オリジナル・ストーリー黒き帝王

 

―第25話―「キョウコ様と下僕なアイツ」

 「てめえ、何しにきやがった〜!!」

 「死ねぇ〜!」

 「俺たちゃ忘れてねえぞ〜!」

 「生きてここから出れると思ってねえだろうなぁ〜!?」

 etc・etc・・・。

 罵声。

 怒声。

 怒号。

 入場してきたT−REXに向けられた観客達の反応である。

 ここにいる観客達全てが過去の出来事を知っているワケではないが、一部の熱狂的ファン達にあおられて、会場全体の敵対ムードが更に強くなった。

 入場ゲートを潜り、コックピットに向かう花道で、T−REXはありとあらゆる非難の声を聞いた。

 「おっほ〜! 良い反応だなぁ〜。 これだけ場内を敵にしたのも久しぶりだぜ! 気ン持ちいい〜♪」

 罵声をものともせず、ニヤニヤ笑いながら歩くT−REX。 むしろ、その反応を楽しんでいるかのようである。

 その態度に更に過剰な反応をみせる観客達。

 「さぁ・・・。JPW・・対F・・T、最終決戦、まずは、FI・・ ファース・・表 T−RE・・! プラレ・・・は

 タイラント! 我がJPWAとは因縁・・・・・」

 リングアナウンサーが紹介を始めるが、場内の怒声に掻き消され、ほとんど聞き取れない。

 T−REXがコックピットに着き、罵声も一段落ついたところで、リングアナウンサーは再びマイクを取る。

 「さぁ、対する我がJPWAからは『女王』の登場だ!!」

 と同時に鳴り響く荘厳なBGM。

 入場ゲートの周りには花火が吹き上げ、スモークが炊かれる。

 なんとも派手な演出だ。

 それだけで、これから入場してくる人物が特別扱いされているかわかる。

 鳴り響いていたBGMが鳴り止み、今度は華麗なBGMが鳴り響く。

 そして現れた『女王』。

 「さぁ、入場して参りましたのは現JPWAチャンピオン、THE・QUEEN『カト〜〜〜ゥ・キョ〜〜〜〜コ』!! プラレスラーはご存知『ラ・ヴィアン・ロォーーーーーーーーーーーーーーーーーズ』!!」

 キョウコがその姿を現すと同時に罵声は歓声へと変わった。

 『カトウ・キョウコ』

 先程、ヒナに敗れたミカの実姉。

 JPWAの最大スポンサー、『ONDA』の重役を父に持つお嬢様。

 ミカとは10歳程離れており、顔の造りはあまり似ていないが、共通しているのは、その美しさ。

 長く美しい黒髪。

 全てのものを見透かすような威圧的な大きな瞳。

 不敵な笑みを浮かべる妖しい唇。

 透き通るような白い肌。

 非の打ち所のない、完璧なメイク。

 目のやり場に困るような自己主張の激しい胸元。

 細く引き締まったウエスト。

 官能的なヒップライン。

 そして、ギリギリまでスリットが入ったミニスカートから覗く長く美しい脚線。

 ・・・美しい。

 どこにもケチの付けようのない美人だ。

 しかし、その美しさにはユーリのような自然な美しさは感じなかった。

 美しいことは美しいのだが、何か人工的な美しさなのだ。

 笑顔で入場してくるのだが、その笑顔はまるで能面のよう・・・。

 場内の割れんばかりの歓声の中、『ラ・ヴィアン・ローズ』を肩に乗せ、キョーコは微笑みながらゆっくりと入場してくる。

 『ラ・ヴィアン・ローズ』

 その名前から女性型のプラレスラーを想像してしまいがちだが、『ラ・ヴィアン・ローズ』は男性型である。

 基本的なデザインは先程の『クイーン・ローズ』と大差ないが、やはり男性型だけあり、重量感があり、精悍な印象を受ける。

 クイーン・ローズ同様、『ONDA』の最高傑作。

 ローズ同様、市販するには高価すぎて、導入できなかった技術が目一杯詰め込まれている。

 しかし、クイーン・ローズとの決定的な違いはハード(本体)より、ソフト(プログラム)の方。

 それは追って紹介しよう。

 そして、その後ろには従者のように付き従いながら、キョウコのパソコンを持ち運ぶ小柄な男が入場してくる。

 その小男に違和感を感じたヒナがジンに尋ねる。

 「ねえ、ジンちゃん、あの男の人はなんなの?」

 「え? ああ、オオキの事か? あいつはキョウコのマネージャーだよ」

 「マネージャー?」

 「何でマネージャーが一緒に出てくるの?」

 「はっはっは♪ アイツはキョウコのマイクなのさ」

 「マイク?」

 「そう。 どういうつもりか知らんが、キョウコはさっきのハカマダみたいにマイクアピールって奴を一切しないんだよ。 実際に闘うのはもちろん、キョウコなんだが、アイツはキョウコの代わりにマイクアピールをするのさ。 チャンピオンである高貴なキョウコ様の生声を、一般人である俺達に聞かせるわけにはいかないんだと」

 「はぁ?」

 「試合前、試合中、試合後の相手への挑発、観客へのアピール、テレビや雑誌のインタビューなんかも全てあの男がしゃべるのさ。 キョウコはその後ろで黙って笑顔を振りまいているだけ」

 「ふぅ〜ん」

 わかったようなわからないような・・・。

 首を捻るヒナ。

 花道を歩いてきたキョウコはコックピットに座らず、用意されたソファーに腰をおろし、その小男に視線を送る。

 小男はマイクを取り、大きく深呼吸。

 そしてT−REXに中指を突きたて、怒鳴りつける。

 「コォラ! T−REXとやら! バカ面さげて美しいキョウコ様を見つめてんじゃねえぞ! てめェみてえなクソ野郎が、いきなり美しいキョウコ様と闘えると思ってんじゃねえだろうな!? あぁ!?」

