オリジナル・ストーリー黒き帝王

 

―第28話―「本音と建前」

 TVモニターで場内の様子を見ていたナカムラは青くなっていた。

 「・・・冗談じゃないぞ!? なんだアイツは? 

 C・モンスターもT・ウルフも、今やウチを代表するプラレスラーだぞ?

 なんで平気で立っていられるんだ!?」

 ナカムラは仮にもJPWAの副会長である。

 プラレスに関して素人ではない。

 自分専用のプラレスラーも所持しているし、腕前も悪くない。

 ゴトウのC・モンスター、ヤスダのT・ウルフが立て続けに敗れたのを見て、愕然としている。

 「オオキの奴め、キョウコの事に関しては一切口出ししないという約束だから任せておいたが・・・

 大丈夫だろうな? これでヨシザワもキョウコも負けるようなことにでもなればエライことだぞ!?

 まぁ、奴のことだ。 なにか策でもあるんだろうが・・・」

 ナカムラは油汗を流しながら、折の中の熊のように部屋の中をウロウロしていた。

 一方、こちらはそのオオキ&ヨシザワ。

 「おい、ヨシザワ、ちょっと来い」

 「なんですか? オオキさん」

 「お前の腕は信用してるが、ぶっちゃけた話、あいつに、タイラントに勝てそうか?」

 「・・・う〜ん、どうかなぁ〜? ゴトウさんのC・モンスターはともかく、

 ヤスダさんのウルフもほとんど歯が立たなかったでしょう? そんな奴相手に

 はっきり勝てるなんて言えないなぁ〜」

 「う〜む・・・。 そうか。 俺はな、お前のことを一番買ってるんだ。 

 最初っからゴトウの大馬鹿野郎には期待なんかしちゃいなかったが、

 お前かヤスダなら勝てると思ってたんだよなぁ〜。 

 でもな、ここだけの話、俺はお前の方がヤスダより上だと思っている。

 いや、お世辞じゃねえぞ!? おそらく、次のJPWA王者はお前だよ。 

 だからここで絶対に勝ってもらいたいんだよ!」

 「当然、ボクもそのつもりでいますよ」

 「おお!」

 「まぁ、ボクの集めたデータに間違いはありません。 目の前で2試合も貴重な実戦データを取る事が出来ましたし、

 僕のペルフェクシオンが負ける要素など見当たりませんよ」

 「そうか! 頼もしい奴だなぁ〜 おめぇはよぉ〜♪」

 「任せておいて下さい。 キョウコさんの出番はありませんよ!」

 オオキとの密談が終わり、ヨシザワはコックピットに座る。

 シラケタ顔でT−REXが文句をたれる。

 「コラ〜 ガキ〜 目上の人間を待たすんじゃねえぞ〜」

 「お待たせしました、T−REXさん。 さぁ、始めましょう! ペルフェクシオン、セットアップ!」

 タイラントが待ち受ける中、ヨシザワのプラレスラー、『ペルフェクシオン』がリングに降り立つ。

 見るからにゴツイC・モンスターや半獣人型のウルフとは異なり、

 ペルフェクシオンはタイラントと同じ純粋な人型である。

 しかし、スーパーヘビー級のタイラントと比べると一回り小型だ。

 無駄な装飾品の一つも無いそのフォルムは非常にシンプルな印象を受ける。

 そして試合開始のゴングが鳴り響く。

 「フフン、クソガキが〜。 せいぜい頑張ってくれ。 お前が勝っても負けても最後にオイシイ思いをするのはキョウコ様なのさ。

 てめえみたいなPCオタクのガキが次期JPWA王者〜? 自分で言っといて笑っちまうぜ! 

 勝てば約束どおり、キョウコ様と闘わせてやるさ、今の試合が終わった直後にな。 今までの試合を見てりゃわかる。

 例え勝ったとしても無傷でいられるハズがねえ! 

