―第1話―「あたしのシュークリーム」
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「ユウちゃ〜ん! お待たせ〜♪」
校門の前で両手いっぱいに荷物を抱えた、長い髪を束ねた少女に向かって、真っ黒に日焼けしたショートカットの少女が駆け寄ってくる。
「ヒナちゃん、遅いよ〜!」
長時間、暑い中待たされていた長い髪の少女は、少し拗ねたような口振りでショートカットの少女に話しかける。
「ユウちゃん、ごめんねえ〜。なーんか知らないけど、先生がうるさくってさぁ・・・」
「また、怒られちゃったの?」
「明日から夏休みだってのに、センセーうるさいんだよぉ。プラレスも良いけど、忘れずにちゃんと宿題もやりなさいってさ。 なんで、あたしだけに言うかなぁ?」
友人を待たせた事や、担任に小言をもらった事などはもう遠い過去の話とばかりに、ショートカットの少女は言葉を返す。
明日から待ちに待った夏休みが始まるのだ。細かい事なんて気にしていられない!。
長かった1学期が終わり、楽しそうに笑顔で下校する二人の少女。
真っ直ぐな肩まである美しい髪を左右で束ねた少女、ユウ・シマムラ。
プラレスラー『ワルキューレ』を駆り、プラレス団体『FIST』に参加する最年少モデラー。
FIST次期チャンピオン候補No1と言われる『マサキ・シマムラ』の長女。
真っ黒に日焼けしたショートカットの少女、ヒナ・ヤナギ。
ユウと同じく、プラレスラー『ヴァルキリー』を駆り、『FIST』に参加する最年少モデラー。
マサキの幼馴染であり、永遠のライバルでもあるT−REXこと『タツヤ・ヤナギ』の長女。
同級生である二人は、都内の小学校に通う2年生である。
二人とも父親の影響を受け、8歳でありながらプラレスにのめり込んでいるのだ。
「ねぇ、今日遊びに行ってもいい? 久しぶりにあたしのヴァルちゃんと『ワルキューレ』でスパーリングやらない? 昨日のお父さん達の試合見てたら、も〜じっとしてらんなくてさぁ!」
「いいよ! ウチのリング、空いてるはずだから」
お父さん達の試合…
そう、二人の父親は昨日のFIST『東京ドーム大会』にて激突しているのだ。
ユウの父親、マサキ・シマムラの『蒼き疾風・十六夜』と、ヒナの父親T−REXの『黒き帝王・タイラント』は、FIST『ファースト・ステージの名物カード』となっており、大会はことのほか盛り上がったのである。
その様子をTVで観ていたヒナは、興奮した様子でまくし立てる。
「今回はタイラント、負けちゃったからなぁ…。昨日、家に帰って来てからずっと悔しがってたよ〜。
『ちくしょー! 次は絶対に勝つ! アイツには絶対負けたくねぇんだ!!』
ってウチのお父さん、いつも言ってるんだよ!?」
「私のお父さんもそうだよ。奴とは小学生の頃からの付き合いだし、プラレスを始めたのも同じくらいだし、負けるわけにはいかない!って。 ・・・なんか今の私達みたいだねぇ」
そう、ユウとヒナの関係は20年以上前のマサキとT−REXの関係と酷似しているのだ。
彼ら二人も、今や伝説と化したかつての『柔王丸』や『マッド・ハリケーン』の試合を見て、このような会話を交わしながら下校したのであろうか…。
「ねえ、一つ聞いてもいい? ヒナちゃんのお父さん、なんで『T−REX』っていうの?」
不意にユウが話題を変えた。
急に予想外の事を聞かれ、しばらく考えた後、ヒナは笑いながら答える。
「あははは♪ 何かと思えば…。 あのねえ、あたし達が生まれる前、まだお父さんがFISTに入る前の話なんだけどね、世界中をタイラントと一緒に修行して回ってたらしいの。 でね、アメリカのなんとか言う団体にいた時に、試合中にお客さんの野次にキレちゃってさ」
「それで?」
「それで、客席に乱入していって暴れたらしいの。自分の試合中にだよ? 信じられる!? そんでもって野次ってたお客さんを、何人か、病院送りにしちゃったんだって!」
「うそ〜!?」
「で、その時実況してたアナウンサーが『あいつはまるでT−REXだ!』って叫んだらしいの。 それ以来どこいってもT−REXって呼ばれるようになったんだってさ」
「で、T−REXってどう言う意味なの?」
さらにユウが尋ねる。
「知らなぁ〜い」
「なんだ、知らないの?」
「前に聞いたんだけどなぁ。 忘れちゃったよ」
「なによ、それ〜!?」
