オリジナル・ストーリー「オーラ・プログラム」

 

 

〜第17話〜

 実力

 「ふむ・・・。」

 モニタを見ながら男が満足そうに笑みをこぼす。側に立つ女も心なしか微笑んでいるようだ。

 「ふふっ。 まずは上出来じゃなくて?」

 女の問いかけに、男は満面の笑みをもって答える。

 「だが、アイツは一筋縄じゃいかないよ。 なんといっても思考パターンが、誰かさんと一緒で意地が悪いようだからね。」

 「誰かさん」が君だと言わんばかりに、男の視線が女に向けられる。

 女は少し頬を膨らませ、不満げな表情をしつつも瞳の奥で微笑みを絶やすことはなかった。

 「ホント、プログラムした人に似るのね。 意地の悪いところはジムとそっくりよ。 なんと言っても息子まで騙してしまう人なんですものね。」

 ジムとフェイが話している場所、それはキャリー達が挑んでいるアスレチック・フィールドが設置されたビルの5階。

 そう、キャリーは日本に来た目的を果たそうとしていたのだ。

 それもあと僅かの時間で。

 無論そんな事とは気付く筈もなく、隠しカメラの事も忘れて目の前のフィールドに集中していた。

 「これからどうなると思う?」

 「ん〜ジムならきっと意地悪すると思うから・・・ほら、やっぱり!」

 モニタの中ではジムのプラレスラー「ブルース」がまたも怪しい動きを見せていた。

 「よぉ〜し、上出来だ。 オッケー! そろそろメインのコースに移ってもらうよ。」

 ブルースは壁に近づくと、先に押した壁をもう一段押し込んだ。

 「む、また怪しい動きを・・・。 気をつけ・・・。」

 クランキーの言葉が終わらぬうちに、フィールド上面のいくつかの床が抜け落ち、リー・Jrもあっという間に飲み込まれてしまった。

 間髪入れずにキャリーがキーを叩く。

 (シカッ!!)

 リー・Jrの眼が鈍い光からより眩しい光へと変わる。

 それとは逆にボディの色が真紅から限りなく黒に近い赤に変わっていく。

 RAPの発動である。

 キャリーは更にコマンドを打ち込む。

 Aura-sensor・・・Active

 画面の表示を見て納得するクランキー。

 キャリーが中の様子が見えない事を見越して、リー・Jrのセンサーの出力を上げたのだ。

 だがその代償としてキャリーからのコマンドよりもリー・Jr自身の判断に任せる度合いが大きくなる。

 納得しつつも不安げにキャリーの顔を覗き込むクランキー。

 だがそこには不安よりも自信に満ちたキャリーの顔があった。

 「・・・初めてですけど、きっと大丈夫ですよ。 マサキさんの時だって、リーは勝手に反応してましたから。」

 淡々と語りながらより一層モニタに集中するキャリー。

 クランキーは小さく頷くと、それでも心配らしくリー・Jrが落とされた穴を見ようとフィールドをぐるりと回っていく。

 「さて、お手並み拝見と行こうか、ブラザー。」

 ブルースが不敵に言い放つ。

 その視線はリー・Jrの落ちた穴に注がれていた。

 リー・Jrは難なく着地し、様子を伺っていた。

 そしてカメラ・アイを通じて内部の様子がキャリーのもとへ届く。

 光が少なく、表示される情報も少ない。

 だがキャリーは構わずリー・Jrを前進させる。

 ゆっくりと、注意深く歩き始めるリー・Jr、この時点でバッテリーは約3分の2を残していた。

 不意に僅かな機械音が鳴り始める。

 前方の闇の中、壁からの突起物が動き始めたらしい。

 「これは・・・。」

 キャリーは更に意識を集中してモニタを凝視する。

 見えてきたのは人型の像で、各々が鎖に繋がれた手足を不規則に動かし、リー・Jrの行く手を阻む仕掛けだ。

 「100人組み手・・・、にしては数が少ないかな。」

 怯むどころか逆に気合いが入るキャリー。

 その言葉には余裕すら感じられた。

 「キャ、キャリー。 油断しちゃだめだぞ。」

 努めて冷静を装ったクランキーの言葉に無言で頷くと、リー・Jrをその木人の中へと送り込む。

 (ガガッ、ガキン・・・)

