オリジナル・ストーリー「蒼き疾風」

 

 

第11話「新たなる敵〜Act2」

 花道を進むT−REXは、まるでプロレスラーのようであった。

 観客たちを時には挑発し、時には手を挙げて応え、これから始まる試合の為に場を盛り上げていく。

 「○△※□!」

 応援・・・そして罵声、様々な観客達のざわめきがヒートアップし、場内はT−REXの目論見通りに盛り上がっていく。

 タイラントはT−REXの肩の上で両手を腰に、左足をやや前に出してリングの上を凝視している。

 やがて、T−REXが花道の中程まで差し掛かった時、それは起こった・・・。

 轟ッ!!!

 観客達は総立ちになり、ざわめきが一層激しさを増す。

 花道の上にはうつぶせにタイラントが倒れ、その前方には見たことの無いプラレスラーが立ちはだかっていた。

 これがエキシビジョン・マッチの対戦相手なのであろうか!?

 「てめぇ! 何を!!」

 ふいの乱入に慌ててPCを開き、メイン・プログラムを立ち上げながら吼えるT−REX。

 ややあって、立ち上がるタイラント。

 「オノレッ! 何奴ダ!!」

 左手を腰に当て、右手で前方に現れた未確認のプラレスラーを指差す。

 次の瞬間、ざわめいていた観客達が静まりかえる。

 皆、そのプラレスラーがタイラントの問いに答えることに注目しているのだ。

 照明がようやくそのプラレスラーに当たり、その姿を現す。

 そこには、全身を黒いマントで覆ったかのようなプラレスラーがたたずんでいた。

 「我ガ名ハ・・・ソウ・・・地獄ノ使イ魔トデモ、シテオコウカ。」

 「あほ〜笑わせるな! なぁにが『地獄の使い魔とでもしておこうか』、だ。  いくぞ、タイラント!」

 「オウ!」

 タイラントが花道を猛然とダッシュし、自称『地獄の使い魔』目掛けて走る。

 「フッフッフッ・・・。」

 『地獄の使い魔』は、ファイティング・ポーズすら取らずに、不敵にたたずんでいる。

 そこへ走り込んできたタイラントが大きく振りかぶるようにして、右のラリアットを放つ。

 「決まったぁ!」

 誰もがそう確信した次の瞬間、タイラントの右腕は虚しく空を切る。

 「!?」

 ざわつく場内、『地獄の使い魔』はどこへ消えたのか・・・。

 ハッとしたように、とっさに両腕を頭上に挙げ、クロスしてガードするタイラント。

 ガスッ!!

 『地獄の使い魔』が、急降下キックを放つ。

 間一髪でガードしたタイラントであったが、その全体重が両腕にのしかかり、思わず片膝をつく。

 『地獄の使い魔』はタイラントの両腕を蹴り、両腕についた翼をはためかせて飛び上がるとタイラントの後方に着地する。

 「こいつは・・・蝙蝠!?」

 左右に大きく開かれた漆黒の翼、翼に似合わず小柄な体、そして頭部に突き出た耳、その姿はまさしく「蝙蝠」のそれであった。

 あの黒いマントと思われていたものは、翼であったのだ。

 「ガー!」 

 唸りながら振り向くタイラント。

 だが、すでに『地獄の使い魔』はタイラント目掛けて、その翼を広げ飛翔していた。

 『地獄の使い魔』はタイラントの背中に張りつくや、その鋭い牙を首筋にたてる。

 バチ・・・バチバチ!

 「いかん! タイラント!! フルパワーで振りほどけ!!」

 爆弾を抱えた首筋への攻撃。

 T−REXの脳裏に、そしてマサキの脳裏にさえ「暴走」の2文字がよぎる。

 しかし、食い込んだ牙は抜けない。

 やがて、そのままの姿勢から『地獄の使い魔』の変形が始まった。

 後方に追いやられていた大腿部が前方にせり出し、膝関節が獣特有のドッグ・レッグから人型のそれへと変わる。

 同時に両腕の翼のみが背中へと移動し、残った人型の腕が姿を現す。

 「で・・・でかい!」

 変型後の身の丈は、変型前と打って変わって、タイラント並である。

 その姿・・・まさしく「悪魔」であった。

 

つづく

 

〜あとがき〜

 今回のモデルは・・・蝙蝠男。

 何となく「仮面ライダー(旧1号)1巻」のビデオをみた余韻での登場となりました。

 しかし、なんとなく「鬼蜘蛛」の「蜘蛛」といい、今回の「蝙蝠」といい「仮面ライダー」の怪人パターンを追っているような?

 ちなみに蝙蝠はドッグレッグではありませんが念の為。

 

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