―第23話―「アンラッキーカラー」
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「いやぁぁぁあぁぁぁぁぁあぁぁぁぁぁあ!!」
「???」
いきなり攻撃の手を止め、絶叫するハカマダ。
アキはなにがどうしたのかさっぱりわからない。
それは会場内にいる人間の誰もがそう思っていた。
今まで有頂天で攻撃していた人間が、いきなり叫び出したのだ。
「な・なんで黒いのよ・・・!?」
「?」
「なんで黒い服着てんのよッ!?」
「??」
「なんで青い服の下に黒い服着てるのよーッ!?」
「???」
泣き叫ぶハカマダ。
ワケがわからないアキ。
黒い服?
これのことか?
小龍は青い胴着の下に、更に黒いレオタード状のスーツを着込んでいる。
どうやらそれのことらしい。
鞭の攻撃によって切り裂かれた青い胴着。
それはすでに胴着と呼べるものではなく、単なるボロ布である。
小龍はそのボロ布を脱ぎ去り、改めてファイティングポーズを取る。
その姿を見たハカマダは更に絶叫する。
「卑怯よッ! なんでそんなモン着てるのよ!?」
「卑怯ってアンタが言う? 別にルールに違反しているワケじゃないでしょ!?」
「違反してるわよ〜! 今日の占いに出てたもの!『黒』はイケナイ色なのよー!! アンラッキーカラーなのよー!!」
「占いだぁ〜!? そんなモン、知らないわよ! アンタが勝手にやってるだけじゃない!」
「うきゃーっ! この試合はねえ、アタシのタイトル戦へのステップ・アップの為の試合なのよ! アタシがルールなのよ! アタシが違反って言ったら違反なのよー!!」
「そんなん知るかー!!」
半狂乱で屁理屈を重ねるハカマダ。
(自慢のヘアースタイルは崩れ、真っ赤なメイクは涙で流れ落ち、血の気の引いたハカマダの青い顔はとてもオモシロイ)
アキは呆れながらも、小龍を追い詰められたコーナーより脱出させる。
小龍の黒いスーツを見てからのハカマダは、あきらかにおかしくなっていた。
オペレーションが雑になり、集中力を欠いているのがわかる。
当然、テュポーンの動きもぎこちなくなってきており、滅茶苦茶に鞭とハンマーを振り回す。
まるで、おもちゃ売り場で泣き叫ぶ、駄々っ子のようだ。
駄々っ子なのはテュポーンだけではない。
ハカマダもそうなのだ。
そんな様子を見て、冷静になったアキは、ひとつの戦法を思いつく。
「(ちょっとした賭けだけど、このままじゃ『回転連舞』の体勢に入れないなぁ・・・。よぉ〜し、やってみるか)」
小龍は足がもつれたように見せかけ、ダウンする。
チャーンス!! とばかりにテュポーンは鞭を振るい、先程のように小龍に鞭を絡ませる。
「ににに逃げるんじゃないわよ! もう離さないわッ!」
テュポーンは再度鞭を引き、ハンマーでの攻撃を狙っている。
必死に踏ん張る小龍。
テュポーンの鞭を引く腕に力が入る!
小龍は更に抵抗を続ける。 テュポーンはパワー全快で小龍を引っ張る!
ググググ・・・・・!
「ええ〜い、しぶとい小娘ねッ。 お・と・な・し・く、こっちへいらっしゃい! また電流、流すわよ!」
ハカマダは半狂乱である。
「い・わ・れ・な・く・て・も・・・そのつもりよッ!!」
テュポーンが力任せに鞭を引いたそのタイミングに合わせ、小龍は頭からテュポーンに突っ込む!
いきなり抵抗を失い、バランスを崩すテュポーン。
今度は左手のハンマーを振るうことなく、鳩尾に小龍の頭突きを食らってしまう。
ドガッ!!
「グガガガガ・・・」
自分の力と小龍の重量を鳩尾に受け、両腕の武器を落とし、うずくまるテュポーン。
すばやく絡まった鞭を解き、テュポーンが落としたハンマーを手にする小龍。
「痛かったんだぞー!」
両手でハンマーを持ち、うずくまるテュポーンの顔面にむかってフルスイング!!
グワキーン!
「もmn¥udt、い下・やり.くhul;//てりた・GSめのの・・・」
またも声にならない悲鳴を上げ、ダウンするテュポーン。
ハカマダも以下同文。
小龍はハンマーを投げ捨て、ダウンするテュポーンの顔面に強烈なローキック! ローキック!!
3発目のローキックを辛うじてガードして起き上がるテュポーン。
「・・・やってくれたわね」
先程まで、見事なまでにうろたえていたハカマダだが、小龍の攻撃は、かえって彼を冷静にさせてしまったようである。
「もう許さないわー!」
テュポーンはなりふりかまわず小龍との間合いを詰め、1ラウンドでも見せた『毒霧』を噴射!
