オリジナル・ストーリー「蒼き疾風」

 

 

第15話「急襲〜Act.2」

 突然現れた、もう1つの影。

 「新手か!?」

 シュシュシュシュシュ・・・。

 その影は、見る間に『正体不明機』と十六夜に近づく。

 「まずい! 今、攻撃を受けたら防ぐ手立てが無い!」

 鋏に挟まれ、身動きの取れない十六夜には為す術もなかった。

 シュン!・・・ジュ・・・ズパッ!

 「グアッ!」

 「十六夜!」

 交差する3つの影、叫ぶマサキ。

 「ギエェェ!」

 勢い余って芝生の上に転がる十六夜と『正体不明機』・・・しかし、芝生の上でのたうつのは『正体不明機』の方であった。 

 「? 十六夜?」

 のたうつ『正体不明機』から、やや離れた位置で、十六夜は前回り受身をした後の膝立ちの姿勢で首を押さえている。

 「大丈夫・・・なのか!?」 

 急いでダメージをチェックするマサキ。

 十六夜のダメージは、先程掴まれていた首のみであった。

 「ゲホ・・・マサキ・・・俺は大丈夫だ。 それより何があった? 新手は?」

 未だに膝立ちの姿勢で十六夜が問う。

 「わからん・・・新手が近づいて、それから先は・・・」

 「ギエエェエ・・・ン・・・」

 マサキが、そこまで言い終えたとき、『正体不明機』がすさまじい叫びをあげて草むらへと逃げ込み、その後を新手が追う。

 バキン!・・・ビシン!

 やがて、草むらの方から破壊音が聞こえ、ややあって、その草むらから新手が姿を現す。

 「!!」

 その姿を認めた十六夜が素早く立ち上がり、ファイティング・ポーズを取る。 

 「鬼蜘蛛!?」

 それは、間違いなく鬼蜘蛛であった。

 「やるしか無いのか・・・。 十六夜! 行けるか!?」

 「ああ・・・。 このプレッシャー、間違い無い。 ヤツだ!」

 ゆっくりと近づく鬼蜘蛛・・・。

 その左手には『正体不明機』の鋏が握られている。

 「? 何故だ?」

 マサキも十六夜も、訳がわからなかった。 

 『正体不明機』が奴等の仕向けた刺客であるならば、鬼蜘蛛は奴等の仲間であるはずだ。

 それが、何故?

 「馬鹿が・・・油断しやがって・・・。」

 公園脇に停車していたダッジ・バンから、身長は低いが体全体は樽のようにドッシリとし、首が異様に太い1人の男が姿を現す。

 「お前は! 土鬼!!」

 「てめえらは、俺達の獲物だ・・・。 それを、あんなヤロウに遅れを取りやがって。」

 その男、土鬼は相変わらず独り言を言うかのように、そう呟く。

 「何故だ? さっきのアレは仲間じゃないのか?」

 「仲間だぁ? あの蠍野郎はな、俺の鬼蜘蛛の基本データを基に造られた、言わば鬼蜘蛛のコピーよ。 偉そうに、こんな鋏やら何やらゴテゴテ装備しやがって。」

 憮然とした表情を浮かべながら土鬼がそう言うと、鬼蜘蛛は手にした鋏を十六夜に投げてよこす。

 「蠍・・・そうか! ヤツの尻尾か、あの時の脚のダメージは。」

 「いいか? もう1度言う。 てめえらは俺達の獲物だ。 他の野郎にはやらせねえ! わかったな?」

 土鬼はそう言い残すと、ダッジ・バンの方へと向き直る。

 「あ、おい! ちょっと待てよ。 あんた・・・こんな事して大丈夫なのか?」

 「ふん! 色々とドジ踏んじまったから、俺はもう関係ねえのさ・・・。 行くぞ!鬼蜘蛛。」

 言いながら、土鬼は歩を進める。

 その後を、鬼蜘蛛が追う。

 「待てってば! お前達の正体は? 教えてくれっ!!」

 「・・・。」

 カチャ・・・ドム!

 マサキは土鬼の前に回り込み、執拗に食らいつくが土鬼は無言で車に乗り込んでしまう。

 キュルン・・・キュルキュルキュルキュル・・・ドロン・・・ドロドロドロドロ・・・。

 アメリカンV8の重低音を響かせて、ダッジ・バンのエンジンが回る。

 「頼む、待ってくれ! 教えてくれ!」

 マサキは運転席の窓ごしに叫び続ける。 

 しばらくバラついていたエンジンのアイドリングが安定すると、ふいに運転席の窓が下がる。

 「明日・・・。 サマーカップの会場に行けばわかる。」

 それだけを言い残し、ダッジ・バンはニュータウン通りへと消える。

 「待て! まだ聞きたい事が・・・て、行っちまった。」

 ただ1人残されたマサキは、PCに備え付けられた収納ケースに十六夜をしまい、土鬼の言い残した言葉を考えながら川沿いの道を歩く。

 (明日のサマーカップ2日目。 一体何があると言うのか・・・)

 

つづく

 

〜あとがき〜

 引っ張っておいて、登場したのはこれも懐かしい「鬼蜘蛛」。

 名前も無く、破壊された通称『蠍野郎』はデザイン的に、ゾイドのデス・スティンガーってところでしょうか。

 

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