 タイラントだって、3試合も立て続けに試合をした後にラ・ヴィアン・ローズとやって勝てるわけがねえ!

 どんなにタフだろうと、プラレスラーには限界ってもんがあるんだよ」

 オオキはニヤリとほくそえむと、リング上に視線を移した。

 場内に歓声と罵声が交錯する中、両者は互いの様子を伺っていた。

 「(・・・ふんっ! 『僕のことを一番買っている!?』『次期JPWA王者はお前だ!?』だって? オオキのハナクソ野郎め!

 ヤスダさんじゃあるまいし、僕はあんたの言うことをまともに信じるような単純馬鹿じゃないんだ。 

 あんたにとっちゃ、僕たちなんてどうなろうと構いやしないんだろ? いいさ、あんたの思い通りになんてならないんだ!

 FISTのタイラントだろ? よぉ〜く知ってるさ! 得意技から弱点までも! 倒してやるさ!!)」

 ヒトシ・ヨシザワ・・・

 若干14歳ながらも、JPWAのトップグループに位置する天才少年モデラー。

 都内の有名進学校に通い、頭脳明晰である彼は、2年前まではJPWA・Jr・チャンピオンでもあった。

 パソコンオタクのプラレスオタクで、格闘技オタクでもある。

 (ついでにマザコンとロリコンを併発していたりする。同世代の女性とはまともに話す事も出来ない)

 彼の本質は理屈屋で非常に執念深く、粘着質である。

 学校生活ではそれほど目立たず(目立てず)、消極的なのだが、ネット上など、本人が特定しにくい場合などは非常に攻撃的になる。

 このまま社会にでた場合、不適合者になる可能性は非常に高い。

 挫折を知らない、この時代によくある典型的な引きこもり少年でもある。

 故に、彼のプラレスラー『ペルフェクシオン』、の人気は高いが、彼自身の人気はほとんど無い。

 リング上では『毒』も無ければ『華』も無い。 

 仮に彼がJPWA王者になったとしたら、JPWAは一気に盛り上がりを欠くであろう。

 その辺を自覚していないのが彼の不幸なところでもある・・・。

 リング上では睨み合いが続いていた。

 タイラントは相変わらず構えもせずに相手の様子を伺っている。

 ペルフェクシオンはゆっくりとタイラントに近づこうとしているが、カウンター攻撃を警戒している為か、

 なかなか組み合おうとしない。

 「お〜い、ボウズ、来ないのか〜?」

 T−REXはヨシザワに声をかけるも彼は無視。

 「(誘いにはノラないよ。こういう体格差のある相手と闘うにはまともにやってはダメだ。 

 とりあえず寝かせることが第一だ。 倒してしまえばいくらでも料理の方法はある!)」

 「無視かよ〜。 かわいくねえなぁ〜・・・。 『次』(の試合)もあることだしなぁ〜。 たまにゃあこっちから行くか」

 と、タイラントが一歩足を踏み出したと同時に、ペルフェクシオンの超高速タックルが炸裂。

 完全に不意を着かれたタイラントはいとも簡単にテイクダウンを許してしまう。

 そしてあっという間にマウントポジション(馬乗り)をとるペルフェクシオン。

 「残念ながら『次』はありません。あなたの試合はこれで終わりです!」

 ヨシザワは笑顔で余裕の表情だ。

 そして振り下ろされるペルフェクシオンのマウントパンチの嵐!!

 いくらタイラントが頑丈だとは言え、馬乗りになられたまま、顔面を殴られ続ければあっという間に勝負はついてしまう。

 「ありゃ!? こりゃ、さすがにマズイわ!」

 3試合目で初めて見せるT−REXの焦りの表情。

 しかし、完全に馬乗りになられてしまうと、そこからの脱出は容易なことではない。

 反対にヨシザワは勝ち誇った顔である。

 「無駄ですよ。 今までこの体勢を返したプラレスラーはいません。

 いくらタイラントがパワー自慢であろうと、力だけじゃあマウントポジションは崩せません!」

 「余裕だな、ボウズ! 気に入ったぜ! お前は特に念入りにブチ壊してやるから待ってろ!」

 「無駄だって言ってるの・・・に・・・?」

 タイラントは殴られながらも両手も伸ばし、ペルフェクシオンの顔面を掴む。

 そして、そのまま一気に引き寄せ、ヘッドバッド!!

