オリジナル・ストーリー「蒼き疾風」

 

 

第17話「狙撃〜Act2」

 プランターの陰から飛び出したマサキは、車の通りの少なくなった多摩ニュータウン通りを駆け抜ける。

 (やっぱ、中央分離帯付きの4車線は広い〜)

 そして、そのままカクトミの裏へ回る。

 「!!」

 「わわっ!!」

 慌てて階段を下りてきたのは、ミッドナイト・ブルーの上下に身を包み、肩にPSG-1を担いだスナイパーであった。

 そのままマサキは左半身に構える。

 「お前か!!!」

 「・・・。」

 無言のままスナイパーは、愛銃のPSG-1をめちゃくちゃに振り回してくる。

 「あぶねっ! ちい!」

 何度もかわしながら、ついに左こめかみを狙って振り回してきたPSG-1を、左腕と右腕の掌で払うようにガード。

 そのまま金的を狙って前蹴りを放つ。

 スナイパーは慌てて腰を引くが、同時に頭が前に出る。

 大抵の人間は金的を狙うと、腰を引き、そちらを見ようと頭が前に出るのだ。

 「あら・・・よっと・・・。」

 前蹴りはフェイントであった。

 マサキの右足は弧を描いて、スナイパーの左こめかみに吸い込まれる。

 ガッ!

 瞬時に引き戻される右足。 

 決まった!・・・しかし。

 「あ痛〜。」

 マサキの蹴りはこめかみにヒットしたはずであった。

 だが、スナイパーはご丁寧に米軍払い下げのフリスカー・メットを被っていたのだ。

 多少ふらつきながらも、またもPSG-1をめちゃくちゃに振り回し逃走するスナイパー。

 「痛ってー!」

 仕方なく家に戻り、プランターの陰に置いたままのPCと十六夜を持つと、ジーンズのポケットから鍵を取り出して家に入る。

 「ただいま・・・すまん、逃げられた。」

 「おかえり。 大丈夫? 怪我は? その足どうしたのよ。」

 パジャマのまま、M40を手にアスミが迎える。

 「これ? ああ・・・あの野郎、フリスカー・メット被ってやがった・・・」

 「見せてみなさいよ。 あら、青タンになってる。」

 「それよりも、アスミ。 話がある。」

 「? なあに。」

 マサキはアスミに公園での事、そして今の事、自分の不安について話した。

 「今回のことで奴等が命までは狙わんが、かなり卑劣な手段を取ることがハッキリした。 だから・・・。」

 「・・・わかってる。 パパの言いたいコトもね。 でも私は逃げたくない。 私達は家族よ? パパ1人が危険な目にあって、私達だけ隠れてるなんて、そんなの耐えられないわよ。 今日だってそう・・・待ってる人の気持ち、考えたコトある?」

 「・・・。」

 「これからの事は、もう少し考えてみましょうよ。 イザとなったら、母は強し!!よ♪」

 「すまん・・・。」

 「パパがあやまる事じゃないわよ。 それに、コウもユウも・・・ユウは無理かしらね。 とにかく!・・・何とかなるわよ。」

 「アスミ・・・。」

 気丈に振舞っているが、アスミだって不安なはずだ。

 思わず抱き寄せる、マサキ。

 「ちょっと! どうしたのよ、珍しい。」

 「いいから、だまってろ!」

 「もう♪」

 マサキは、アスミの気持ちが嬉しかった。

 そして、愛しかった。

 「明日。」

 「ん?」

 「明日、何があるのかしらね・・・。」

 「ああ・・・。」

 しばらくして、2階の寝室へと連れ添って向かう2人。

 長かった1日が、今終わろうとしていた。

 

つづく

 

註)

フリスカー・メット

 現在の各国の軍、ならびに日本の自衛隊でも採用されている、軽くて丈夫なケブラー製のヘルメット。

 形状は第2次大戦におけるドイツ軍のそれと同じく、耳まで覆う。

 

〜あとがき〜

 ようやく、明日が書ける〜!!

 この数話でマサキとアスミの特技を盛り込んでみました。

 実話、ちょいフィクション。

 

オリジナル・ストーリー目次へ戻る

第16話へ戻る

第18話へ進む