オリジナル・ストーリー「PURE」

 

「PURE」11th

 

――――試合の結末は突然に訪れた。

 バキッっと音を立てて破砕したのは、ポチの顔面。

 ディンキィのレッグラリアートだった。

 ポチはマットに転がり、激しくのたうち回る。

 「EXIV、立てる?」

 「すまん、助かった!」

 「終わりにするわ。 こんな奴分析したって何の役にも立たない!」

 「わかった!」

 EXIVは飛び起きると一目散に相手コーナーに向かう。

 うっぴーはちょうどディンキィを追ってリングに入ろうとしていたところだ。

 そのEXIVの背中にディンキィが問い掛ける。

 「念の為聞くけど、あんた。顔面にBB弾くらっておいて、まだ綺麗に決めようとか思ってないでしょうね?」

 「…そこまでお人好しじゃ、ないっ!!」

 ガンッ!

 半分ロープをまたいだうっぴ―のこめかみにローリングエルボー!

 「うぎっ!」

 うっぴーはたまらずリング外へ転落する。

 「俺だって怒る事もある!」

 「OK!、派手にいきましょ♪」

 EXIVはそこから反対側のロープへ走る。

 ディンキィの横をすり抜けた時、ディンキィがポチを「ひょいっ」と持ち上げた。

 背後から両脚を持って、ちょうど母親が小さい子におしっこをさせるような格好だ(ちなみにポチはサイズ的にはJr.ヘビーだが、ディンキィよりは大型だ!)。

 ナンシーはディンキィの横でコーナーに戻るように命じているが、カウント4を数える事はしていない。

 どうやらガチガチの石頭ではなく、そこらへんの間は解っているらしい。

 EXIVがロープの反動を利用してディンキィの元へ走り込む。

 大きく体を捻って、ポチの下顎辺りにラリアット!、ディンキィごと薙ぎ倒す。

 その瞬間ディンキィはブリッジ、何と両脚を持っての超高速ジャーマンスープレックス!(+ラリアット)。

 ポチの後頭部が「ぐしゃっ」と嫌な音を上げた。

 ディンキィはフォールせず(試合権者ではないので)ばっと起き上がり、今度はディンキィがロープへ走った。

 EXIVは片腕がいまいち自由に動かないが、それでも器用にマットに転がるポチをバックドロップの体勢に持ち上げる。

 そこへ今度はディンキィがロープの反動で帰ってくる。

 軽くジャンプし両手でポチの頭部を掴むと、自らの片膝を打ち付ける。

 一見ジャンピングニーに見えるが、ジャンピングニーではない。

 同時にEXIVがバックドロップ!

 バックドロップが着地するとディンキィの膝がポチの顔面にめり込む。

 バックドロップ+顔面へのカーフブランディング(!!)だ。

 ディンキィの膝がポチの頭部を突き破りマットに達していた。

 しかしディンキィはまだ止まらない。

 うっぴーがエプロンに這い上がろうとしているのが見えたからだ。

 ディンキィは着地と同時にマットを蹴り、うっぴ―のカットに向かう。

 ナンシーは2機の動きに着いていけず右往左往していたが、EXIVがポチを押さえ込んでいるのに気がつき、フォールカウントの体勢に入った。

 うっぴーはリングに入ろうとしていた(エルボーで場外に落とされて10秒と経っていない)。

 ディンキィはうっぴーへワンジャンプで到達し、うっぴーの肩に片足で降り立つ。

 そして、くるっとマットの方を向くと、すとんと腰を下ろす。

 両脚の太股でうっぴーの頭部を挟んで、うっぴーに肩車をされている格好だ。

 「あう?」

 「ばいばい、お猿さん。 楽しかったわ♪」

 「うぎっ?!」

 2機の姿がエプロンから消えた。

 背後の場外へのフランケンシュタイナーだった。

 そのディンキィのフランケンは、観客が息を飲むほど、美しかった…。

 うっぴーは場外のフローリング(体育館なので)に頭頂部から落下した後、うつ伏せに横たわった。

 その背中にちょこんと座った(フランケン後の体勢の)ディンキィが両手で髪をかきあげた時、ピンフォールを告げるゴングが連打された。

 うっぴーは、動かなかった。

 いや、動けなかった…。

―――――――――――――

 ディンキィはマットに上がると、真っ先にEXIVに声をかけた。

 「久々に暴れたわね。 いっつも手抜きじゃストレス溜まる(?)ってもんよ♪ たまにはリミッターも外してみたいもんね」

 ディンキィはこれでも索敵優先モードなのだ。

 「…やりすぎたよーな気もするが……」

 足元にはバラバラになったポチの頭部と、首無しのポチが横たわっている。

 場外のうっぴ―も動かない。

 「ま、まぁ、いいんじゃない♪ オーナーからストップもかからなかったし」

 「うーむ…」

 「だいじょーぶっ! だって、あんたもボロボロじゃないの。 見比べてもそんなに見劣りしないわ」

 見ると、EXIVのフェイスマスクは割れ、腕にはBB弾の亀裂と噛まれた跡、その腕と胴体には無数のヒートナイフの創傷…。

 「うーむ…」

 「ホント…、そこまでボロボロにされるのって、あんたとZX(ゼファードMKV)ぐらいよね」

 「…悪かったな。 こちとら、おまえと違って規格品だからな。 オーナーも苦労してるさ」

 上記の2機の会話と同時系列の場外。

 「………あ!」

 ニックが思い出したように声を出した。

 ファニーも同じ事を考えているらしく、顔を伏せている。

 「…やってしまった……」

 「わ、私のせいじゃないわ…。 わたしだけのせいじゃ……」

 2人は今回も思いっきりやってしまった。

 頭では、やりすぎちゃいけないと解っていても、いざ試合になると夢中になってしまう。

 相手が強敵ならなおさらだ。

 確かに今回、2人はやりすぎた。

 ただし、これが後に新たな火種を呼ぶ事になろうとは、当の2人はまだ知らない…。

 会場の観客も参加者も、2人が優勝したにも関わらず、がっくりとうなだれているのを興味深く見つめていた。

 1人を除いて…。

 胸に動かないうっぴーを抱いた美雪は、その場で放心していた。

 その後、リング上で簡単なセレモニーが行われたが、代表であるはずの楢塚美雪の姿はそこには無かった…。

 

 to be NEXT.

 

 

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