〜第18話〜
苦戦
「よう。遅かったな・・・。」
話掛けるブルース。リー・Jrはゆっくりと、目の前の相手の元へ歩みを進めた。
「エモノは何がいいんだい?」
壁際に無造作に置かれた武器を一瞥すると、不敵に笑ったような視線をキャリーに送るブルース。
無言のまま、三尖相照(さんせんそうしょう)の構えをとるリー・Jr。
そのままじりじりと距離を詰める。
「つまらねえ奴だな。 こんなのもあるんだが・・・な!」
ブルースが右腕を素早く前方へと振り抜く。
(ヒュヒュン!!)
ブルースの手から放たれた小さな物体は、それを払い除けようとしたリー・Jrの腕にぐるぐると巻き付いた。
流星錘(りゅうせいすい)という、飛び道具のひとつである。
「ハッハーッ! チェーン・デスマッチといくか、リー!?」
グイとその腕に力を込めるブルース。
だが彼の意思に反して相手の体は一向に近づく事はなかった。
「あまりナメないでもらおうか。」
キャリーがブルースを見据える様に言い放つ。
リー・Jrがお返しとばかりにチェーンを引こうとする。
「それはこっちの台詞だぜ、キャリー。」
二者の力は、寸分違わず均衡しており、距離が詰まる事はなかった。
と、ブルースは握ったチェーンをいきなり開放する。
わずかにバランスを崩すリー・Jr。すぐさま攻撃に備えて構えをとる。
が、ブルースは行動を起こさずにじっとリー・Jrを凝視しているようだった。
「こっちから仕掛けてやる。 行けっ! リー・Jr!!」
キャリーは構えるでもなく立ち尽くすブルースを認め、攻撃を開始しようとする。
僅かに身を沈めたリー・Jrが、解き放たれた様に右の拳を突き出してながらブルースへ向け跳躍する。
「ほう、なかなかの勢いだな。 だが・・・。」
ブルースは僅かに身を反らし、軽々とその拳をかわすと、すっと身を引いて距離を取った。
「・・・あまり実戦経験を積んでないと見える。」
悠然と言い放つブルースに対して、着地したリー・Jrが回し蹴りを放つも、あっさりとかわされてしまうのだった。
上下に攻撃を振り分けながら、リー・Jrが次々と技を繰り出す。
その猛攻をブルースは苦もなくかわし続けた。
「ボーイ、お前が学んで来た事はそんな程度なのかい?」
余裕の表情を浮かべてキャリーを挑発するブルースに対し、あせる心を抑えるキャリー。
「まだだ!」
キャリーの気合と共に渾身の突きを放つリー・Jr。
「疾いな。 だが・・・。」
リー・Jrの拳が確かにブルースの胸部を捉えたかに見えた次の瞬間、キャリーとクランキーは我が目を疑う光景を目の当たりにする。
仰向けに倒れるリー・Jrとそれを見下ろすブルースの姿を。
「キャリー、今のは・・・。」
「化剄・・・。 それも相当功夫を積んでいるようですね。」
「そうだ。 正解だぜ、キャリー坊や。 確かに剛という点ではリー・Jrは及第点さ。 だが!!」
そこまで言うと、ブルースは起き上がろうとするリー・Jrを勢いよく蹴り飛ばす。
無防備のまま蹴りを喰らったリー・Jrは宙を舞い、ゴロゴロとフィールドに叩きつけられた。
「リー!!」
怒りの眼差しを向けるキャリーに、ブルースはなおも言葉を続ける。
「だがそれだけでは闘いに勝つ事は難しい。 勝ったとしても自分の受けるダメージも大きいのさ。 ここに転がってるリー・Jrも例外では無く・・・な。」
「くっ。」
ブルースに指摘された通り、リー・Jrのボディは完全とは言えない状態だった。
日本に着いてからの連戦、RAPセカンドエディションの発動に加え、バトルスタイルも、どちらかと言えばこちらから仕掛ける事が多く、人間でいうところの「生傷が絶えない」状態で、蓄積されたダメージは計り知れないものがあった。
「キャリー。 お前はいつも安全な場所で、ただリー・Jrが傷つくのを眺めていただけだ。 そう、まるで他人事の様にな。」
「な!!!」
思いがけないブルースの言葉に、絶句するキャリー。
「ち、違う! 僕は・・・僕は・・・。」
「違わないさ。 お前は香港で皆と一緒に剄について学んだ筈だ。 剛と柔。その二つが必要ということも、両立させる方法もな。 だがお前は・・・。」
混乱するキャリーの耳に、思いがけない「声」が飛び込んで来た。
「マスターを侮辱することは私が許さん!!!!」
「声」を発したのは、傷つきながらも立ち上がり、ファイティング・ポーズを取るリー・Jrだった。
fin
次回予告!!
残った僅かな力で最後の攻撃を仕掛けるリー・Jr。
その時、ブルースのボディが光を放ち、リー・Jrを圧倒的なパワーでうちのめす。
初めての完全敗北にキャリーは何を想うのか。
第19話 敗北
ご期待くださいね!