にその範囲の縮小を余儀なくされていた。

 オルブライトは降格処分になったことや、アメリカに帰国することを特に気にすることも無く、淡々と仕事をこなしていた。

 「チェンを上手く使えば、いつでも元の地位に返り咲く事が出来るさ。」

 そう考えるオルブライトであったが、残念に思う事が一つだけあった。

 それは自らが研究・改良の末開発したプラレスラー「マーダー・ピエロ」と、オリジナル「リー」の流れを汲むと思われるプラレスラーとの対決が出来なかったことだ。

 噂では日本に来ているとの情報があるらしいのだが、裏は取れていなかった。

 残された日本での滞在中になんとか接触できないものか、オルブライトは考えを巡らすのだった。

2

 「リー・Jr! セット・アーーップ!!」

 キャリーの声に呼応するかのようにリー・Jrが立ち上がり、フィールドの「enter」へと降り立つ。

 「ほぉ、そいつがリー・Jrか。 なかなかの面構えだな。」

 謎のプラレスラーが言葉を発する。

 リー・Jrも声のする方をキッと睨みつける。

 「いい事教えてやるよ。 このフィールドは大きく2つのルートに分かれとる。 一つは長く楽なルート、そしてもう一つは短くキッツイルートや。 どちらを選ぶかはお前らの自由。 ただし長い方のルートはもしかしたらバッテリーが持たんかもしれんな。 くっくっく。」

 キャリーとクランキーは改めてフィールドを良く見てみる事にした。

 確かに「enter」から入ってすぐ二つに分かれたルートが確認できる。

 一つはフィールド上面をうねりながら「exit」に向かっている。

 もう一つはフィールド下部へと続くトンネル状態になっていて、その内部の様子は伺う事は出来ない。

 「キャリー、どうするんだい?」

 クランキーは腕組みしながら考え込む。

 キャリーも少し考えるがあっさりと結論を出した。

 「ここは、急がば回れ! ですよ、クランキーさん。 さぁ、リー・Jr!」

 「enter」をくぐり抜けたリー・Jrは最初のアトラクションに向かって走り出した。

 まずリー・Jrの前にたちはだかるのは丸太が斜めに5本設置されたものだった。 それぞれが回転し、登ろうとする者を拒んでいた。

 「ちっ。 つまんねぇ奴だな。」

 長いルートを選択したキャリーに対し、フィールド奥で謎のプラレスラーが吐き捨てる様に言い放つ。

 だがキャリー達は気にする事もなく、アトラクションを次々とこなしていた。

 最初の丸太を殆ど苦にもせずにクリアすると、次のウンテイも軽々とクリア、続く左右二枚の壁に挟まれた剣山の上も自らの四肢のみで軽々と渡る。

 そして次のステージに移るリー・Jr。

 そこは黒いオイルの池からランダムに突起が出現するという仕掛けである。

 突起が出現する僅かな時間で次の足場を確認し移動しなければならない。

 見た目よりもクリアは難しそうに見えた。

 「キャリー、大丈夫かな、ここ・・・。」

 気弱なクランキーを尻目にキャリーはそれまでと同じ調子でアトラクションに突っ込んでいく。

 (スタッ、スタッ・・・)

 「ほう・・・。 俺でもてこずるんだけどな、そこ。」

 謎のプラレスラーはその様子を見て感嘆の声を漏らす。

 そして壁際へと移動するとボタンを押すような仕草を見せた。

 「・・・そんじゃ、こんな感じでも平気でこなせるのかな?」

 「何ッ!!」

 不審な動きを見せた謎のプラレスラーを認め、キャリーに注意を促すクランキー。

 「キャリー、気を付けろ、何か仕掛けてきたぞ!」

 「はい・・・。 うんっ!?」

 次のステージへと移ろうとする寸前のリー・Jrに、無数の矢が襲い掛かった。

 「ちっ・・・。」

 素早くキーボードを叩くと、その効果を確かめるべくリー・Jrに視線を移すキャリー。

 (パキポキッパキャッポキッ)

 無事にオイルの池を渡りきったリー・Jr。

 背後の池には折れた矢が散乱していた。

 そして風を切る音が辺りに響く。

 (・・・ュンヒュン・・・ヒュンヒュン) 

 「へぇ〜っ。」 「おおっ。」 「ふうっ。」

 三者共にそれぞれ驚きと安堵の声を上げる。

 (ガシィィィッ)

 リー・Jrがその両腕に装備してあるダブル・ヌンチャクを手にして高速で回転させ、襲ってくる総ての矢を叩き落としたのであった。

 「ひゅう〜。 いいねぇ、いいよリー・Jr。 ぞくぞくしてくるぜ〜。」

 「exit」近くで怪しい動きをするプラレスラーの言葉同様、クランキーも興奮を隠せなかった。

 「キャ、キャリー。 いつの間にそんな素早い動きが出来るようになっていたんだい?」

 キャリーは涼しい顔で、しかし警戒を怠らずにリー・Jrを前進させる。

 まさにブルース・リー譲りといったヌンチャク捌きをみせるリー・Jr。

 飾りだと思っていたヌンチャクを使いこなせるようになったのは、日本に来てからの事だった。

 マサキがジムから預かっていたパーツを組み入れてからの事なので、実質3日も経っていない。

 (パワーアップしたのはリー・Jrだけではない・・・。)

 キャリーのレベルアップの早さに驚きを隠せないクランキー。

 そしてカメラの向こう側でも2人、同じ思いでモニターを見つめる姿があった。

fin

  次回予告!!

  正体不明のプラレスラーの気まぐれにより、リー・Jrは更に厳しいフィールドへと落とされてしまう。

  果たしてリー・Jrは無事にゴールまでたどり着けるのか。そしてその先に待つ者とは。

  キャリー達は探し求めた人物に、たどりついたのか・・・?

  第17話 実力

  ご期待くださいね!

 

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