オリジナル・ストーリー黒き帝王

 

―第19話―「ジョージ!」

 「オッカマダ! オッカマダ! オッカマダ!」

 アキにとってまったく理解不能な「オカマダ」コールは鳴り止まない。

 やがて、入場ゲートのカーテンが開き、「そいつ」が姿を現した。

 テーマ曲のリズムに乗り、軽快な足取りで入場してきたのは、真っ赤なレザー衣装に身を包んだ長身の男。

 上背は190cm程あろうか、しかしその長身に似合わず、無駄な肉が一切ないスリムな体型。

 爆発したかのようにセットされた長髪。しかも衣装同様、髪の毛までも真っ赤に染めている。

 先程のナカムラとは全てが正反対であった。

 花道をご機嫌で入場してくるその男をアキは呆然と見つめる。

 何か、変だぞ!?

 なに? こいつ・・・?

 『オカマダコール』に迎えられ、徐々にリングに近づいてくるその男を見てのアキの素直な第一印象。

 そう。

 何か変なのだ。

 違和感といって良い。

 その男が近づくにつれ、その違和感の正体が判明する。

 そいつは真っ赤なルージュを引き、目元は赤いアイシャドー。

 なんとも形容しがたい、ド派手なメイクを施していたのだ。

 「さぁ〜、お馴染みの『オカマダコール』に迎えられ、入場してきたのはご存知、『ジョージ・ハカマダ』!!

 今日は真っ赤ないでたちでの登場だ!! お前が敵じゃなくてよかった!! JPWAの問題児、さぁ、ハカマダ!

 FISTの刺客をブッ潰してくれ!!」

 リングアナウンサーが絶叫する。

 その男、ハカマダは笑顔を振り舞いながらリングに近づく。

 そして、コックピットに向かうと思われたその時、方向を変え、リングアナウンサーに近づき、持っていたマイクを奪う。

 と、途端に不機嫌な顔つきになり、会場内を見渡す。

 そして・・・

 「ッきゃ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!! 

 なぁ〜んかい言ったらわかるのよ、アンタ達!! アタシは『ハ・カ・マ・ダ』!!

 いい加減、その『オカマダ』コールはやめてちょうだいッ!! アタシはフツーよっ! オカマじゃないわっ!!」

 ハカマダは開口一番、絶叫する。

 と同時に、鳴り止む『オカマダ』コールとテーマ曲。

 場内は静寂に包まれる。

 ハカマダはゆっくりと客席を見渡し、再びマイクを口にする。

 「わぁ〜かれば良いのよ♪ いいわね! 今度『オカマダ』なんて言ったら、ブッ殺すわよ!」

 「おっけ〜、ジョージ♪」

 「もう言わないよ〜 ジョージ♪」

 「わかったよ〜 ジョージ♪」

 客席から返事が返ってくる。

 「よ〜し♪ 今日のお客さんは素直で素敵よぉ〜♪」

 ハカマダは満足げな表情でコックピットに向かう。

 そして再び大音響で鳴り始めるテーマ曲。

 と同時に再び『オ・カ・マ・ダ』コールの大合唱が始まる。

 「てめえら! ホントにブッ殺すぞ! コラ!!」

 ハカマダは絶叫と同時に客席になだれ込む。

 うおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!