しかし、これを読んでいた小龍は両腕でガード。
「同じ事するなんて芸がないわね!」
アキは冷たく言い放つ。
「ふん! ウルサイわねっ!」
テュポーンはかまわず2発目の毒霧を噴射。
これも読んでいた小龍は、右のハイキックを顔面に浴びせる!
右脚に毒霧を貰いながらもテュポーンを吹っ飛ばす。
「今更『毒霧』なんてどういうつもり!? そんなの、痛くも痒くもないんだから!」
「ふふん♪ 今のが『毒霧』だなんて誰が言ったのぉ〜?」
ニヤリと笑うハカマダ。
「えっ・・・?」
いい加減、ハカマダの奇行には慣れてきたアキであったが、嫌な予感がする・・・。
「両腕と右脚をよく見てみなさいよ!?」
ガードした箇所だ。
アキは言われるままに小龍の両腕と右脚を見るが、毒霧で汚れたようには見えない。
というより、なんともなっていないのだ。 微妙に濡れているように見えるだけ・・・。
「なんにもなってないじゃない・・・」
「おほほほほ♪ わからない? そろそろ『匂って』くる頃だと思うけど・・・♪」
「匂う?」
・・・!
この匂いは!?
それはモデラーなら誰でも嗅いだ事のある匂い。
モデラーでなくても、ちょっとでもプラモデルをかじった事のある人間ならすぐにわかる匂い。
「シンナー!?」
「ピンポ〜ン♪ 毒霧の中身を入れ替えたのよ〜!」
「だからなんだってのよ! シンナーを吹き付けたくらいでやられると思ってんの!?」
「バ〜カねぇ・・・。 そんな事わかってるわヨン♪ そして、これがトドメになるのよっ!!」
ハカマダの号令と共に、テュポーンが身構え、両目のレンズが弾け飛ぶ。
「死になッ! 『ラブ・ファイアー』!!!」
なんと、テュポーンの両目から火炎が放射された!!
ゴオオオオオオオ! ボッ!!
それは一瞬の出来事だった。
火炎はシンナーを吹き付けられた箇所に引火し、小龍の両腕と右脚は炎に包まれた。
「あ〜はっはっはっは♪ 燃えろ〜! 燃えろ〜!! やっぱり今日のラッキーカラーは赤ね! 真っ赤に燃えているわぁ〜♪」
ハカマダは腹を抱えて大笑いする。
恍惚の表情で燃え盛る小龍を見つめるハカマダ。
テュポーンも勝利を確信し、笑っているように見える。
しかし、アキはその隙を見逃さなかった。
炎に包まれながらも、小龍は懐に入り込み・・・
「小龍! 狙いは鳩尾! 『回転連舞』!!」
初公開、小龍のフィニッシュ・プログラム!
先程のスクリュー・ナックルを発動させ、テュポーンの目の前で、時計回り(右回転)に回転し、左の裏拳の2連撃! 更に回転して左のバックスピンエルボー!!
更に今度は時計とは反対回り(左回転)に回転し、右の裏拳の2連撃から、更に回転しての右のバックスピンエルボー!!
更に必殺の右脚での連続蹴り、百裂脚が炸裂。
ガッ! ガッ! ガンッ! ガッ! ガッ! ガンッ! ドガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガガ!!!!
これら全ての攻撃がテュポーンの鳩尾に集中し、腹部装甲、および内部機構にまで大ダメージを与えた。
百裂脚の凄まじい勢いにより、右脚の炎は消え去っている。
そして、
「フィニッシュ!!」
アキの号令と共に、燃え盛る両腕での掌打が炸裂! (←激壁背水掌)
その瞬間、通常、プラレスの試合ではあり得ない『爆発音』が鳴り響いた。
テュポーンの胸のシンナー貯蔵庫のパーツに、小龍の両腕の炎が引火、爆発したのである。
テュポーンが炎を吐いてから、わずか数秒の出来事であった。
黒煙がリング上を覆い、一時、騒然となったが、間もなく煙は晴れ、変わり果てた2機のプラレスラーが姿を現した。
そこには両腕を爆発で失いながらも、身構える小龍と、爆発により、胴体のパーツが内側から捲れ上がり、ピクリとも動かない、無残な残骸と化したテュポーンの姿があった。
両者とも爆発により、真っ黒に煤けている。
黒・・・。
ハカマダのアンラッキーカラー。
真っ赤な炎は消え去り、残ったのは真っ黒になった両者。
皮肉にもハカマダの占いは、的中する結果となった。
3ラウンド、2分53秒。
テュポーンの戦闘続行不可能により、小龍のKO勝ち。
テュポーンの絶対有利なルールで始まったこの試合は、壮絶な結末を迎えた・・・。
完
あとがき
やっと、決着がつきました。
ラストは決めてあったのですが、それまでの試合経過は書きながら決めていったので、
自分の予想以上に長いお話になってしまいました。
これでハカマダ君ともお別れだと思うと、ちょっと寂しいなあ。
さて、次回からはいよいよ主人公T−REXの出番です。
全然決めていません。
どうしよう・・・!?