二人はお互いの顔を見つめて笑い出す。
「そうそう、あたしのお父さん、今でも野次が飛ぶと、たま〜に試合そっちのけでお客さんと口ゲンカ始めたりするじゃん? さすがに客席まで行って暴れる事は止めたけどね。 でも、『T−REX』って呼び名、気に入ってるみたいだよ!?」
ふくれっつらで父親の事を話すヒナを横目にユウは思い出していた。
たしかに、今までT−REXが試合中に客席に向かって怒鳴っている光景を見た覚えがあるし、レフェリーの警告を無視して暴れ回るタイラントの姿を何度も目にしている。
そのたびにペナルティーをもらって(強制的に)セカンド・ステージに落とされたり、出場停止になったりするんだ。なるほどね・・・。
「まーったく、お父さんのせいで『おしとやかな』あたしまで誤解を受けるんだからたまんないよ。 ねぇ、ユウちゃん!?」
口を尖らせてヒナが毒づく。
「そ・そうだよねぇ…」
(おしとやか?・・・そうだっけ!???)同意を求められ、少々困惑するユウは、ヒナを見ながらある日の出来事を思い出していた。
いつだったか、一度だけヒナがミニスカートを履いて来た事があった。
いつも男の子みたいな服を着てくるので、ちょっとビックリしたのを覚えている。
その時、からかってやろうとしたのか、同級生の男の子達がそのスカートをめくったのだ。
慣れないミニスカートに照れまくっていたヒナは、始めての『スカートめくり』にブチ切れ、その男の子達を相手に大立ち回りを演じたのだ。(3人ほど泣かしたハズだ)
それ以来スカートを履いてくる事はなく、ヒナには『おしとやか』なるイメージは皆無なのだ。
「じゃあ、今日遊びに行くねー! バイバーイ!」
二人はお互いの家路を急ぐ。
2
「たっだいま〜!おかーさーん、おなかすいた〜! おやつどこ〜!?」
帰宅したヒナは持ちかえった荷物を放り投げると、さっそくおやつの有無を確認する。
「冷蔵庫にシュークリームが入ってるはずだから、お父さんに見つからないうちに食べちゃいなさい」
母、ユミの声が聞こえる。
さっそく冷蔵庫を開け、お目当てのシュークリームを探すヒナ。
「??? おかーさーん、シュークリームなんてないよ?」
「うそ、お父さんの食べる分も計算して20個は買っといたのに…」母が怪訝そうな顔をして冷蔵庫を覗く。
しかし、そこにある筈のシュークリームは既になく、冷蔵庫内には空しいスペースが広がっていた。
「あら? ホントだ。 『!』 急げ! ヒナ!!」
母に言われるまでもなく、父の部屋にダッシュするヒナ。
勢い良く扉を開けると、そこには最後のシュークリームを口に入れようとする父、『T―REX』の姿があった。
「ああ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!! あたしのシュークリームは〜〜〜〜????」
「ん? おう、おかえり、ヒナ」
最後のシュークリームを口に放り込んだ父、T−REXは何事もなかったかのように振りかえる。
「何で20個もあるシュークリームを一気に食べちゃうのぉ?」
「な〜に怒ってんだよ? ハラが減ってたからに決まっとろうが」
悪びれた様子もなく答えるT―REX。
「お父さんのバカーっ!」
「なんだとー! オヤジに向かってバカとは何事だ−!」
「なによー! あたしのシュークリームまで食べちゃって開き直る気ィ!?」
「むむぅ!」
「食べ物の恨みは怖いんだからねぇ!! 覚えときなさいよ−!!」
「あほー! こんなモンは早い者勝ちなのだー! わっはっはっは〜!」
「ばかーっ!」
バタン!!
砕け散れ!とばかりに父の部屋の扉を閉め、自分の部屋へと入るヒナ。
そして机の上においてあるパソコンをバックに詰め込み、
「ヴァルキリーおいで! ユウちゃんちに行くよ!」
ヒナの声に反応し、勢い良くヒナの肩口に飛び乗る白いプラレスラー『ヴァルキリー』。
階段を駆け下り、持ちかえった教材を蹴散らしながら走り出すヒナ。
「おかーさーん、ユウちゃんちに行ってくるねー!」
「待ちなさい! これ片付けてから…」 廊下に散らばる教材を見てヒナを呼び止めようとする母だが、既にヒナの姿はなかった。
「全く、誰に似たのかしら・・・ねえ、お父さん!?」
母が散らばった教材の前でため息をつきながら呟いた。
完
あとがき
ホントに文章を書くというのは難しいですな。
稚拙な文章で申し訳ないと思っております。