オリジナル・ストーリー黒き帝王

 

―第29話―「勝てば官軍」

 ドドドドドドドドドドド!!!!

 会場内は観客達の足を踏み鳴らす音で揺れている。

 観客達が見守るリング上では、ペルフェクシオンがタイラントの腕を極めていた。

 「無駄ですよッ! この逆十字は完璧に極まっています! 右腕が破壊される前にギブアップしたらどうです!?」

 興奮した面持ちでヨシザワが吼える。

 「ギブアップだぁ〜!? 冗談言うならもっと面白いこと言ィな!! 笑えねえぜ!」

 目が笑っていない笑顔でT−REXはやり返す。

 「(タイラントがギブアップなどするワケが無い。 それは過去のデータからも一目瞭然だ。

 (挑発を込めて)言ってみただけさ。

  奴はロープエスケープすら滅多にしないんだぞ!

  いくらパワー自慢だろうと、完全に極まった関節技が力だけで外れるワケないだろうに!

  ハッキリ言ってコイツ(等)は馬鹿だ! ロープエスケープはルールで認められているんだぞ!?

  別に何回ロープエスケープしようが負けになるわけじゃないのに。  

  過去に僕のペルフェクシオンのような闘い方をする相手との対戦経験がないのが一つ目の弱点だとすると、

  関節技が極まっても絶対にエスケープしないのが二つ目の弱点だ。

  無駄にバッテリーを消耗させる闘い方なんか、バカのすることだ!!

  ならばその弱点を突くのみ! さらにタイラントにはもう一つ大きな弱点がある!)」

 ヨシザワは自ら集めたタイラントのデータを思い出していた。

 「どうせあなたはギブアップなどしないでしょう! 時間の無駄だ。そろそろ右腕頂きます!!」

 ペルフェクシオンはタイラントの右腕を掴んだまま、大きく反り返らんとする。

 しかし、掴んだ右腕は微動だにしない。

 逆に、反り返っていくハズの機体がだんだん浮き上がっていき・・・

 ついには、そのまま前のめりに投げ飛ばされてしまった。

 「さっきから何ブツクサ言ってんだよ? 言ったろ? 冗談言うならもっと面白いこと言えって。

 に〜ちゃん、甘いよ。やるなら一気に折らなきゃ。」

 信じられないと言った表情でリング内を見つめるヨシザワに、T−REXは追い討ちの一言。

 ヨシザワは信じられないと言った表情でリング上を見つめている。

 「完璧な逆十字だったのに、あんな返し方をされるなんて・・・。

  あんな返し方、データに無いぞ!?

  僕のデータに漏れがあったのか? 

  くそっ! くそっ!! くそっ!!!

  いや、そんなハズは無い! 僕のデータに間違いなんかあるもんか!

  そうさ、きっとうまく極まっていなかったんだ。 技が浅かったんだ。 そうに違いない!」

 ヨシザワは強引に立ち直る。

 ・・・

 立ち直ったからか、1ラウンドも終盤近くになると、ペルフェクシオンのタックルが面白いように決まりだす。

 そしてタックルからの関節技、打撃技への移行、全てが面白いように決まりだす。

 しかし、決定的なダメージを与える前に強引に振りほどかれてしまう。

 その脱出方法が全てヨシザワの計算外の、彼の言葉を借りると『データに無い』滅茶苦茶な脱出法なのである。

 そして、攻め込んでいるハズのヨシザワの方が焦りを感じ始めていた。

 何故だ?

 何故、極まらない!?

 ペルフェクシオンの繰り出した技は全て完璧に極まっているハズだ。

 僕のオペレーションにミスは無い!

 僕は完璧のハズだぁ〜!

 ・・・焦りからの攻撃はカウンターを許してしまう。

 この試合、何度目かのタックルは、タイラントのアッパーによって吹き飛ばされた。

 ドンガラガッシャン!!!

 これ以上ないというくらいに派手にひっくり返ったペルフェクシオン。

 そして鳴り響く第1ラウンド終了のゴング。

 ヨシザワは泣き顔である。

 「なんでだよ!? なんで極まらないんだ!?」

 認めたくはなかった・・・。

 今まで苦労して集めたデータが何の役にも立たなかったからだ。

 接触することにより得られたタイラントのデータ。

 それは、彼がこれまでに収集したデータを全て更新する結果となった。

 合致したのは全高と重量のみ・・・。

 彼のPCの中にはJPWAやFIST等、大手の団体から地方の小さな団体まで、

 彼が知る限りのプラレスラーのデータが入力されている。

 と言っても、所詮、それは彼の解釈による『推定』データでしかない。

 (実際と差異の無い詳細なデータが揃っているのは、『彼が今まで対戦したことのあるJPWAのプラレスラーのみ』である)

