オリジナル・ストーリー「PURE」

 

「PURE」9th

 

 美雪は思った。

 「(ディンキィ…、受信機は恐らく瞳、他に露出してる所は無い。 でもそんなパーツは聞いたことも無い。 全く継ぎ目の無いボディ!、メンテナンスには相当の設備が要るはずだ! あの小さい体でラプターを投げ飛ばしたな。 どこにそんなパワーがある?! DINKY(小さい)だって? 冗談じゃ無い!。 いったい1機いくらかかってるんだ?!)」

 美雪はバイトでコツコツ貯めたリチウム電池をこの試合で使い切る覚悟だ。

 「(どこの回し者か知らないが、私の団体を試験場に選んだ事を後悔させてやるっ!!)」

 「行けっ!うっぴー!!。 そいつを捕まえて雑巾絞りにしてやれっ!!」

 「うきーっ!」

 うっぴー、ディンキィに向かって猛然とダッシュ。

 低い体勢を生かしたランニングのヘッドバット!

 しかしディンキィ、闘牛士のようにひらりとかわす。

 右手に赤い布を持っているかのようだ。

 うっぴー、再度突進。

 ひらり。

 もう1発。

 ひらり。

 「うきぃぃぃ…」

 「あんた、それしか芸は無いの?」

 呆れたように小さく腕を開くディンキィ。

 「うきーーーーーーーーっっ!!!(怒)」

 うっぴー、EXIVでは回避不可能と思える最大速度で突進する。

 そしてそのまま突っ込むかと思いきや、ディンキィの目前で直角にジャンプ。

 ロープへ跳び、その反動を利用して真横からディンキィを襲う!

 「無芸」と揶揄されたうっぴーのプライドを賭けた見事なフェイントだったが、ふわっ。

 ディンキィ、走り高跳びのように背中からうっぴーをクリアー。

 空中でくるっと回って綺麗に片膝をついて着地する。

 「無駄ね。そのウェイトでそのスピードは立派だけれど、私は捕まえられないわよ♪」

 「うぎぃぃぃ…」

 「どうする?。次は避けるだけじゃ無くてよ」

 うっぴーに対して斜めに構え、腕を組んで立つディンキィ。

 余裕の表情。

 うっぴーはしばらく考えると、猪突猛進は諦めたらしく、どしどしと歩いてディンキィに近づく。

 ディンキィはそれをその姿勢のまま待つ。

 うっぴーがディンキィの眼前まで近づく。

 4足歩行のうっぴーの頭頂高がちょうどディンキィと重なる。

 その体格差は圧倒的だ!

 にもかかわらず、ディンキィは相変わらずの表情。

 「いらっしゃい、お猿さん。 何して遊びましょっか?」

 「うがっ!!」

 両手でディンキィに掴みかかるが、虚しく両手が交錯する。

 ディンキィは何と、うっぴーの頭に両手をついて跳び箱のようにうっぴーを飛び越える。

 さらに着地と同時に大きくジャンプ、後方へ伸身ムーンサルト。

 うっぴーがディンキィを追って後ろを振り向くと同時に、ディンキィは元いた場所に正確に着地する。

 1cmと違わない!

 「あう?」

 完全にディンキィを見失ったうっぴーに、後ろから声をかける。

 「こっちよ、お猿さん♪」

 「!!」

 うっぴー、振り向きざまの裏拳!

 ディンキィの顔ほどもある手の甲が、その鼻先をかすめた瞬間!。

 ズバーーーン!!。

 うっぴーが背中からマットに叩き付けられ、リングが「ぎしっ」と歪んだ。

 ディンキィの「逆一本背負い投げ」、柔道ならここで試合が終わる完璧な1本。

 「…しっ…信じられないっ……」

 美雪が愕然と呟く。

 「まるで空気と戦ってるみたい…。触れる事もできないっ!」

 一方ニック、さすがに心配になってファニーに声をかける。

 「おいっ、解ってるのか? やりすぎるなよ」

 「もちろん。 でもね、手を抜ける相手じゃない。 強いわよ、あいつ。 全国区でも十分通用するわ。 パワースラム痛かったでしょう?」

 「あぁ」

 実はニックはこのインターバルにEXIVの胸装甲、背中装甲、背中のエアノズルの制御回路の3箇所を修理した。

 不意を突かれたとはいえ大ダメージだ。

 「分析の方はどうだ?」

 「ほぼ完了♪ やはり540モーター本来のパワーは出てないようね。 それでも360よりはトルクは太いから、このセッティングは「あり」ね。 その他各部セッティングも目から鱗。 このバラバラのセッティングでなぜバランスできてるのか不思議…」

 「地方団体恐るべしって所か…」

 「そうねー。 でも、この自由な発想が大切かもねー。 私たち何か大切な事を忘れてしまってるって感じるわ…」

 2人は感慨深げにうっぴーを見つめる。

 そのうっぴーは、たまらず自軍のコーナーに駆け込み、ポストにもたれかかっていた。

 そこへディンキィが歩み寄り、髪をかき上げながら(これはディンキィの“癖”らしい)言った。

 「タッチしたら? そろそろバッテリーがきついんじゃなくて? 高いリチウムイオン電池無駄遣いしたわね」

 そう言って首で「くいっ」と外を指す。

 先刻うっぴーがEXIVにやったやつだ、仕返しという訳だ

 そしてくるっと後ろを向き、すたすたとEXIVの元へ歩む。

 「仇は討ったわ」

 「誰もそんな事頼んでないぞ」

 「私がしたかったのよ♪ あなたが馬鹿にされて黙っていられる程、お上品ではないわ。」

 「…………」

 「向こうもタッチするわ。 もう1機、何が飛び出すか判らないわよ」

 「解った」

 EXIVはディンキィの肩をポンっと叩くと(タッチ成立)セカンドロープをまたいだ。

 相手コーナーを見ると、うっぴーはまだポストにもたれかかっていた。

 「どうした?タッチしてもいいんだぞ。 せっかく間を作ってやったのに」

 「うぎぎぎぎぎ…」

 うっぴーは怒っている(らしい)。

 ゆっくりと腰を上げるうっぴー。

 構えるEXIV。

 そこへ美雪の声が割って入る。

 「だめよ! うっぴー!」

 「あう?」

 「ごめんね、うっぴー。 タッチよ」

 「あうーーー…」

 うっぴーは渋々ロープの外へ手を伸ばす。

 「うきっ!」

 「うわんっ!」

 犬の鳴き声がこだました…。

 

to be NEXT.

 

 

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