 観客達は大喜びである。

 アキにはまったく理解できなかったが、どうやらこれはこの男の入場シーンの『お約束』らしい。

 ハカマダは観客達、数人にキスマークを残し、やっとコックピットに着いた。

 FISTにはいない、強烈なキャラクターとそれを受け入れる観客達。

 エンターテイメントとして考えた場合、このような特異なキャラクターも必要であろう。 

 事実、この入場シーンだけで、この男は会場をいきなりMAXにまで盛り上げてしまった。

 しかし、これはこの男が実力でも一流であることの証明でもある。

 ある意味、最も現在のJPWAを象徴する、一見バカそのものに見えるこの男も、実力では相当のものを秘めているのであろう。

 実力の無いものがパフォーマンスを繰り返しても、ファンには見向きもされない・・・。

 「あ〜ら、今日のお相手がこぉ〜んなカワイコちゃんだとは知らなかったわん♪」

 ハカマダが、険しい表情のアキに話し掛ける。

 「・・・・・」

 アキはこの不思議な生き物に対して、どう接したら良いのか、わからずにいた。

 少なくても、アキのこれまでの人生の中でも、このようなタイプの人間と関わったことが無かったからだ。

 「ちょっとぉ〜!? 何とか言いなさいよぉ〜!」

 「・・・・・」

 「ねえ、無視するなんてヒドイじゃない!?  カワイイ顔してるクセにぃ〜・・・キスするわよ!」

 「キキキキ・キスって!? ・・・あ、あなた、オカマのくせに女の子に興味があるの? 私は男じゃないわよ?」

 「あ〜ら。 ヒドイ事言うのね? オカマだなんて失礼しちゃうわ! アタシのどこがオカマだって言うのよ!?」

 「・・・・・」

 「オカマとホモを一緒にしないでくれる? アタシは美しいモノが好きなだけよ。男も女も関係ないわ。 

 そして、一番美しいのは、このア・タ・シ♪ そう、アタシは美の探求者なのよーッ!」

 ・・・・・アキは驚きを通り越して呆れていた。

 そうだ。

 私はこの男と不毛な会話をする為にここにいるのではないのだ。

 どんなに異様であろうと、今からこの男と闘わなければならないのだ。

 この男のペースにハマッてはいけない!

 アキはこれ以上、この男に付き合うのを止め、改めて、小龍と向き合う。

 「行くよ、小龍。 がんばってね! 小龍、セットアップ!!」

 小龍はアキの肩から勢いよくリングへと躍り出る。

 その小龍を見て、ハカマダは喚起の声をあげる。

 「いや〜ん♪ なぁ〜んてかわいいプラレスラー! 待っててねえ〜♪ すぐにバラバラにしてやるからよ!!

 テュポーン!! セットア〜ップ!!!」

 ハカマダの瞳が異様に光り、彼の『首に巻き付いていた』、異形のプラレスラーがリングに降り立つ!

 ハカマダが、客席になだれ込んでいるとき、ジンは必死にアキを呼んでいた。

 「アキちゃん! アキちゃ〜ん!!  気をつけろ! そいつは汚ねえ手を使うぞ! くそっ、だめだ。気がつかない!!」

 場内の歓声によってジンの声はアキまで届かない。

 「どうしたのジンちゃん?」

 ヒナが不安そうな顔でジンを覗き込む。

 「・・・ヒナピー、DOAっていうプラレス団体があったのを知ってるか?」

 「でぃーおーえー?」

 「そう。正式名称『DEAD OR ALIVE』。 死ぬか生きるかって意味さ。

 文字通り、死ぬか生きるか、相手を完全に破壊した奴が勝者っていう超過激な団体だったんだ。 

 10カウントダウンもなけりゃ、もちろんフォールなんてない。 ギブアップすら認められないんだぞ!? 