 幅広くデータを集める事だけに執着してしまい、自分勝手な解釈で相手の性能を決め付けてしまっているのだ。

 こういうタイプの奴はこう闘うだろう、あいつはああいうタイプだからあの戦法が有効だろう。

 全て彼の思い込み、決め付け、セオリー・・・。

 故に、今回のように自分のデータの範疇に収まらない相手だと、パニックを起こしてしまう。

 しかし、プライドの高い彼は、自らの過ちをなかなか認めようとしない・・・。

 「僕の作戦に間違いないんだ。 僕のデータは間違っていない! くそぉ〜、こうなったら狙ってやる!

  3番目の弱点、後頭部への打撃! リスクはあるけど、もうそれしかない!」

 一方、T−REX。

 「若いクセに鬱陶しい闘い方をする奴だなぁ〜。 狙いは悪くないんだが、攻撃方法がワンパターンなんだよなぁ〜。

  タックルに入るタイミングから、次の技に移行するまでのタイミングが全部同じだよ。

  それに気が付いていないのかねぇ? 最初は良いと思ったんだけどなぁ〜。 

  この後もう1試合あるんだよなぁ。 もう奴に付き合うのはヤメだ。 飽きた!」

 「・・・どんな手を使おうが、僕は負けてはいけないんだ。 こんなところで汚点を残すわけにはいかない!

  僕を馬鹿にしてきた奴らを見返してやるんだ! 僕が気付いていないとでも思っているのか?

  皆、影で僕の悪口ばかり言いやがって! 貧乏人どもが! 

  お前らみたいな頭の悪い人間に、ぐだぐだ言われる筋合いはないんだ!

  悔しかったら、対抗戦の代表選手に選ばれるくらいに腕を磨いてみろってんだ!

  この世界は勝利こそが全て! 勝てば官軍!! 負け犬に未来はない!!」 

 ヨシザワはJPWAでも私生活でも浮いた存在であった。

 彼にはモデラー仲間も学校での友人もほとんどいない。

 JPWA内では天才少年ともてはやされているが、古株の連中や年上の人間からは疎まれてきた。

 学校内でもその才能と環境を嫉妬され、陰口を叩かれてきた。

 内向的な性格と、異常なまでのプライドの高さがその要因の一つでもあるのだが、

 彼自身もあまり他の人間と関わりを持とうとしなかったし、したくても出来なかった。

 悪循環である・・・。

 そして第2ラウンド開始のゴングが鳴り響く。

 ペルフェクシオンは第1ラウンドと同様にタックルを仕掛ける。

 タイラントはそれに合わせ、カウンターのアッパーを繰り出す。

 しかし、これを紙一重で交わしたペルフェクシオンは瞬時にタイラントのバックに回る。

 そしてタイラントが振り向いた瞬間、サミング!!(目潰し)

 いかにタフなタイラントとは言え、急所の一つである瞳(カメラアイ)を狙われたらひとたまりもない。

 右目は辛うじて無事だったが、左目は完全に機能を失ってしまった。

 受信機への攻撃は反則を取られるが、目潰しについては特にルール上触れてはいない。

 しかし、ヨシザワの取ったこの行動は一種のタブーである。

 プラレスを志す者なら、故意に急所を攻撃することはあまり褒められた行為ではない。

 「何怒っているんですか? そっちが下手に避けるから掌打が変なところに入っちゃったじゃないですか!」

 「てめえ、アレを掌打だっていうのか?」

 ヨシザワはあくまでも事故であると主張している。

 左目の視界を奪われ、標的を見失ったタイラントに、ペルフェクシオンは延髄斬り!

 うつ伏せにダウンしたタイラントの後頭部にニードロップ。

 更に後頭部にストンピング! ストンピング!! ストンピング!!!

 ・・・

 ピクリとも動かないタイラント。

 レフェリーがカウントを取る。

 1・2・3・4・・・

 

 

あとがき

 前回の更新から約3ヶ月間、ずっと逆十字に決められていたタイラント。

 すまんね〜。 忙しかったんだよ〜。

 今回でこの試合、ケリをつけようと思ったんだけど、終わらなかったっす。

 次回で決着つけるからさ。

 どうも私一人だけ遅れてしまっているようなので、

 これからはもうちょっと頻繁に更新できるよう頑張ります。

 (・・・って以前も似たようなことを書いた気がする。 海より深く反省)

 

 

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