―第12話―「招待状」
1
「なんだ、こりゃ?」
T−REXは一通の封筒を手に、固まっていた。
「JPWA? 何でJPWAからこんなのが来るんだ?」
封筒の差出人はJPWA。
T−REXにはまったく覚えがない。
なぜ、自分の元にJPWAからこんなものが届くのか?
T−REXは不審に思いながらも、その封筒を開ける。
中から出てきたものは1週間後に行われるJPWAの公式大会への招待状とチケットらしき数枚の紙。
「招待状? 何でこんなもん、俺に送って来るんだ? 誰かと間違えたんかな?」
T−REXにとって、JPWAのイメージは第2次ブームのそれ以来、変わっていない。
キャラクター先行で、実力を加味しようとしないJPWAのやり方に幻滅して以来、何の興味も抱かなかった。
彼は確認するまでもないとばかりにそれらを丸めて捨ててしまった。
そして、一夜空けた朝、T−REXはヒナに起こされる。
「お父さん、起きて! ジンちゃんから電話だよ〜」
「zzzzz」
「起きてよ〜ッ!!」
「zzzzz」
「起きろ〜!!!」
ドスッ!
「うげ!!」
ヒナのダイビングボディプレスでようやく起き出したT−REXは受話器を取る。
「・・・・・なんじゃい!?」 (←超不機嫌)
「あっ、アニキ? 俺だよ」
「・・・誰じゃい!?」 (←寝ボケてる)
「ジンだよ! ったく相変わらず寝起き悪いッスねぇ…」
「・・・なんだ、お前か。 朝っぱらからなんの用だ?」 (←やっと目が覚めた)
「アニキ、招待状、届いたかい?」
「招待状? ・・・そういやなんか来てたな? なんだ? あれ、お前が出したんか?」
「違うけど、ちょっとそれ持って今夜、『錦』に来てくれよ。 話があるんスよ」
「あぁ〜? 行くのは良いけど、んなモン、捨てちまったぞ?」
「捨てるな〜っ! 探せ〜っ!! とにかく、今夜来てくれよ? それから、アキちゃんも呼んどいてくれ! じゃあな」
「あっ、おい! ジン!! ・・・切りやがった」
なんだってんだ?
ジンから電話が来るのは別に珍しいことではないが、何を焦っているんだ?
首をかしげて受話器を置くT−REXをヒナが覗き込む。
「なぁに? ジンちゃん、なんだって?」
「さぁな? 今夜『錦』に来てくれだとさ」
「え? ジンちゃんと逢うの? ねぇ、あたしも連れてってよ!」
2
そして夜。
T−REX、ヒナ、ジン、アキの4人は『錦』の座敷にいた。
久しぶりにジンに逢ってはしゃいでいるヒナ以外、皆、神妙な面持ちである。
(ジンとヒナは叔父と姪の間柄。ジンはフリー選手の為、日本各地を転々としており、二人が逢うのは久しぶりなのだ)
「忙しいトコ、悪いね。 今日来てもらったのはね、ちょっと二人の耳に入れておきたい事があるからなんスよ」
ジンが切り出す。
「実は昨日、仕入れた話なんスけどね・・・」
ジンは昨晩、女から仕入れた情報を話し始めた。
JPWAが今まで何をしてきたのか、これから何をしようとしているのかを・・・。
「・・・なるほどな」
T−REXは腕組みをしながらポツリと一言。
「まさか、(他団体の解散に)ほんとにJPWAが関わっていたなんて・・・信じられない。 そこまでやる〜?って感じ・・・」
アキは驚きの表情を隠せない。
「???」
ヒナは不思議そうな顔をして3人の顔を見比べている。
彼女にジンの話の意味を理解しろと言っても無理な事だ。
JPWAが善からぬ事をしているというニュアンスしかわからない。
そんな彼女に気付いたT−REXは大きな掌を彼女の頭に置き、クシャクシャと頭を撫でた後、やさしく言葉をかける。
「いいんだよ。 お前には関係のない話だ」
T−REXは言葉を続ける。
「ジン、オマエの話はわかった。 確かにあまり誉められたやり方じゃないことは確かだが、奴らのやりたい事はわかるよ。 奴らも必死って事だ。 しかしな、今の俺達にとって、そんな事は大した問題じゃねえんだよ」
「そうね。 これ、よね」
アキは自分に届いた『招待状』を改めて見つめる。
T−REXも一度はゴミ箱に捨て、クシャクシャになった封筒の中身をテーブルの上に広げ、無言のまま、それを見つめている。
テーブルの上に広げられた封筒の中身。
『招待状』と『チケット』が2枚ずつ。
そしてその他に『もう1枚の紙』が入っていたのだ。
招待状は「タツヤ・ヤナギ」と「タイラント」宛の2枚。
そして、その『もう一枚の紙』には妙な事が記されていた。
『あなたは例の女を探しているのでしょう?』
・・・その紙にはそれだけしか書かれていなかった。
3
しばしの沈黙の後、T−REXが口を開く。
「・・・俺と、アキに共通する『例の女』ってのは誰だ? アイツ以外にゃいねぇだろう?」
「・・・そうね」