 唯一のルールが『何でもあり』。 とにかく、相手を倒すためには何をしたっていいんだよ。

 飛び道具以外の武器は何でも使ってOK。 一部のファンには熱狂的な信者がいたんだが、

 試合形式が過激すぎるってんで、参加選手がどんどん減っていってな、ついには解散しちまったんだ。

 まぁ、自分で自分の首を絞めたんだから当然の結果なんだがな。」

 「ふ〜ん」

 「アイツは・・・あのハカマダって男は、そのDOAの中でも特にキレていた奴だ」

 「強いの?」

 「・・・強い。というより、汚ねえんだよ。 おいちゃんがJPWAに来て初めて闘ったのがアイツなんだ。

 アイツの噂は聞いたことがあったけど、・・・とんでもない目にあったよ・・・」

 「汚いって? どういうこと?」

 「さっき武器は何でも使ってOKって言ったろ? あれはプラレスじゃねえよ。 おいちゃんときは『火』を噴かれたんだ」

 「火!?」

 「あぁ。冗談じゃねえよ! プラレスラーってのは基本的にはプラモデルの延長だろ? プラスチックに火をつけてみろ?」

 「・・・納得」

 「DOAだったら許せるんだろうが、ここはJPWAだからな。さすがにそれは反則だってんで、試合はそれまでだったがな。

  おかげでヴァイパー、外装パーツのほとんどがイカレちまったんだ。 えらい出費だよ」

 「大丈夫かなぁ・・・ アキちゃん・・・」

 「まあ、ここはDOAじゃねえ。JPWAだ。そんな試合は認めないだろうがな・・・」

 ジンとヒナが不安そうな表情で見つめる中、ハカマダのプラレスラーが、リング上に姿を現した。

 「出たァ〜〜〜〜!! テュポーン!!! 今日は『雌型』で登場だぁ〜!!」

 リングアナウンサーが絶叫する。

 場内は大歓声に包まれる。

 リングに降り立った異形のプラレスラー『テュポーン』を見て、アキは更に混乱していた。

 なんだ? あれは?

 ・・・人? 蛇?

 上半身は辛うじて人の形をしていたが、腰から下は脚がなく、蛇のようなパーツが、とぐろを巻いていた。

 半獣半人の異様な姿。

 しかも、『雌型』?

 なによ、それ?

 ・・・雌型。

 テュポーンには外装パーツの異なる『雌型』と『雄型』が存在する。

 もっとも、異なるのは外装パーツだけで、替えることにより、闘い方や、性能がそれほど変化するわけではない。

 ハカマダのその日の気分により、決まるだけの代物である。

 しかし、ファンにとっては今日はどっちで試合をするのだろう?と興味を抱く。

 一見バカそうに見えるこの男、その辺は計算の内なのである。

 しかし、ハカマダやテュポーンの事を何一つ知らないアキにとって、不安な事だらけだ。

 わかるのは一筋縄ではいかない相手であろうという事だけ・・・。

 アキが混乱している中、リングアナウンサーが客席に向かい、解説をはじめた。

 「さぁ、ここでこの試合のルールを御説明申し上げます。 この試合はJPWA特別ルールを採用致します。

 3分1ラウンドを10ラウンド行いますが、試合は、どちらかが完全に『作動不能』となるまで行われます。 

 フォール、10カウントダウン、場外カウントは採用せず、ギブアップも認められません。

 なお、受信機への攻撃以外、ありとあらゆる『全ての攻撃』が認められます!」

 おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!

 会場内に大きなどよめきが走る。

 「なによ、それ!? どういう事?」

 アキは猛然と講義するが、完全に無視される。

 完全にハカマダに有利なルールだ。

 アキも、プラレスは初心者ではない。

 今まで何度も激しい試合もしてきた。

 しかし、相手を完全に(破壊するまで)作動不能にまで追い込んだことなど一度もない。

 もちろん、こんな滅茶苦茶なルールの下、試合をするのは初めてのことである。

 見るからにまともな闘い方をしそうにないテュポーン。

 同じく、見るからにまともではないハカマダ。

 アキの不安が一段と増す中、惨劇のゴングが打ち鳴らされた・・・。

 

 

あとがき

 外伝とはいえ、プラ3を題材にお話を書いているのだから、

 『オカマ』キャラを出さねばならんだろうという事で登場した『ジョージ・ハカマダ』。

 プラ3の敵キャラといえば、黒崎や大貫といった『オカマ』キャラがストーリーに華?を添えました。

 ハカマダ君も、彼らに負けないような強烈なインパクトを残せるよう、頑張りたいと思います。

 テュポーンはギリシャ神話に出てくる半獣半人の化け物の名前からとりました。

 本当はテュポンというらしいのですが、なんかマヌケなので、テュポーンとしました。

 テュポーンは雌型と雄型があると書きましたが、テュポンは男性型をしているそうです。 

 ヒマな方は調べてみてください。

 デザインは某アニメに出てきた『邪神兵』のパクリです。 

 

 

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