 T−REXの眉が『ハ』の字になる。

 ワケがわからない様子だ。

 小男は更に続ける。

 「美しいキョウコ様は恐れ多くもJPWAのチャンピオンなんだ! てめえみてェな飛び入りが挑戦しようなんて、100年早えぇんだ! 由緒あるJPWA王座に挑戦できるのはなぁ、この俺様が認めた奴だけなんだ!」

 『ハの字』眉毛の呆けた顔で小男の演説を聞いていたT−REXに、リングアナウンサーからマイクが渡される。

 そのマイクを取り、

 「ああ〜〜〜〜っと、お前、誰? さっきから何言ってんだ!? ワケわかんねーよ。 招待されてこの扱いは納得いかねえなぁ。 結局、俺の相手は誰なんだよ? そのね〜ちゃんじゃねえってのなら引っ込んでろや」

 「ね〜ちゃんだとぉ! 貴様、美しいキョウコ様に向かってなんて口の利き方だ!!」

 「あ〜、うっせえなぁ〜。 だからお前はなんなんだよ? 俺の相手じゃねえってのならその『ウツクシーキョーコ様』は何しに出てきたんだよ?」

 (今のTーREXの『ウツクシーキョーコ様』はワザとバカにした口調である)

 「ぬぬぬぬぬぅ! 許さんぞぉ! いいか!? 美しいキョウコ様と闘う資格があるかどうか、この俺様が見極めてやる!! それまでバカ面さらしてそこに座ってりゃいいんだよ! てめえに選択権はねえんだ!」

 「はぁ?」

 「いいか、よぉ〜く聞け! 我がJPWAには、美しいキョウコ様の王座を狙う猛者共がひしめいているのだ! そ奴等を全て打ち倒すことが出来たら、美しいキョウコ様と闘わせてやる! わかったか!!」

 「あ〜あ〜はいはい。 こちとら待ち時間が長くてうんざりしてたんだ。 何でも良いから早くしてくれよ〜。 で、おめぇは誰? 何?『キョ〜コ様』の下僕? それとも犬?」

 「げげげげげげ下僕だぁ!? T−REX! てめぇブッ殺す! 俺様はなぁ、美しいキョウコ様のマネージャーの「オオキ・ダイスケ」ってんだ! 覚えとけっ!」

 「覚えねえよ。チビのクセに名前と態度と声はデケえんだな?」

 「なんだとぉ!!」

 「あっ、ワリィ。 顔もデケえな。 おめ、冗談抜きで4頭身ぐらいしかねえぞ!? おもしれえな♪ ホントに地球人か? よし、大丈夫だ。 覚えたぞ。 こんな生き物はさすがに忘れねェわ♪」

 T−REXに思い切りバカにされ、今にも飛び掛らんとしたオオキだったが、キョウコに制され、落ち着きを取り戻す。

 「ふん! T−REXよ。 貴様はこれから公開処刑されるのだ。 その小汚い安物(タイラント)がスクラップにされた後でもそんな口が利けるかな!? さぁ、出てこい! 猛者達よ! このクソッタレを打ち倒した者にはJPWA王座に挑戦する権利を与えてやるぞ!!」

 オオキが叫ぶと同時に花道に姿を現す3人の男。

 同時にBGMが会場内に響き渡る。

 すかさずリングアナウンサーは紹介を始める。

 「おお〜と、マネージャー、オオキの提案により姿を現した猛者達!

  一人目はご存知、元道産子プラレス代表『ケイジ・ヤスダ』! プラレスラーは『サンダー・ウルフ』! その恐るべきスピードから繰り出される攻撃はまさに雷! ウルフのスピードについていく事ができるのか!?

  二人目はJPWA若手ナンバーワンの実力者、なんと中学生にして上位に食い込む実力の持ち主『ヒトシ・ヨシザワ』! プラレスラーは『ペルフェクシオン』!! ペルフェクシオンの華麗なるテクニックが今宵も冴え渡るのか!?

  そして三人目は2ヶ月前、宿敵FISTから電撃移籍を果たし、もはやJPWAでもその実力を疑う者は一人もいない!『マサ・ゴトウ』! プラレスラーは『クレイジー・モンスター』!! 恐るべきそのパワーで破壊されたプラレスラーは既に13機にも及ぶ、まさに狂える怪物!

  T−REX選手はこの3人の選手達と闘うことになります。 この3人を全て倒すことが出来た時、初めて『ラ・ヴィアン・ローズ』と闘う資格が与えられます! さぁ、一番手は誰だ!?」

 場内は大盛り上がりである。

 ヒナ達を除いて。

 心配そうにT−REXを見つめる、ヒナ、アキ、ジン。

 そんなT−REXは・・・

 ズッコケていた。

 「何で、ゴトウの馬鹿が出てくるんだ!? またアイツと闘るのかよ〜・・・」

 

 

あとがき

 新キャラ、『キョウコ』と『オオキ』の登場です。

 キョウコのモデルは(名前だけね)某ゴージャス姉妹の姉ちゃんのほう。

 (私はあの人らを始めて見た時、マジにニューハーフの方だと思いました)

 オオキのモデルはいません。 最初に小男と書いてしまったので、名前は大きくしました。

 ヤスダ、ヨシザワ、ゴトウの3人は某プッチモニの皆さんから名前を頂きました。

 (ちなみに私は吉澤さんが好きです。保田さんもいいです。もちろん後藤さんも。 ・・・ってどうでもいいね、そんな事)

 さて、お膳立てが出来たところで、次回からやっと試合が始まります。 お楽しみに。

 しかし、俺は今まで入場シーンだけで何話使ったんだろう?

 

 

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