〜『ユーリ・ミヤギ』〜
彼女以外思い浮かぶ人物などいない。
執拗にユーリ(ガイア)との対戦を望んでいたT−REX。
初対決以来、思い上がっていた自分のプライドをコナゴナに砕いてくれた女。
タイラントに消えないトラウマを叩き込んだガイア。
彼女を倒すことがT−REXにとって最大の試練であり、目標でもあった。
そして、その思いはFISTの全参加選手の中で、彼が一番強い。
アキにとってもユーリは単なる師匠と弟子という関係だけではない。
ファースト・ステージへの入れ換え戦に出られるまで、腕を上げる事が出来たのは全てユーリのおかげだ。
彼女にとってユーリは師匠であると同時に、母であり、姉であり、友でもある。
そして、いずれは乗り越えなければならない最大の壁でもあるのだ。
そんな二人を見たジンが、思い出したように話し掛ける。
「その『例の女』とやらがユーリ・ミヤギであるのは間違いないだろうね。 (昨日の女もそれらしい事を言ってた気がする) JPWAは彼女の行方を知っているんだろう。 でも何でそんな事を書いた紙を入れといたのかな? そこがわかんねぇなぁ・・・」
ジンの言葉に続いてアキが口を開く。
「・・・たぶん、こういう事ね。 さっきのジンさんの話にもあったように、JPWAはFISTに戦争を仕掛ける気なのよ。 でも、本格的に仕掛けるにはまだ情報が不足しているのでしょうね。 FISTのプラレスラーの実力がどのくらいのものなのか、それをまず私達で試そうって訳なのよ」
「そうだな。 FISTにとっちゃ、落ち目のJPWAと対抗戦をしたところで、メリットは少ない訳だしな。 それもJPWAはわかっているのさ。 だから組織(FIST)を通さずに俺達個人に招待状を送ってきているんだろうよ」
「アニキの言う通りだと思うよ。 FISTは確か、3つにレベルが別れていたんスよね? サード・ステージは初心者用のレベルだから実力を測るまでもないと判断したんだろうね。 そこで、セカンドのランキング上位の小龍とファーストの名物タイラントを相手に選んだんだろう」
「だが無視される可能性もあるワケだ」
「だね。 それで、招待状とは別に妙な紙を同封しといたって訳ね。 他の人なら無視されるかもしれないけど、『例の女』なんて師匠を匂わすような事が書いてあったら私やヤナギさんはちょっと無視できないものね」
「うむ。 つまりはこういう事だろ? ユーリのことを知りたきゃプラレスラー持参で素直に招待に応じろっ!・・・てな。 わざわざ、バカ丁寧にプラレスラーにも招待状とチケットを送ってくるくらいだからな」
「でもヤナギさん、これははっきり言って『罠』だと思うよ?」
「どうしてさ?」
ジンがアキに訊ねる。
「いい? まず、この紙には『例の女』って書いてあるだけで、『ユーリ・ミヤギ』であるとは一言も書いていないじゃない。 確かにJPWAは師匠の行方を知っているのかもしれない。 でもこんなの私達を呼び出すための嘘かもしれないでしょ? こちらが訊ねたところで『そんな事は知らない』って言われればそれまでだもの」
「だな。 それに招待状を送っただけで、闘えとは一言も書いていない」
T−REXが続く。
「いいか? ジン。 こうやって俺やアキに招待状を送って来るって事は、奴らは俺達の事を調べ上げているハズだ。 FISTの内情も調べたんだろう。 その上で俺達を相手に選んだ・・・。 奴らには確固たる勝算があるんだろうよ」
「そうね。 わざわざ自分の土俵に引っ張り出そうとしているんだから。 公式大会に招待するくらいだから単に実力を知るためだけじゃないだろうし、彼らにしてみれば絶対に負けるわけにはいかない・・・よほど自信があるのか、負けない理由があるのか、どちらかでしょうね」
「まぁ、ここでこれ以上話していても結論は出ねえだろう。 いいじゃねえか。罠だろうがなんだろうがこの話、ノッてやろうじゃねえか。 奴らがどう出るのか、楽しみだぜ? せっかくの招待状だ。 後は当日のお楽しみさ。 俺達もそこでどうするか決めればいい。 大体、仮に闘ったとして俺達が負けるワケないだろうが!」
「そうね。 いざとなったら無視したって良いんだし」
「そういう事だ」
3人の大人が眉間にしわを寄せて話をしている。
ちょっと自分から話し掛けられる雰囲気じゃないな。
大人たちの会話を聞きながら、ヒナは言おうかどうか迷っていた。
自分にも『招待状』が来ていた事を・・・。
完
あとがき
言いたいことが上手く表現できん!!
今後の展開も頭の中では(大筋で)決まっているのですが、それを上手く伝えられるだろうか?
しかし、皆、書くの早いねえ。 早く追いつかねば・・・。(って前にも書いた気がする・・・)