 ゴガン!!

 ペルフェクシオンは頭を捕まれたまま、自ら頭突きを『させられてしまった』。

 この衝撃でマウントポジションは崩れ、両者は離れた。

 「くそっ! 何てことするんだ!?」

 タイラントの常識外の脱出法に戸惑うペルフェクシオン。

 「いやぁ〜。今のはちょいと無茶しちまったかな? おい、立て!タイラント」

 タイラント、ペルフェクシオン、ふらつきながらも両者同時に立ち上がる。

 「(落ち着くんだ。 今の攻撃でタイラントは確実にダメージを食らっているはずだ。 やはりマウント攻撃は有効だ。

 データによると、FISTにはこういう闘い方をするプラレスラーはほとんどいない!

 故にタイラントはこの闘い方に慣れていないハズなんだ。  

 僕の戦法は間違っていない! もう一度グラウンドに持ち込めば絶対に勝てる!!)」

 ペルフェクシオンは再度、マウントポジションを取ろうと機を伺う。

 「う〜む・・・。 ガキだと思っていたら結構やるじゃねえの。 ゴトウなんかよりよっぽどやりニクイわ」

 T−REXの口元が緩む。

 楽しくてしょうがないと言った表情である。

 中腰のまま、じりじりと間合いを詰めるペルフェクシオン。

 時折、ペルフェクシオンはパンチやキックを放つが、牽制と見切っているタイラントは避ける仕草すら見せない。

 なかなか組み合おうとしない両者に観客達が苛立ち、罵声が飛び交う。

 「う〜るせえなぁ〜・・・。 こういう『間』が楽しいんじゃねえか。 わからんかなぁ〜?」

 T−REXは騒ぎ立てる観客達へと視線を移す。

 その瞬間を逃さずにタックルを仕掛けるペルフェクシオン。

 「よし!」

 ・・・!?

 倒れない!?

 タックルは完璧に決まった。

 しかしタイラントは倒れない。

 「若いねぇ♪ ここまで見事に誘いに乗るなんてなぁ。 まだまだ蒙古斑だな!」

 ニヤつくT−REX。

 「モウ・・・コハン?」

 「ケツが青いってことさ!」

 タイラントは両脚にしがみついているペルフェクシオンを強引に引っこ抜き、旋回しながらそのままマットに叩きつける!

 パワーボム!!

 更に手を離さずにもう一発! 

 そのままフォールの体勢に入るタイラント。

 旋回式パワーボムの2連発でペルフェクシオンは既に虫の息である。

 「・・・誘いに乗ったのはあなたの方ですよ。 T−REXさん」

 「なに?」

 カウントを2で跳ね除けたペルフェクシオン。

 覆い被さっていたタイラントの右腕を取ると、自らの頭部を軸に回転、両脚を使い、一気にタイラントをグラウンドに持ち込む。

 腕ひしぎ逆十字!!

 リング中央で完璧に決まった逆十字固め。

 ニヤつくヨシザワ。

 「右腕、いただきます!!」

 ヨシザワ以上にニヤつくT−REX。

 「やるなぁ〜! やるやる! いいぞぉ〜ボウズ!! ますます気に入ったぁ〜!!!」

 

あとがき

 2003年、最初のお話は3人目、ヨシザワ・ヒトシ君の登場で始まります。

 こいつのキャラが決まらなくて、更新がのびのびになってしまいました。

 こういう奴とはあまりお友達になりたくないなぁ。

 てなワケでオオキとヨシザワの本音と建前がヤラシイ今回のお話でした。

 

 

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