 リー・Jrの振るうヌンチャクが木人の腕を撥ね退け、あるいは強烈な蹴りで吹っ飛ばす。

 何発も木人の拳や蹴りを喰らいながらもその歩みは止まることはなかった。

 「・・・ちょっとキリがないかな。 よしっ、これでどうだ!!」

 キャリーがキーを叩く。

 目前の相手の手刀をかいくぐり、リー・Jrの鉄山靠がヒットする。

 (ガガガッ・・カカン・・・カララッ・・・ラン)

 片側一列の木人が将棋倒しのように倒れていく。

 直撃を受けた先頭の木人は胴体が割れ四肢もバラバラになるほどの威力だった。

 「ん〜少し見くびっていたようだな・・・。 木人如きでは抑えられないか。」

 ブルースは激しい激突音を聞いてリー・Jrの力を認め始めた。

 当然ブルースの位置からもリー・Jrの姿は見えない。

 しかし威圧感のようなものを感じていた。

 「さて、次は何かな?」

 落ち着いた口調でキャリーが謎のプラレスラー・ブルースに視線を向ける。

 カラーリング以外、リー・Jrと違うところはない。

 似てると言うよりもまったく同じ機体に見えた。

 それはジムに近づいていることを暗示している。

 キャリーもクランキーも同じ想いだった。

 一方、フィールドではリー・Jrが次のエリアへと進んでいた。

 何の変哲もなく見えた通路だった。

 (どすん!!)

 突然背後の壁が落ちてきて退路を塞ぎ、そのまま強制的に前へ前へと押し出されるリー・Jr。

 「どんな仕掛けなんだろう・・・。」

 リー・Jrを走らせ、前方の様子を探るキャリー。

 すると奥の壁もこちらに向かって移動していた。

 「くそっ、脱出口はどこだ?」

 さすがに慌てるキャリー。

 壁が落ちた時の音から想像して、大分厚みがあるようで、突破することは無理だろう。

 最悪の場合、このままでは潰されてしまう。

 必死に考えを巡らす。

 その時、リー・Jrが通路天井から垂れ下がっているチェーンを発見し、飛びついた。

 「いいぞ、リー・Jr!!」

 安心したのもつかの間、壁は止まることなく迫ってくる。

 クランキーが確信のないままアドバイスを行う。

 「キャリー、きっとそこの天井は抜けるに違いない、きっとそうだよ!」

 「はい、もうそれしか残ってませんからね!」

 一旦チェーンから離れるように指示を出すキャリー。

 そして助走をつけ、垂直の壁を駆け上がる。

 (タタンッ)

 壁を蹴り、タイミングを見計らってサマーソルトキックを放つ。

 ばらばらと音を立てて天井が破れる。

 着地して上方のチェーンを見上げるリー・Jr。

 クランキーの予想通り、元のフィールドへ続く長いチェーンがその姿を現していた。

 素早く飛びつき、両の腕だけで登り始める。

 「・・・さて。 そろそろお手合わせ願おうかな。」

 ブルースが、フィールドの反対側にいるキャリーに視線を向ける。

 その視線を遮るように、地下から這い上がってきたリー・Jrが立ちはだかった。

fin

  次回予告!!

  リー・Jrとブルース。同じ機体のプラレスラーが対峙する。一見優勢に見えるリー・Jr。

  勢いにまかせ次々と技を繰り出すが、ブルースは軽々とその切っ先をかわし続ける。

  なんとか必殺の一撃を狙うリー・Jrとキャリーであったが・・・。

  第18話 苦戦

  ご期待くださいね!

 

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